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DUNHILL / SHELL BRIAR / 142 F/T / 68年 / ④S

レストア前

最近はイングリッシュよりイタリア物が好きと言っといて、イングリッシュの顔、ダンヒルのシェルです。
直近でRADICEを2本買ったけど、レストアあんまり必要なさそうなので載せることもなさそうだし。

142はダブリンというシェイプ。
ボウル上に向かってちょっとだけ広がった、小さいラッパみたいなシェイプ。
個人的には初ダブリン。

MADE IN ENGLAND の後ろのデイコードは、MAIDE IN ENGLAND と同じ大きさの8。
ちょっと離れて12。
これは、68年に製造、72年に販売、という意味です。

ダンヒルのシェルは、オイルキュアリングなる手法が用いられていたとされる、69年頃までに製造されたものが人気です。
70年代に入ると、オイルキュアリングは廃止され、ブライヤーも産地が変わり、1人の職人が1本のパイプを作っていた体制から分業制にシフトして、ちょっとスペシャル感がなくなったそうです。

で、その中でも、67年〜69年は「THE LAST GASP(最後のあえぎ)」と呼ばれ、オイルキュアリングの出来がとても良い、とされています。
そしてその中でも1968年が最高、らしい。

でも、「THE LAST GASP」を海外サイトで検索しても出てこないし、期間も66〜68年だったり、最高は67年だったり、情報が錯綜してるので、ぶっちゃけ良くわからんです。
日本人だけがこだわってるって気がしないでもない。
そもそも「オイルキュア」を海外勢はありがたがってない気がする…

とはいえ、68年もの。
ダブリンは、火皿が底に向かって少し狭まってるので、後半過燃焼になりそうだなあと敬遠してたのですが、安かったのでつい。
サイズ4だし。

カーボンはそれなり。
リーミングによる火穴の歪みも少ない。
もともとなのかカーボンのせいなのか研磨したのか分からんけど、ボウルトップは結構ツルツル。

ステムはピカピカに磨かれてるけど、変色でムラがある。
そして、リップのとこに深い凹みがあるんだけど、それ以前に、ボタンが削られてほとんど段差が無い。
フィッシュテールのはずだけど、吸い口の穴がむき出しくらいまで研磨されて短くなっててそれどころじゃない。

そして、インナーチューブの切れ端が残ってる。
固着して取れないから途中で切ったんかな。
ややステムルーズ。

全体的に、大事にされていた感じはするけど、使い倒された印象。
相棒感。


ボウルのお掃除

リューターとリーマーとナイフで、カーボンをゴリゴリ削っていきます。
結構底が深いので、底の方にカーボン溜まって段差ができてる。
多分リーマー届いてない。

あらかた取れたら、ボウルにコットン、シャンクにモールを詰めてアルコールメソッド。
無水エタノールをヒタヒタになるまで注いで、数時間おきに補充。
一晩放置します。

一晩経ったらコットン取り除いて、ボールを軽くリーミング。
シャンクはストローブラシやモールで色がつかなくなるまで掃除。

内部の掃除が終わったら、ボウルにキッチペーパー、シャンクにモールを詰め込んで、外側をマーフィーのオイルソープで温水洗い。
原液を歯ブラシにつけてゴシゴシ。
ボウルトップはワイヤーブラシでカーボン落とす。
流水で洗い流します。

乾いたら椿油を塗りたくり、それほど放置せずに拭き取ります。
全体的に彫りが浅くて、均一に黒が落ちすぎな感じだったので、全体に軽く黒を再塗装して、エタノールで拭き取る。
溝の黒を強める気持ち。

一晩おいて、ルネサンスワックスとカルナバワックスで仕上げ。
歯ブラシでルネサンスワックスをゴシゴシ。
拭き取り。
リューターでカルナバワックス。
カルナバ布でゴシゴシ、歯ブラシでゴシゴシ、靴磨き用の豚毛ブラシでゴシゴシ。
細かいカルナバワックスのカスを取り除きます。

最後にエタノールで薄めた蜂蜜をボウル内に塗ります。
内部に少しクラックあったので、そこは葉巻の灰と蜂蜜を混ぜてパテ埋め。
ひとまずボウルはおしまいです。


ステムのお掃除

まずは全体的に変色を取るために、オキシクリーンに漬け込みます。
他のエボナイト製ステムも一緒に。
60度くらいのお湯に10グラムくらいを溶かして30分程度放置。
泡が出なくなったら取り出して、激落くん的なメラミンスポンジで表面のヌルヌルを洗い流します。

で、ホワイトスポットのところに木工用ボンドを塗ります。
マスキングです。

木工用ボンドが完全に乾いたら、無水エタノールにドボン。
内部のヤニ汚れがもわ〜っと溶け出してきます。
長時間漬けとくとアクリルとかが溶けちゃう恐れがあります。
なので、木工用ボンドでマスク。
ホワイトスポットはアクリルですが、こうしとけば溶けません。

固着していたインナーチューブの切れ端も抜けました。

あとはストローブラシやモールで、色がつかなくなるまで中を掃除します。

洗浄が終わったら、ほとんどなくなってるボタン部分と、深い凹みを、プラリペアでなんとかします。
プラリペアをエボナイトに使うと、陽の下とかでよく見ると若干色味が違ったりするんですが、まあ、場所がボタンなのでバレなそう。

注意点として、プラリペア前に、400〜600くらいまでヤスリがけをしたほうが良いです。
400〜600くらいのヤスリがけで、大体ステムの変色は取れるので。
プラリペアしてから研磨だと、プラリペアのエッジとか、変色が取れずに残ったりして目立つことがあります(失敗談)。

とはいえ、プラリペアが固着するにあたって、ツルツルよりザラザラしてた方がしっかりくっつくので、もし綺麗になりすぎたら改めて荒いヤスリで少し傷をつけます。

あとはプラリペアを両面に盛って、ダイヤモンドヤスリと400の紙ヤスリで成形します。

左が修正前、右がプラリペア・成形後。
フィッシュテールの左右のとんがり忘れてたけど、まあ。
どうせビッツつけるし。
穴が丸見えだった吸い口も、穴周辺を横に削って溝を復活させてます。
浅いけど。
写真撮り忘れたけど。

あとは2000までヤスリをかけて、白棒パフとコンパウンドかけておしまいです。
パフがけはボウルと合体させてから。
レストア前からすでにステムが痩せててシャンクと段差出てたけど。

いつもはこれで基本おしまいなんだけど、柘植のエボナイト変色防止液なるものを入手したので、最後に塗ってみます。
油っぽい。
効くのかな。

若干ステムルーズだったので、ダボのところに黒い接着剤をちょん。
乾いたらシャンクに捩じ込んで調整します。
ちゃんと乾いてないとシャンクに接着剤ついて悲惨なことになるので注意。

ちょん、じゃ足りなかったり、ゆるい所と太らせた所が接してない感じだったら、ダボ全体に薄く塗ります。
もしシャンク入らないくらいやっちゃったら、ヤスリでちょっとずつ削ります。
1ヤスリごとに確かめる感じで。

ステムルーズの解消方法は、シャンク側の穴にヤカンの湯気当てたり、シャンク側の穴に薄く木工用ボンド塗ったり、ダボを少しライターで炙ったりと、色々あるみたいですが、自分はダボに接着剤をちょん方式に落ち着きました。
一番楽で長持ちして被害が少ない。

あとは全体をつやふきんで拭いておしまいです。


完成

ツヤツヤピカピカです。
全体的に彫りが浅くてツルツル。

ボウルトップはカーボン取り除いたら気持ちブラストがありました。
ほんと気持ち。

ステムもピカピカ。
ほぼ平だったボタンも復活。
ボタンとの境目の凹みも消えて、どこがプラリペアかわからない感じ。
吸い口も溝復活。
この水平に入ってる溝が全くなかったの。
最初。

近い年代のシェルの比較。
1番上は69年。2番目が今回の68年。3番目は61年。一番下は50年。

今回の68年が一番彫りが浅いけど、ブラストの感じは69年より60年代前半に近い。
エッジがぬるっとした感じ。
シェイプが違うから単純比較はできないけど。

以上でレストア終了です。
おつかれさまでした。

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