大奥−十姉妹のをんなたち

「きいっ、あの忌々しい小娘がっ!」

 ぎゅうぎゅうに詰まったつぼ巣の中で、梅は地団駄を踏んだ。

「お梅様、ここは抑えて……」

「そうですわ、ただでさえ狭いつぼ巣ですのに」

 お玉とお亀は梅をなだめた。

 広い禽舎の中には大きな三つのつぼ巣と、それを見下ろすように小ぶりのつぼ巣が一つあった。

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1,215字
収録作品「老紳士の記録、あるいは覚めない夢の話」「文吉の恋」「大奥―十姉妹のおんなたち」「文鳥香」「手乗りの地平〜荒ぶる文鳥の日々」

小説集「老紳士の記録、あるいは覚めない夢の話」のnote版です。

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