見出し画像

井の頭公園の散歩(8)井の頭池の水草攻防と泳ぎとモーターボート

 さて、井の頭弁財天のお参りを終えると、井の頭池が気になる。まず弁天橋から弁天堂側を覗くのだが、この冬場は本当にきれいになっている。ただ、復活した絶滅危惧種の水草「ツツイトモ」に対し、外来種の水草「コカナダモ」が勢力を拡大して生育を脅かしていることが、東京都西部公園緑地事務所の調査で分かった。自然界は気が抜けないのだ。

 ここに来ると思いだすのは、元井之頭町会会長の岩崎菊男さんの少年時代の話だ。岩崎さんによれば、「井の頭池はきれいでしたよ、冷たくてね、藻が多くてね、下までは見えないんですよ。でも湧き水が出ているところは、水圧で藻がよけていましたね。その上を泳ぐと身体が持ち上がるぐらい噴き出しているのです。池の中に入ることは禁止されていましたが夏の夜はよく泳ぎました。ただ夜中でもバチャバチャ音がすると園丁がすぐ来ますからクロールじゃなくて平泳ぎですね(笑)。弁天様からお稲荷さん(「親之井稲荷」2013年〈平成25年〉5月焼失)まで泳ぐんですよ、そうすると涼しくなって寝られるのです」(井の頭恩賜公園開園100周年カウントダウン新聞『いのきちさん』23号から抜粋)

 この焼失したお稲荷さんの横に、戦前モーターボートの乗り場があった。この乗り場から、ボート池をぐるっと回って帰ってくるのだと何人から聞いたが裏付け資料が見つからない。ボートは木製で東京市のマーク(現在と同じ)の横に「ななゐ号」と記され、子供なら20人ほど乗れる大きさだ。戦時下になり「油を使う遊覧船はトンデモナイ」と短い生涯を終えたのだろうと想像している。この幻と言われたモーターボートは、東京都公園協会の収蔵写真にはなかったが、地元の明星学園史料室から出てきた。1937年(昭和12年)明星学園の児童を乗せた貴重な写真だ。(『井の頭公園100年写真集』〈ぶんしん出版〉参照)

いのきちさん 23号 2015年7・8号/2015年(平成27年)7月1日
https://www.bun-shin.co.jp/inokichisan/inokichisan23.pdf


メールマガジン『ぶんしん出版+ことこと舎便り』Vol.8 2022/1/14

このコラムは、(株)文伸 が運営する自費出版専門工房「ことこと舎」が毎月発行しているメールマガジン「ぶんしん出版+ことこと舎便り」からの転載です。メールマガジンをご希望の方は、ことこと舎のお問い合わせフォームから、メルマガ希望とお知らせください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?