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【能登半島地震】人手不足が深刻化 宗援連、支援の課題伝える

※文化時報2024年4月12日号の掲載記事です。

 宗教者災害支援連絡会(島薗進代表、宗援連)は1日、真如苑友心院(東京都千代田区)で情報交換会「能登半島地震における宗教者による支援活動の広がりと現状」をオンライン併用で行った。能登半島地震を巡る情報交換会は2月23日に続いて2回目。宗教・宗派を超えた宗教者らが活動状況を報告し、深刻な人手不足に苦しむ現地の様子を伝えた。(山根陽一)

 カトリック教会の災害対応をまとめるカリタスジャパン担当司教の成井大介氏は、石川県七尾市での給水支援、ボランティアの宿泊手配や追悼行事などについて報告。「子どもたちが悲しみや怒りをぶつける場所がない」と指摘した。今後は同県輪島市の仮設住宅支援などにも取り組むと語った。

 真宗大谷派常福寺(七尾市)の畠山一心副住職は、輪島市で同派の若手僧侶らが住民と共に炊き出しを行っており、連携を深めることの重要性を説いた。1月に有志が結成した「災害支援北陸門徒ネット」も順調に活動を続けている。

 石浦神社(金沢市)権禰宜(ごんねぎ)の佐藤圭輔氏は、支援物資の供給拠点として仕分けを手がけている。「煩雑で人手が足りない上に、偏った品目が多く、ニーズをくみ取る必要がある」と問題提起した。

 浄土宗阿彌陀寺(福島県いわき市)副住職で、災害支援ネットワークIwaki代表の馬目一浩氏は、東日本大震災後の支援ノウハウを生かし、支援者を対象とした炊き出しを実施した。「全国の被災地で活動する支援者のネットワークを深め、情報共有を図りたい」と話した。

 地震発生から計29日間、現地で活動している曹洞宗神照寺(熊本県球磨村)住職の岩崎哲秀氏は、一般社団法人OPEN JAPANや全国曹洞宗青年会(全曹青)などと連携することで支援活動の幅が広がると指摘。今後は臨床宗教師=用語解説=の役割が重要になるとも言及した。

超宗派で行政に要請を

 創価学会インタナショナル人道・開発部長の浅井伸行氏は、創価学会が地震発生当日に災害対策本部を設置し、青年部の職員を中心にさまざまな支援活動に従事したことを伝え「今後は全国で1200を有する会館を活用して地域との連携を図り、多発する災害に備えたい」と話した。

 全曹青副会長の山崎秀典氏と髙柳龍哉氏は、石川県羽咋市の永光寺を拠点に、約120カ寺と連携しながら炊き出しや足湯、段ボールハウスの組み立てなどを行っていると報告した。山崎氏は「長引く避難生活で愚痴をこぼす機会をつくることに意義がある」、髙柳氏は「仮設住宅の抽選に漏れた人々に寄り添うことが大切」と話した。

 能登半島地震の被災地に8回入った大阪大学大学院の稲場圭信教授(宗教社会学)は、「現地の厳しい状況は変わらず、圧倒的に人手が足りない。超宗派で行政に働きかけることも検討してほしい」と呼び掛けた。

 島薗代表は「多くの経験を積んだ宗教者の横の連携の促進は重要だが、過度な組織化は個別行動の妨げになる。自由度を保ちながら連携する必要がある」と指摘した。次回の情報交換会は5月中旬を予定している。

【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)
 被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は23年5月現在で212人。

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