未知の病 カワバタ
三が日の最終日、わたしは突然、発病した。
今日は5日。今は後遺症に悩んでいる。
散歩中にふと「あれ、あの人の名前なんだっけ?」と思ったのがきっかけだった。
クイズやクロスワードに取り組んでいたわけではない。すぐに必要があるわけでもなく「そのうち」と思うものの、なぜそう思ったのかもわからず、かなり気持ち悪い。
教科書にでてくるような有名人で、特徴的な顔や作品名も思いだせるのだが本人の名前がでてこない。
作品名や受賞歴を思い浮かべてもちっともでてこない。
検索すればそれまでなのだが、意地になった。
その日は思い出せずじまいだった。
翌日も、ふとした時に「そういえば」と思い出せないことを思い出す。何度も繰り返し。
思い余って、検索よりは穏当かもしれない? 奇策として、ブックオフへ行って書棚の名札を眺めた。
ところが運悪く、その方の作品在庫がないようで名前が見当たらない。大江、芥川、太宰……じゃない。
この日も思い出せずじまい。重病だ。
で、本日。
午前中パソコンで作業中、コーヒーを飲もうとキッチンへ行き、カップを調理台に置いた瞬間、
「かわばたやすなり」
と、降臨した。
やれやれと思ったが、その後、何かの拍子に脳内に「カワバタヤスナリ」がこだまするのである。ひどい時はあの顔まで想起する始末。
愛読しているわけでも、とりたてて思い出したくもないのになぜだろう。
治るのだろうか。
不安だ。
ほら、また。
[ぶんろく 2024.01.05.]
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