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〈8〉ナースボーズが語った決意

※文化時報2021年4月19日号の掲載記事です。

 2021年3月25日、文化時報1面トップ「看護師から僧侶へ」の見出しが目に飛び込んできた。浄土真宗本願寺派永生寺の伊達智子住職の記事だった。看護師としてのキャリアを手放し、父の後を継いで住職に専念することになった。

 「寺を町の安全基地のような存在にしたい」と締めくくられていたその記事を読み終えた時、「会いに行こう」と決めた。

 待ち合わせの駅に現れた伊達住職は、セレブな雰囲気が漂う長身の女性だった。近くのカフェでお話を伺った。住職に専念する葛藤は想像以上であった。自分で選んだというより「背中を押された」という方がしっくりくるかもしれない。

 「看護師としての仕事を諦めたつもりはない」。その言葉を聞けてうれしくなった。それどころか、寺を安全基地にする構想には、看護師としての経験を存分に生かしたいという思いが強く込められていた。

 伊達住職は、重い障害を抱える2人の息子さんの母親でもある。成人された息子さんたちにとっては、いつでも帰って来られる場所としての「安全基地づくり」につながる。

 ぜひ構想を実現できるよう、手伝いたくなった。筆者には「会いに行きたくなる病」と「おせっかい病」がある。実現に向けた手順が頭に湧いてくる。本当におせっかいな性分である。

 「お会いするのは、実は2回目なんですよ」と伊達住職は教えてくれた。20年1月、大阪の浄土宗寺院・大蓮寺で開催されたイベント「看仏連携」で出会っていたのだ。看護師と住職を両立させたいと願う伊達住職にとっては、看護と仏教の連携どころか「看仏一如」という心境だろう。まさに「ナースボーズ」である。まだまだ越えなくてはならない壁はたくさんある。でも、構想は必ず実現すると信じる。もちろん全力で応援する。(三浦紀夫)

 三浦紀夫(みうら・のりお) 1965年生まれ。大阪府貝塚市出身。高校卒業後、一般企業を経て百貨店の仏事相談コーナーで10年間勤務。2009年に得度し、11年からビハーラ21理事・事務局長。上智大学グリーフケア研究所、花園大学文学部仏教学科で非常勤講師を務めている。真宗大谷派瑞興寺(大阪市平野区)衆徒。
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