見出し画像

どうする実家町家

2023年11月25日土曜日、ぶんぶんカフェイベント-2 京町家活用事例紹介「どうする実家町家」をNPO法人古材文化の会主催で開催しました。
会場となった町家は、北野天満宮を南へ下り御前通に面して建つギャラリー吾子・京町家矢守邸です。

前半で、この町家で生まれ育った岡野さんにお話いただき、後半は、ギャラリーにて開催中の「京町家と土佐和紙の灯展」土佐和紙のあたたかい灯りを自由に鑑賞しました。
岡野さんは現在は他所にお住まいで、矢守邸はご実家です。この町家の建物紹介、メンテナンスの大変さ、活用していく決心となったきっかけ、ギャラリーとして出発から今回の灯展のことなど、現在に至るまでをとても分かりやすくお話していただきました。


京町家・矢守邸

矢守邸は1925(大正14)年建築と伝わります。

京町家・矢守邸 同時開催のリンゴ市でにぎわう

玄関庭型の町家で、南隣に寺院山門があるので玄関庭の南側にも高塀を廻らせています。玄関台所、座敷のある主屋、坪庭を眺めながらつながる離れは数寄屋の座敷と前室からなり奥庭へとつながっていきます。
座敷から望む坪庭、奥庭のしっとりした佇まいはたいへん美しく落ち着きも感じられます。

玄関

2020年に京都市・個別指定京町家に指定 
2021年に京都市・京都を彩る建物や庭園に選定
大きな改変もなく、外観、内部ともよく維持されていることなどから評価されています。

大掃除!手を着けなければ!

10年ほど前まではぎっしりモノであふれて片付かない状態で、家の傷みも相当ひどい状況だったそうです。(写真を見せていただきましたが、なかなかにモノであふれ返り、たいへんな状況です)
1年目 衛生状態も悪く、建物被害が出始めたので一念発起、大掃除を開始しました。
2年目 片付けに着手して、1ヶ月にゴミ袋30袋という目標を立てました。(他府県のお住まいから通いながらです)
モノが片付いていくと家の傷み具合もより明らかになっていき、修繕が必要な箇所が見えてきます。まとめて修繕工事する方がお得なので、修繕計画を立てることとなりました。
3年目
修繕計画を立ててから、屋根や水回りの修繕、畳や建具の入れ替え、「家の丸洗い」に踏み切ります。特に「家の丸洗い」が古い家専門の洗い屋さんで素晴らしくよかったそうです。
4年目
主屋をきれいにしてからは、納屋に収蔵されている古美術品の修繕も開始しました。(何度も聞きましたが、他府県から通いながらなんです!すごい)

京町家の活用を考え始めるきっかけ

2020年、京都市から「個別指定京町家」というお知らせがきました。始めは「何のことやら?」とわからなかったそうです。
京町家カルテ(個別指定京町家レポート)をつくることとなり、建物の調査してもらう中で、この町家のよいところ、町家を維持していくための助成金情報などを教えてもらい、家の価値を知ることとなりました。
建築当時の価値観や京都の様式美、生活を営む上で重視されていたことなどさまざまなことに気づき理解が深まります。
2021年、掃除を続ける中で、古い絵葉書が大量に出てきました。
こちらは、町家調査の方のご縁で立命館大学のアートリサーチセンターへ寄贈することとなり、ご先祖さまの生活に対する関心も高まってきました。
矢守家絵葉書データベースで閲覧できます。

町家を活かす

どうやって、この実家町家をギャラリーやイベントスペース「ギャラリー吾子 京町家・矢守邸」として活用していくことになっていくのか、、、
2021年、時期はまさにコロナ禍中、農作業活動の縁で陶灯作家の林真理さんとの出会い、古民家を活用したギャラリーでやさしい灯り、古民家活用のお話、、、するするとご縁がつながり、矢守邸にて林真理さんの「京町家と陶灯展」を企画開催されました。
文字にしてしまうとこれだけなのですが、林さんとの出会いから企画が開催されるまでの流れは、岡野さんの行動力、企画力、発信力があってこそなのだと思います。

そこで、「灯り」をキーワードに、2022年は「京町家と竹とガラスの灯展」を開催し、今回は2023年「京町家と土佐和紙の灯展」開催されています。
灯りの作家さんたちと始めから知り合いだったわけではなく、実際に作られている地を訪れて、作品を見て灯展に出していただいているそうです。

町家の維持の話だけではなく今回展示されていた土佐和紙も、作り手の高齢化や継承者不足など存続が危ぶまれている状況です。
単に町家活用の話に留まらない、町家と和紙、日本の手仕事の素晴らしさを再確認させてくれる展示会でした。
今回は3度目の灯展、来年もまた灯展の開催を予定されているとのことなので楽しみです。

今回の作家さん
 「竹良」鈴木良夫氏 竹良 - 竹細工照明 - | オンラインストア
 「GOROGORO KOYONAKU」齋藤与志彰氏
   GOROGORO KOYONAKUのギャラリー | Creema
   GOROGORO KOYONAKUのギャラリー | minne

京町家と土佐和紙の灯展
京町家と土佐和紙の灯展

灯展の他に、「京町家deマルシェ」「おそばと落語の会」「京町家と七絃古琴」なども開催されていて、企画にあたっての広報の仕方や賃料の設定など、実体験に基づく話はとても参考になります。

「人・もの・こと」との関係構築の場としての京町家の活用

これからの時代に必要となる「8種類の資本」についてお話もありました。
とても明快に説明していただき、気付かされることも多く、8種類の資本の中のひとつ「社会資本」-つながり、人間関係は、ぶんぶんカフェでも大切にしていることのひとつです。
人と人のご縁やつながりの大切さは、共感してみなさんと分かち合っていきたいなと感じました。

今回は14名の方にご参加いただきました。具体的なお話はわかりやすく興味深いもので、お話し後の質疑応答の時間もとても活発になされました。
ご参加のみなさま、岡野さんとご家族のみなさまありがとうございました。

主催・認定NPO法人古材文化の会(企画部会)
この催事は(一社)京都府建築士会・まちづくり地域貢献活動の補助を受けています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?