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【能登半島地震】〈社説〉復興とは何かを問え

※文化時報2024年4月12日号の掲載記事です。

 能登半島地震の発生から3カ月というタイミングで、被災した石川県が「創造的復興プラン(仮称)」の骨子案を公表した。馳浩知事が音頭を取り、約2カ月という短期間でまとめ上げたとはいえ、各部署が所管事項の範疇(はんちゅう)でメニューを積み上げた典型的な行政の復興計画である。これを金科玉条とするのでなく、復興とは何かという根源的な問いを立てるところから始めなければならない。

 骨子案は「創造的復興」について、単なる復旧にとどめず、自然と共生する能登の魅力を守り、能登ブランドを高めることだと位置付けている。人口減少と東京一極集中を踏まえ、多くの地方が直面する課題解決のモデルとなるような復興もうたっている。

 今回の地震では、三方を海に囲まれた半島の弱点を突かれる形で、幹線道路の寸断が復旧を大幅に遅らせた。同様のことは、外部からのアクセスが容易でない離島や山村でも想定できる。防災に基づく地域づくりという点では、たしかに参考にできる部分もあるだろう。

 だが、石川県の掲げる「創造的復興」は、防災にとどまらない。例えば、文化芸術・スポーツイベントの開催や能登空港(のと里山空港)へのプライベートジェットの誘致、眺望を生かした能登半島絶景街道構想など、自ら「思い切ったプロジェクト」と呼ぶ野心的な項目も盛り込まれている。

 地震で破壊されたものをつくり直す〝再建〟という行為に〝発展〟という価値を付加する。それが「創造的復興」なのだろう。

 能登の再建が必須なのは衆目の一致するところだが、発展については何を目標とするのか、どこに力点を置くかで多様な意見があると考えるのが自然である。発展がもたらす希望や生きがい、幸せの感じ方は、人それぞれ異なるからだ。決して行政からのお仕着せで決めることではない。

 「創造的復興プラン」は2032年度末までの9年計画で取り組む。地震発生前に策定された「石川県成長戦略」の目標年次にそろえたのだという。かつてない地震だったにもかかわらず、平時に立てた計画を見直さずに維持しようとする。前例踏襲にとらわれる行政の限界ではないか。

 今回の骨子案が全く違う形になってもいいというぐらいの心構えで、被災者と徹底的に対話し、復興とは何かという認識を共有した上で、計画を練り直すべきだ。対話には、地場産業の従事者や2次避難で故郷を離れた人はもちろん、障害者や外国人労働者など、能登で暮らしてきたあらゆる属性の人々を加えてほしい。

 重要な役割を果たすのは、宗教者である。

 北陸には「土徳」という言葉があり、信仰が人々の生活に根付いている。寺社を中心としたコミュニティーの存在感は、都市部の比ではない。加えて世俗とは異なる時間軸やものの見方によって、復興に新たな価値を打ち出せるはずだ。

 行政が宗教の重要性を見落としているようなら、教団トップが馳知事に直談判してはどうか。それでこそ、個々の宗教者にできないことを実行する教団の面目躍如となるだろう。

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