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〈29〉お寺は究極の後見人

※文化時報2022年3月29号の掲載記事です。
  
 先日、筆者が理事を務める一般社団法人は、知的障がいがある女性と任意後見契約を結んだ。契約を結んだからといっても、効力を発するのは何十年も先の話。女性のご両親いずれもが実務を行えなくなってからだ。
 
 その一般社団法人の理事は、現在6人。一番年齢が低いのは筆者だが、それでもご両親よりは随分と年上になる。そんな法人に何十年後かの娘の生活を託したご両親のお気持ちは、いかばかりか。法人は何十年後にも健全に存続している義務を負ったことになり、その責任の重さを改めて感じている。
 
 21世紀の今、世界に目を向けると「GAFA」と呼ばれるグローバル企業が巨大な力を持っている。そのいずれもが筆者が生まれた1965(昭和40)年には存在しなかった。企業の盛衰は世の理ことわりである。
 
 オウム真理教事件の後、信者の1人が「日本のお寺は、単なる風景に過ぎなかった」という言葉を漏らしたそうだ。その風景は何百年の単位でその地に存在していることは分からなかったのだろうか? わが国の歴史の中では、民衆が永代に頼れる存在としてお寺があったのではないだろうか? 自分たちの死後も子孫を見守ってくれる大事な存在として、お寺に寄進してきた民衆がいたことを忘れてはならない。その意味でお寺は究極の後見人と言えるだろう。
 
 「文化時報 福祉仏教入門講座」は、第3期の募集が始まった。永代供養を掲げるお寺は多いと思う。永代を約束するのならば、成年後見制度の基本的なところは勉強しておかれることをお勧めする。筆者はそんな思いを込めてコラムを連載している。
 
 「机上の空論」ではなく、実務をお伝えしている。筆者は僧侶ではあるが住職ではない。住職になる予定もない。だから、一般社団法人やNPO法人の理事をして活動の場をつくっている。宗教法人格で後見契約を結ぶお寺が現れることを心から願っている。

 三浦紀夫(みうら・のりお)1965年生まれ。大阪府貝塚市出身。高校卒業後、一般企業を経て百貨店の仏事相談コーナーで10年間勤務。2009年に得度し、11年からビハーラ21理事・事務局長。21年には一般財団法人安住荘の代表理事に就任した。上智大学グリーフケア研究所、花園大学文学部仏教学科で非常勤講師を務めている。真宗大谷派瑞興寺(大阪市平野区)衆徒。

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