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〈34〉看護教育から変えたい

※文化時報2022年6月14日号の掲載記事です。

 「認知症カフェ(オレンジカフェ)」に行かれたことはあるだろうか?

 地域包括支援センターや介護事業所などが主体となって、認知症になっても安心して暮らせるまちづくりの一環として、全国各地で開かれている。地域交流のカフェをイメージしていただいたら近いだろう。

 ここ2年ばかりは感染症予防のため中止していた所がほとんどだったと思う。筆者の所も「あかんのんカフェ」という名称で開催しており、今年4月から再開することにした。

 先日、看護学科の学生さんらがお手伝いに来てくれた。初々しい「看護師の卵」が検温、手指消毒、血圧測定などをしてくれ、利用者さんは大喜びであった。昨今の大学生はもの静かなイメージがあるが、看護師を目指す学生さんはハキハキしていて気持ちがいい。お互いに良い経験となったひとときであった。

 引率の教員と筆者は同じビジョンを共有している。「2023(令和5)年版の看護師国家試験には『クリティカルケア=用語解説=』はあるが『グリーフ(悲嘆)ケア』はない。グリーフケアが看護師に必要な知識と認識されていないことが問題だ」と考えている。社会にもの申し、看護師の意識を教育段階から変えていこうと試みるつもりである。

 筆者は社会人向けのグリーフケア講座にいくつか関わっているが、いずれも看護師の受講者は多い。現場での経験から、死別後の家族ケアの重要性を痛感しているのだと思う。だから、自主的に参加してくる。そんな高い意識を持っている看護師は、宗教者との連携を望んでいると考えて間違いないだろう。

 世界保健機関(WHO)も、患者死別後の家族ケアは「緩和ケアに含まれる」と定義している。看護師と連携できる宗教者は貴重な存在になるだろう。

 連携のヒントが「認知症カフェ」にあるかもしれない。地域包括支援センターに問い合わせをしたら、開催日時と場所を教えてくれるだろう。一度足を踏み入れてみることをお勧めする。(三浦紀夫)

【用語解説】クリティカルケア
 生命の危機にある患者と家族のケア。「集中治療」と訳されることもあるが、近年は集中治療室での重症患者の看護だけでなく、あらゆる治療・療養の場で容体が急変した人やその家族に対し、専門性の高い看護やケアを行うことを指す。

 三浦紀夫(みうら・のりお)1965年生まれ。大阪府貝塚市出身。高校卒業後、一般企業を経て百貨店の仏事相談コーナーで10年間勤務。2009年に得度し、11年からビハーラ21理事・事務局長。21年には一般財団法人安住荘の代表理事に就任した。上智大学グリーフケア研究所、花園大学文学部仏教学科で非常勤講師を務めている。真宗大谷派瑞興寺(大阪市平野区)衆徒。

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