利吐流魔亜冥土

明かりがつくと青空と海。海を楽しむ人たちの声が響き渡る。利吐流魔亜
冥土中央で特攻服を着て立っている。

魔狸子   総長…。
瑠禰    なんだ。
魔狸子   暑いっすね。
瑠禰    そうだな。
魅突    だったらこの服脱ぎましょうよ!あたいらも水着で
瑠禰    ばかやろう(殴る)この服はあたいらレディース集団利吐流魔亜冥土の勲章!
命みてえなもんなんだ。軽々しく脱ぐなんていうんじゃねえ!!
魅突    すいません。
瑠禰    ったく、いついかなるときも、あたいらは利吐流魔亜冥土だ。それを忘れ
るんじゃねえ(特攻服を脱ぐ)
二人    えええーーー!!
瑠禰    どうした?
魔狸子   だって、今、脱いだ!!
瑠禰    暑いだろうが!!
魅突    でも、あたいらの勲章…
瑠禰    心で着てるんだよ!大事なのは外見じゃねえ、中身だ!!
二人    は、はあ。
瑠禰    しかし、この海も久しぶりだね。
魔狸子   久しぶり?
魅突    そういえば、総長の紹介でしたもんね。ここでバイトしようって。
魔狸子   最初はビックリたけどね。あのばあさんから海の家の警備してくれって頼
まれた時は。
魅突    あのおばあさん知り合いだったんですか?
瑠禰    ああ、昔アリエルと来た時…
魅突    アリエル?
魔狸子   ほら、利吐流魔亜冥土の元エースだよ。
魅突    ああ!喧嘩なら敵なし、通称「撲殺人魚」
魔狸子   何でやめちゃったかな~。
瑠禰    アリエルの話は、すんじゃねえ!
魅突    自分で言い出したのに…

ばあさん出てくる。

ばあさん  ほっほほ。若いもんは元気でいいね。
魔狸子   ばあさん。
ばあさん  これこれ。ばあさんとは失礼な、女王陛下とお呼び。
魔狸子   何でだよ。
ばあさん  そういえば昨日はお仕事ご苦労様。
二人    (アイコンタクト)あの~、それでバイト料の方は?
ばあさん  ああ、そうだったね、はいどうぞ。
魔狸子   ありがとよ、ばあさん!
魅突    やったね!
魔狸子   こちとら、これが目的なんだからよ。お!けっこう入ってる。
ばあさん  ほんの気持だよ。
魔狸子   いやいや気持だなんて、ご謙遜を…そうそうこれこれ、春菊。ってなんで
じゃ!
ばあさん  ほほほ、ギャグじゃよ、ぎゃぐ。ほれ、こっち。
魔狸子   なーんだ、ばあさん頼むよ。そういうギャグはよしてくれよ…春菊。
またかよ!!
ばあさん  ネタ変えた方が良かったかの?
魔狸子   うるせえ!ちょっと総長、なんとか言ってくださいよ。
瑠禰    あ?ああ…
魅突    もう帰ろう。
魔狸子   そうだな。
ばあさん  お待ち!!

照明変わる。音も怖い感じ

魔狸子   何だよ…。
ばあさん  あんたたち、まだ仕事は終わってないよ。
魔狸子   はあ?
魅突    いちゃいちゃしてるカップルなら追い払いましたよ。
ばあさん  あたしは言ったはずだよ。厄介ものを追い払ってくれって。
三人    厄介もの?
ばあさん  ああ。カップルなんてどうでもいい。ていうか半分あんたらの私情じゃろ。
三人    ギク
ばあさん  わしが追い払ってほしいものは他におる。
魔狸子   なんだよ?
ばあさん  それは…
魅突    それは?
ばあさん  この海に巣食う妖怪じゃ。

照明戻る。音、波の音とカモメの鳴き声。

ばあさん  ふう、まあ分かってはおったが。こんな馬鹿げた話…
三人    そいつは大変だ!!
ばあさん  信じてるーー!!
瑠禰    おい、ばあさん。詳しく話を聞かせな。
魔狸子   どういうことだい?
魅突    妖怪って…いったんもめん?
ばあさん  まあ、信じてくれるのならいいんじゃが…、実はなこの海では頻繁に妖怪
の目撃情報があってな。気味悪がって人が寄り付かんようになってしま
ったのじゃ。おかげでわしも商売あがったり。
瑠禰    なるほどね。そこで私らに声がかかったわけかい。
ばあさん  最初はただの噂かと思ったんだけどね。実際、わしもこの目で見ちまった。
魅突    どんなだった?いったんもめん?
ばあさん  あれはまさしく妖怪さ。恐ろしい奴らだったよ。
瑠禰    なるほど。それで私らにお呼びがかかったわけかい。
ばあさん  まあね。けどまあ、妖怪なんてどうしようもないし、神主さんでも呼んで
きてもらえば、わしゃ満足
瑠禰    よし、今夜シメるよ。
二人    おう!!
ばあさん  ええーー!!
瑠禰    各自、武器の用意!
二人    おう!
ばあさん  いや、妖怪なんじゃって。
瑠禰    それがどうした!!
魔狸子   あたいら利吐流魔亜冥土は、誰にも負けねえ!
魅突    妖怪だろうが、何だろうが
三人    かかってこいやー!
ばあさん  まあ、好きにせい。
瑠禰    行くぞ!
二人    おー!!

三人去る。

ばあさん  …行ったかい。さて、お手並み拝見といこうかい。

不敵な笑みを浮かべるばあさん。暗転。
明かりがつくそこは夜の海。三人がいる。

瑠禰    これより、利吐流魔亜冥土総会を始める。人魚は
三人    鮮度が命!(掛け声)
瑠禰    さて今日の議題だが、あたいらの深刻なメンバー不足についてだ。
魅突    え!?妖怪退治の作戦立てるんじゃないんですか。
瑠禰    そんなもん行って、倒すんだよ。
魔狸子   それは作戦ではない!
魅突    メンバーのことなんてここで会議しなくても!
瑠禰    重要だろ!あたいら三人しかいねえんだぞ!
魅突    昔はもっといたんですよね。何でみんなやめちゃったんですか。
瑠禰    不景気だからな…。あえていうならリーマンショックの影響だ。
魅突    暴走族関係ないでしょ!
魔狸子   あの…、
瑠禰    何だ。
魔狸子   そろそろ、教えてくれませんか。上田さん、いやアリエルさんが何で辞めた
のか。
瑠禰    ………。
魔狸子   あの人がいたから利吐流魔亜冥土にいたやつも多かった。現にあの人が辞
めた後、一気に辞めてったわけだし。なあ、教えてくれよ。あの人にいっ
たい何があったのさ!
瑠禰    あいつが辞めた理由…、

照明変わる。回想シーン

瑠禰    三年前、あれはあたいがある家を通りかかった時の事だ。
魔狸子   もういや!
魅突    これ、待ちんしゃい、みっちゃん。
魔狸子   もうトイレ掃除なんてしたくない!くさい!
魅突    いいかい、みっちゃん。(植村花菜:トイレの神様が流れる)トイレにはね
それはそれはキレイな女神さまがおるんやで、だから毎日きれいにしたら
女神さまみたいにべっぴんさんになれるんや
魔狸子   ほんとー?
魅突    本当やとも植村かなちゃんが言っとった。
魔狸子    そっかー。日本には色んな神様がいるんだね。私、頑張る!
魅突    おお、そうか。ええ子やね。みっちゃんは。
瑠禰    …それを見てあたいは思った。日本ってまだまだ捨てたもんじゃねえな。

回想シーン終わる。

魔狸子   …総長。
瑠禰    なんだ?
魔狸子   なんの回想だよ!

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