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〈33〉お寺との心理的距離

※文化時報2022年5月31日号の掲載記事です。
 
 喜連瓜破駅。筆者の活動拠点の最寄り駅だが、正しく読める人は少ないだろう。「きれうりわり」と読む。大阪でもトップクラスの難読な駅名だ。
 
 実は、喜連と瓜破はそれぞれ別の地域名である。ビハーラ21の本部は大阪市平野区瓜破西、安住荘は大阪市平野区喜連西が所在地。喜連も瓜破もそれぞれ難読な上、その境界線近くにある駅なので喜連瓜破駅という複雑な名称になった。
 
 その喜連瓜破駅付近に、阪神高速松原線が走っている。そして、あす6月1日から3年間かけて大規模な修復工事が行われる。当然ながら、喜連と瓜破地域住民の生活に大きな影響が出るだろう。
 
 「福祉仏教」というと医療や介護の専門職との連携がイメージされやすいが、地域住民との連携も大変重要となる。喜連も瓜破も住民活動は活発である。盆踊りなどの季節行事の際や回覧板には地域の医療・介護事業所の広告が掲載されている。
 
 しかし、地域住民の集まりに医療や介護の専門職が加わっているのは見たことがない。少なくとも、一緒にやっているという印象はない。地域包括ケアシステム=用語解説=という言葉がしきりに出てくるが、町会などの住民活動と医療・介護などの保険事業との間には、まだまだ高い垣根があると言わざるを得ない。
 
 翻ってお寺の存在はどうだろうか?
 
 ビハーラ21や安住荘は、地域住民との交流が盛んである。感染症拡大のため、いろいろな行事が中止となった2年間であったが、今年度から少しずつ再開しつつある。地域清掃にも参加し、盆踊りの際には交通整理などの役割ももらっている。逆に、当方敷地内の樹木の手入れなどは、地域住民が主体的に行ってくれている。とてもありがたい。
 
 今でこそ住宅が密集している喜連と瓜破の両地区ではあるが、昭和期には田畑が広がるのどかな風景だったそうだ。その頃はお寺の存在感はもっと大きかったに違いない。
 
 このまま地域住民との心理的距離が広がっていく一方でいいのだろうか? 大規模な意識の修復工事が必要かもしれない。(三浦紀夫)

【用語解説】地域包括ケアシステム
 誰もが住み慣れた地域で自分らしく最期まで暮らせる社会を目指し、厚生労働省が提唱している仕組み。医療機関と介護施設、自治会などが連携し、予防や生活支援を含めて一体的に高齢者を支える。団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに実現を図っている。

 三浦紀夫(みうら・のりお)1965年生まれ。大阪府貝塚市出身。高校卒業後、一般企業を経て百貨店の仏事相談コーナーで10年間勤務。2009年に得度し、11年からビハーラ21理事・事務局長。21年には一般財団法人安住荘の代表理事に就任した。上智大学グリーフケア研究所、花園大学文学部仏教学科で非常勤講師を務めている。真宗大谷派瑞興寺(大阪市平野区)衆徒。

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