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“あなただけの特別なもの・普遍的なもの“を見つけたい。【2022/2/13放送_アクセサリー主治医・鍛造作家・コンセプトデザイナー シマダ カツヨシ】

Fm yokohama(84.7MHz)から毎週日曜日深夜24:30~25:00にお送りするラジオ番組『文化百貨店』。
2月13日の文化百貨店のゲストは、先週に引き続き、アクセサリー主治医・鍛造作家・コンセプトデザイナーとして活動されているシマダカツヨシさん。今週は、シマダさんがどんな変遷を経て、現在のような考え方にたどり着いたのかをお聞きします。

【パーソナリティ】
セイタロウデザイン代表・アートディレクター 山崎晴太郎(@seiy

【今週のゲスト】
アクセサリー主治医・鍛造作家・コンセプトデザイナー シマダ カツヨシさん

1977年生まれ。20年に渡りファッションデザイナー・スタイリストという立場で日本の物づくり現場と関わる。時代を越えたアンティークに触れることがきっかけとなり、身に着ける人の物語や思想・哲学を表現することに魅力を感じる。装身具を通した表現をスタートさせる。2019年は【FIGARO JAPON】【ELLE MARIAGE】のリフォームのスペシャリストに選出。装身具のサイズ感による悩みを解消する為に鍛造作家となる。永く育む装身具を届けるPOP-UPを開催。経歴や活動はインスタグラムでご確認ください。

【今週のダイジェスト】

▶︎古き良きものに触れる事で、構造や素材への意識が高まった

【山崎】先週は、現在展開されている3つのブランドについて伺いました。それ以前は、ファッションデザイナー、スタイリストとして、アパレル業界に長くいらっしゃったんですよね。最初にハマったファッションって、覚えていますか?

【シマダ】今年44歳になるので、世代的に言うとみんなと一緒だと思うんですけど、アメカジですよね。自分で初めて買ったのは、N3-Bという大きいファーが襟についたミリタリーのコートですね。

【山崎】みんな1度は、ファッションを通ると思うんです。だけど、そこから仕事にしていくには、ギアが変わりますよね。

【シマダ】中学、高校の頃からファッションが好きだったので、服飾の学校に入りました。そこを卒業して、夜間にグラフィックの学校に通いながら、昼間はお洋服屋さんで販売員をしたというのが、きっかけではありますね。

【山崎】その後、自分のブランドを作られましたよね。

【シマダ】アルバイトをしていたお洋服屋さんで、年に2回展示会をやっていたんです。その時に、全国のバイヤーさんから「シマダ君の作るお洋服を見てみたい」や「買いたい」と言われた事がきっかけで、独立したという感じですね。

【山崎】ファッションって、“衣食住”という人間の根源的な部分なのに、人によって見るメッシュが全然違うのが面白いなと思っているんですよ。

【シマダ】あ~、確かに。

【山崎】食事は、それぞれのメッシュが世代を経るに従って、ある程度細かくなってくると思うんです。でも、お洋服って、気にしない人は本当に気にしないじゃないですか。その中に、文化の知恵があるというのは、すごく面白いなと思っているんですよね。

先週も少し伺いしましたけど、シマダさんはアンティークやヴィンテージといった古いもの・時代を超えてきたものにインスパイアをされていたりしますよね。アンティークやヴィンテージに魅かれたきっかけはあったんですか?

【シマダ】きっかけは、先週お話したように、海外旅行をしたのがきっかけで古いものに出会ったという事と、あとは基本的に歴史が好きなんですよね(笑) 歴史が好きで、時代と共にデザイン様式が変わっていくというのに興味があるんですね。それが古い時計や靴への興味に現れたりしていて、そういったものが今の活動に繋がっているのかなと思いますね。

【山崎】古いものにもジャンルがあると思うんですけど、最初に掘っていったのは何なんですか?

【シマダ】所有はしていなかったんですけど、アンティーク時計ですね。洋服関係の学校に行っていた時に、卒業論文を書いたんです。周りは、身に着ける服装について自分なりに研究をして書いていたんですけど、僕はアンティークの時計について書きました。先生からは、「時計について書いたやつはお前だけだよ」みたいに言われたんですけど(笑)

もしかしたらその頃から、お洋服も好きなんだけど、他の文化というかデザイン様式にもすごく興味があったんでしょうね。

【山崎】美術ですもんね。

【シマダ】そうですね。美術の歴史みたいな流れですよね。

【山崎】デザイン様式や文化って、色んなモチーフが、出ては消えていくじゃないですか。好きな時代やエリア、様式はありますか?

【シマダ】具体的に、「ここが好き」というピンポイントではなくて、時代と時代の狭間くらいが好きですね。何かが変わる瞬間というか……、その間の何年。それぞれの時代で、過渡期というのがあると思うんですよ。そういう頃のジュエリーを見ても面白いし、古着屋で洋服の構造やデザインが変わっていくのを見ていても面白いですね。

【山崎】アンティークやヴィンテージに触れることで、自分の中で変わったことや広がったポイントはありますか?

【シマダ】ものづくりは長くしているんですけど、より構造や素材感はすごく体験するようになりましたね。自分で触れて、作り変えてみて感じる事はありますね。

【山崎】今されている装身具のブランドで扱っている素材は、何でしたっけ?

【シマダ】シルバー、ゴールド、プラチナですね。

【山崎】それぞれ、どんな特徴があるんですか?

【シマダ】プラチナに関しては、ほとんど変化をしないです。腐食もせず、変わらないというのが特徴ですね。ゴールドは、18金だと25%はシルバーが入っているので、そのまま置いておくと経年化しちゃうんです。ただ、重曹で磨くとピカピカにはなります。シルバーは比較的柔らかくて、硫黄とかに反応して経年変化するというのが特徴ですね。

【山崎】シマダさんの現在の活動って、“時間”が大きなテーマになっていると思うんです。そう考えると、ゴールドやシルバーの方が、その概念は体験しやすいんですかね?

【シマダ】そういう意味では、シルバーやゴールドの方が経年変化しやすいので、楽しめるとは思います。ただ、“長くこの世に存在している”という意味では、プラチナもその概念を味わえると思いますよ。

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▶︎ものとの“長いお付き合い”を知るきっかけに

【山崎】最近のシマダさんは、鍛造作家としての活動もされていますよね。鍛造という技術について、教えてもらってもいいですか?

【シマダ】素材をひたすらハンマーで叩く、またはプレスをかけて成形していくような技術になります。

【山崎】ジュエリー業界の中で、一般的なつくり方なんですか?

【シマダ】鋳造という、型を造ってそこに溶かした金属を流し込むというやり方が主流なんですよね。生産量で言うと、99%くらいが鋳造です。その方がコストを抑えられて量産がしやすいので、圧倒的に多いですね。鍛造は100年~200年前はメインだったんですけど、今はどちらかというとニッチというか、そういった存在になっています。

【山崎】“職人技”ということですかね。

【シマダ】そうですね。どうしても手が加わらないとつくれないという製法です。ただ、鍛造と最新の3D CAD等を使うことで、“頭の中で想像しているデザインのほぼ100%が出来る”というのが現代なんですよね。なので、昔ながらの作り方と新しい技術をミックスして、皆が喜んでもらえるようなデザインを提供したいなというのが今の活動ですね。

【山崎】鍛造作家として、今はバングルをメインで作られていると思うんですけど、今後作ってみたいものはあったりしますか?

【シマダ】晴太郎君の腕をジャックしてみたいですね。

【山崎】本当にやってほしいですね。ぜひ、お願いしたいです。

シマダさんの活動を色々見ていると、ファッションやアクセサリーという回転の速い業界の中で、1つの提言というか意思みたいなものを感じるんです。産業としての課題が浮き彫りになってきている中で、ファッション業界をどう見ていますか?

【シマダ】ファッションの仕事をしていた時に意識をしていたのが、比較的定番ものをつくるという事ですね。今でも好きでいてくれる方はいらっしゃって、10年以上前のものでも「今も、着ています」って言ってくださる方がいるので、嬉しいなと思う事はあるんです。

でも、どうしても5年~10年がアンカーのものもあったりするので、どうやって業界の中からというか、横からというか、少しでも解決が出来れば良いのかなと思ってはいます。ただ、自分がインディペンデントなので、大きな動きは出来なかったりするので、草の根的に自分に関わる人達には、ものとの“長いお付き合い”を知るきっかけになればと思っていますね。

【山崎】まさに、今されていることは、“想いを継いでいく”みたいな活動に見えますよね。流行というよりは、時間だったり、素材との対話だったり、もう少し長いスパンで向き合うという事だと思うんです。“時を超えるものの共通した魅力”みたいなものって、どう感じていますか?

【シマダ】その人の中の“普遍性”という考え方もあるのかなと思っているんですね。もっと広い意味での“時代を超える普遍性”もあるんですけど、「あなただけの特別なもの」というか、「あなただけの普遍的なもの」を提供したり、見つけられたらいいなと、考えるようになりましたね。

【山崎】それぞれのライフスタイルや価値観があるように、それに寄り添うように提供していくという事ですかね。

【シマダ】はい。そうです。

【山崎】リスナーさんの中には「久しぶりに、アクセサリーにチャレンジしてみようかな」という方もいると思うんです。女性は、割とすぐにアイテムが出てくると思うんですけど、男性には何をオススメしますか?

【シマダ】ポイントの1つは、“カジュアル感のある仕上げのもの”ですかね。指輪やバングルとかのジュエリーって、基本的にはピカピカしているものが多いんですよ。それも高級感があって素敵なんですけど、40代・50代でサラッと1点だけ着けてみようという方には、カジュアル感のあるマットな仕上げとか、ざらつきのあるギラギラしない見た目のものを選ばれると、どんなお洋服とかスニーカーにも合わせやすいのかなとは思いますね。

もう1つは華奢なものではなくて、ある程度の幅があるものの方がお似合いになると思います。どっしりした印象になると言うんですかね。華奢なものだと、頼りなく見えてしまったりする事もあるので、ある程度の幅や厚みがあって、仕上げがピカピカしていないものであれば、ゴールドでもプラチナでも合わせやすいかなと思いますね。

【山崎】そういう視点から、アクセサリーを見れば良いんですね。男性が着けやすいのは、やはりバングルですかね?

【シマダ】バングルだと思います(笑)

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▶︎お客さんにとって“自分だけの特別な存在”をつくっていく

【山崎】ゲストの方、みなさんに伺っている事をお聞きします。僕、山崎晴太郎とコラボレーションするとしたら、どんな事をしてみたい、もしくは出来ると思いますか?

【シマダ】晴太郎君の今までの活動を見ていて、「こういったものもありそうだな」と思ってお伝えするんですけど。今、地域で使われていない港を、子供が海の生き物と触れ合えるような安全なパークとして造り変えるような活動をしてくれそうだなと

【山崎】なるほどね。そこで、ジュエリーを?

【シマダ】僕は関わらないんですけど(笑)

【山崎】関わらないんですか!?(笑) 確かに、僕は真珠のプロジェクトとかもやっていますからね。先ほどは、素材の話もしましたけど、素材自体が無くなっていきますからね。自然の素材って、どんどん消えていくのでそういうものを残していく活動はしたいなと思いますね。

そして、もう1つ。文化を伝える架空の百貨店があったとして、バイヤーとして一画を与えられたらどんなものを扱いたいですか?

【シマダ】自分が手がけているオーダーメイドの鍛造バングルのポップアップですね(笑) 気持ち良さを体験していただきたいと思います。

【山崎】やはり、体験をしないと分からないですよね。最後になりますが、使う人にとってどんな存在のアクセサリーをつくっていきたいと思っていますか?

【シマダ】自分と友達になるような、自分だけの特別な存在というのを、これからもつくれれば良いなと思っていますね。

【山崎】2週に渡って、シマダカツヨシさんとお送りしてきました。アクセサリーとか、ものに対する目線が変わって、良かったですね。今回のゲストは、アクセサリー主治医・鍛造作家・コンセプトデザイナーのシマダカツヨシさんでした。ありがとうございました。


【今週のプレイリスト】

▶︎ シマダカツヨシさんのリクエスト
『Star Guitar』The Chemical Brothers

▶︎山崎 晴太郎のセレクト
『Wheels Within Wheels』Penguin Cafe


といったところで、今週の文化百貨店は閉店となります。
次回は、日本初のソーシャルグッド専門エージェンシーひとしずく株式会社代表のこくぼひろしさんをお迎えします。

【次回2/20(日)24:30-25:00ゲスト】
ひとしずく株式会社 代表/PRコンダクター こくぼ ひろしさん

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1982 年、神奈川県生まれ。ソーシャルグッド専門の後方支援ファーム「ひとしずく株式会社」代表。「脱炭素(カーボンニュートラル)」の社会デザインに取り組む。一般社団法人チャートプロジェクト 代表理事。

また日曜深夜にお会いしましょう!

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