犬のお話

 息子が捨て犬を拾ってきた。黒い柴の子犬だった。息子に、名前は何にするのと尋ねたが、思い浮かばない。と言って命名を拒否した。すると、二つ上の娘が「ついにようやく」という名前がいいと言った。なんだその名はと思ったが、息子も気に入ったようで「ついにようやく」と呼び始めた。娘に由来を訊いてみても「うーん、なんとなく」としか言わない。嘘だ。10歳の幼気な少女が、なんとなくで、飼い犬に「ついにようやく」なんて名前をつけるはずがない。

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