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【能登半島地震】見通せぬ再建「決して諦めない」 日蓮宗本住寺

※文化時報2024年4月9日号の掲載記事です。

 最大震度7を観測した元日の能登半島地震から3カ月が過ぎた。建物の約3分の1が全壊した石川県珠洲市では、寺院も同様に甚大な被害を受けており、再建の見通しは分からない。このうち日蓮宗本住寺は本堂と庫裏、山門が倒壊し、大句哲正住職(69)は半壊だった母親の実家に身を寄せる。「決して諦めない。たとえ檀家が1人になっても、寺を続けるのが住職の務めだ」と語る。(山根陽一)

 あの日、たまたま外にいた時に、地面から突き上げられるような揺れに襲われた。1分以上は続いただろうか。屋内に取り残された妻のわか子さん(67)は、負傷しながら何とか外にはい出した。「九死に一生を得た」。地盤の隆起で墓の位置が約2メートルずれたことが、はっきり見えた。

 本住寺から約2キロ離れた妙珠寺。大句住職が兼務住職を務めるこの寺では、前住職の妻、吉田満智子さん=当時(79)=が亡くなった。1月7日にがれきの下から遺体で発見されたという。「1月5日から捜索していたが、もう少し早く始めていれば」と悔やむ。

 しばらくは避難所生活を送り、不自由ながらも生活のめどが立つと、檀家を一軒一軒回った。最初の3日間は、50軒回って連絡が取れたのがたった1軒。ほとんどの家が倒壊しており、家人がどこにいるのか分からなかった。「電話もメールも通じない状況だった」と振り返る。

全壊した本住寺本堂の内部

 戻ってきた檀家たちは、倒壊した本堂や墓石を見て泣き崩れた。本住寺の周辺には曹洞宗千光寺、真宗大谷派高福寺など寺院が点在するが、ほとんどが倒壊して機能を失っている。

前年には鐘楼堂全壊

 本住寺は1559(永禄2)年創建。奥能登では数少ない日蓮宗寺院で法華経信仰の拠点となってきたが、昨年5月に珠洲市で震度6強を観測した地震でも、大きな被害を受けた。鐘楼堂が全壊したのだ。大みそかに檀信徒や近隣の人々が除夜の鐘を鳴らしに集う地元のシンボルだったという。

 大句住職はこれを再建するため、昨年11月にクラウドファンディング(CF)を開始。締め切りを今年1月末、目標金額を500万円に設定し、約330万円が集まっていたところだった。 

 「まさか再び地震に襲われるとは…。しかも強さが前回とは比べものにならない」。CFは頓挫したが、「命ある限り寺の再建を目指す」と誓う。

過酷な状況、徐々に好転

 本住寺がある珠洲市正院町の周辺は、道はかろうじて通れるものの、がれきの山が至る所にあり、3カ月たっても過酷な状況に置かれていることが分かる。断水も続いているという。

 そんな中、近くの小中学校のグラウンドに仮設住宅が約70戸建った。「檀家にも避難所から移れる人が出始めた。水道が復旧していないため制約は多いが、『横になって眠れるだけでもありがたい』と話している」。少しずつだが、好転している。

 奥能登は2007(平成19)年の能登半島地震以来、地震が続いてきた。そんな場所で生き続けることに、迷いはないのか。

再建を誓う大句住職

 大句住職は「さすがに今回は心が折れた。多くの人々が命を落として悲しむ日々は、つらい」と言葉を絞り出し、こう語った。

 「寺は人々のよりどころであり続けた。鎌倉時代、日蓮聖人も地震や疫病が蔓延(まんえん)する中、教えを説いて人々の心を救ったはず。10年を超える長いスパンになるが、なんとか踏ん張り続けたい」

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