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道草(5)謄写版印刷(ガリ版)に挑戦 その1

 当社の創立60周年記念誌がもう少しで完成します。その挨拶文をガリ版で印刷することになりました。創立当時を偲ぶという趣向です。「面白いアイデアだ」と思ったのですが、すでに当社には道具はありません。そこで、以前ガリ版機材を販売していた昭和謄写堂(現・ショーワ)さんに聞いてみますと、ここでも全部は揃わないことが分かりました。そこで、ガリ版文化に詳しい滋賀県彦根のサンライズ出版の岩根順子さんに相談したところ、滋賀東近江の「ガリ版伝承館」を紹介してくれました。岩根さんの会社もガリ版から始まったところで、父親の岩根豊秀さんはガリ版をアートの世界まで高めた一人です。

 ガリ版伝承館のサイトを開くと、東近江市立として市がしっかり管理していました。展示だけでなく体験コーナーもあり、その運営を担っているのが「新ガリ版ネットワーク」。ガリ版講習会やガリ版機材の販売、道具一式レンタルなど、幅広く伝承活動を支えている団体です。早速担当者にメールでレンタルをお願いしようとしたら、なんと下の名前が「文伸」さんでした。驚きました。送られた方もうちの社名を見て驚いたわけです。さて、そんなご縁もあり50年ぶりの「ガリ切り」(鉄のヤスリの上にのせたロウ原紙に鉄筆でガリガリと筆耕する)の挑戦ですが、どんなことになるのでしょう、楽しみです。

 ところで、このガリ版伝承館は、日本で初めて謄写版印刷機を作り発展させた堀井新治郎の本家を改修したところにあります。ガリ版(孔版)の発明はエジソンでその特許を取得しました。そしてその特許をもとに実用化したのがアメリカシカゴのA/Bディック社(この名前が出てきて驚きました、いつか触れます)で、堀井新治郎はその製品を日本に持ち込み、「謄写版」という名で製造販売したそうです(Wikipediaを参考)。
 日本の謄写版印刷の強みは、和紙の存在でした。薄く丈夫な和紙に蝋(ロウ)を引いたロウ原紙は国外からも高い評価を得た(大東化工神山公一会長談)のです。(つづく)

新ガリ版ネットワーク https://gamo-gariban.com/

メールマガジン『ぶんしん出版+ことこと舎便り』Vol.28 2023/09/26掲載


このコラムは、(株)文伸 が運営する自費出版専門工房「ことこと舎」が毎月発行しているメールマガジン「ぶんしん出版+ことこと舎便り」からの転載です。メールマガジンをご希望の方は、ことこと舎のお問い合わせフォームから、メルマガ希望とお知らせください。


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