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【支援の視点―能登と東北】②身勝手な支援 被災地困惑

※文化時報2024年4月12日号の掲載記事です。

 東日本大震災では地震発生から1週間ほどで多くの宗教者が食料や日用品などの支援物資を現地に運び込み、がれきの撤去や泥出しを手伝った。一方で、被災地では身勝手な支援に困惑したケースもあったという。主要幹線道路が寸断され、ボランティアの現地入りが困難な状況が続いた能登半島地震でも、今後は注意が必要だ。

住民押しのけ酒盛り

 「現地調達できる物は不要との声も聞くが、問題点はあったか」

 東日本大震災の被災地支援に当たる超宗派の宗教者らがつくった宗教者災害支援連絡会(島薗進代表)の情報交換会。発生1カ月余りの4月24日の段階で、こうした質問があった。

 福島第1原発事故の避難者25人を受け入れた浄土宗東漸寺(千葉県松戸市)の鈴木悦朗住職は「困ったことは特になかった」と応じた。

 ただ、残念ながら被災地にとっては「招かれざる宗教者」もいた。

 岩手県釜石市の日蓮宗仙寿院(芝﨑惠應住職)には、スーツと革靴を身に着け、金時計で着飾った複数の僧侶らが来訪。「何か手伝うことはあるか」と言いながら、避難した住民を押しのけて宿泊し、夜には酒盛りで大騒ぎした。

 避難所になった他の寺院でも、予告なくやって来た支援者が身勝手な行動をしたこともあれば、届けられた支援物資の中に社交ダンスで使うような古着のドレスが50着近く入っていたこともあったという。

 芝﨑住職は「自分本位な支援は、誰も喜ばない。被災者の悲痛な心に思いをはせ、寄り添う。これができない僧侶には価値がなく、形だけの回向や支援に被災者の心は動かない。人には心があることを忘れないでほしい」と語った。

東日本大震災で避難所となった仙寿院で釜石仏教会が行った炊き出し
=2011年3月、岩手県釜石市(仙寿院提供)

寸断 つながりが埋めた

 能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県輪島市では、道路の寸断で多くの集落が孤立した。

 初期段階から現地入りできたのは、曹洞宗系の公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)のように、被災地に負担をかけることなく支援ができる自己完結型の団体や、そういった団体との連携や普段からのつながりを基に現地のニーズを把握できる宗教者だった。

 一般社団法人えんまんは、代表理事で浄土真宗本願寺派本光寺(石川県小松市)副住職の八幡真衣さんが、孤立集落にいた知人から救援要請を受けた。地震翌日の1月2日には現地入りし、そこから口づてで孤立する自主避難所を聞きだして、支援物資を配った。

 東日本大震災を機に発足した災害支援ネットワークIwaki(DSNI、福島県いわき市)は、同じく震災ボランティアをきっかけに全国の個人・団体とつながる一般社団法人OPEN JAPAN(宮城県石巻市)と協力し、1月16日から石川県能登町で給水支援を行った。DSNI代表で浄土宗阿彌陀寺副住職の馬目一浩さんは「今回の支援では、現地の事情に精通した団体との連携が必要だった。普段からのネットワークづくりが大切だ」と語る。

 SVAは、1月12日に曹洞宗大本山總持寺祖院のある輪島市門前町に拠点を置き、門前公民館の避難所を運営した。支援団体をコーディネートし、炊き出しなどの活動ができる環境を整えた。行政や支援団体と、活動状況やニーズなどを情報共有する非公式会議を毎週水曜に行っている。

グループホーム楓の家で足湯ボランティアを行うSVAのメンバー=2024年2月、石川県輪島市

 SVA緊急人道支援担当の中井康博さんは「支援団体を必要な避難所にコーディネートするのも、サロン活動を行うのも、人と人をつなげること。それは、宗教者が得意とするところだ」と話した。

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