見出し画像

そんな日のアーカイブ 映画感想文 小説家を見つけたら

ショーン・コネリーは大好きな俳優さんだ。まったく惚れ惚れとするじいさんだ。寝巻きすがたがかっこいい。帽子も似合う。

しかし、いつものことなのだけれど、自分が一度見たはずの映画の記憶がなんと偏っていることかと思う。字幕を読んでいるあいだに見落としているものも多いのだろう。

少年がBMWについての薀蓄を言う場面とか、小説家が自転車で曲がるときに手を上げる場面などはああ、そうだったそうだったとよみがえるのだが、小説家がヤンキーズ・スタジアムで語る家族の話がすっかり抜け落ちていた。それはとても重要なエピソードなのに、てんで記憶になかった。

ただ、バスケットのボールの弾む音と古びたタイプライターの音だけは耳に残っていた。

小説家の若かりし頃の写真や肖像画は、なんだか007を思い出させるものだった。それはそれで愉快だったのだけれど・・・。

父親が出て行ってしまったブロンクスに住む16歳の少年とたった1冊の本を出したきりで世の中に背を向けてしまった小説家は、文章を通して、向き合い、通じ合っていく。そのいくたてのなんと胸躍ることか。

小説家が2本指でタイプを叩く。思いはすばやく文字になっていく。少年にやってみろと言う。少年がかちかちかちと打ち始める。もっと力強く叩け!と小説家が大声で言う。そして考えるな、感じるままを書け、とも。

そして最後には「もう教えることはない」と言う。小説家は二人のあいだの友情という言葉を使った。少年は血のつながらない家族だと思っていた。いいなあ、いいなあ、いいなあ。

ラスト近くに、小説家は故郷に帰ると言う。少年が「アイルランド?」と聞く。そこでショーンコネリーは憮然とした顔で「スコットランドだ」と答えるのだった。

読んでくださってありがとうございます😊 また読んでいただければ、幸いです❣️