[Radio bunt]ヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転』

2015年8月11日配信分:このテキストの内容は、FM-U-LaLa「さやGoodナイト!」番組内 Radio buntコーナで配信された内容をまとめています。

以下URLからダウンロードしてラジオ版を、お聞きいただけます。http://fmu.co.jp/radio/wm150811.wax

いや・・・暑いですね・・・今日はお盆休みという方もいらっしゃるかと思います。夏の最中、今日はちょっと涼しくなるホラー小説2冊、ご紹介しますね。

一冊目は、 ヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転』

これは、田舎のお屋敷に家庭教師として雇われることになった、二十歳の女性が、彼女自身の体験を書き綴ったという手記を中心に書かれている小説です。

簡単にいうと、お屋敷の主人(つまり雇い主)に一目惚れし、迷いのあったものの、家庭教師の仕事を引き受けるようになる。お屋敷には、雇い主の甥っ子と姪っ子の二人がいて、その子たちは天使のように美しく聡明だったため、彼女はすっかり心を奪われてしまった。しかし、その子供たちの周囲にはどうも幽霊がいるようだと。そのことを屋敷の女中に話してみたが、見たことはないという。

けれど、女中の話を聞くうちに、その幽霊は自分の前に働いていた女性と男性二人だということがわかり、さらにそれは悪魔のように恐ろしい存在だと認識して、この愛すべき子供たちを、なんとかして守ろうとした。その結果・・・まぁあんなことになったと。

この小説は、単純に「幽霊物語」として片付けることができないです。というのは、手記を残した家庭教師の一人称の物語なので、他の人の視野から物事を見ることはできないんですね。読んでいると、時々この女家庭教師は、自意識過剰のようにもみえるし、神経質にもみえるし、かといって子供たちの行動も納得のいかない部分が見て取れるし、っていうので、真実がはっきりと見えてこない。読者自身に推理を求める作品なので、そこに述べられたストーリーの一つ一つを取って分解して自分なりの結論に導く。友達同士で読んで読み終わった後、お互いの解釈を話し合ってみるっていうのも、面白いんじゃないでしょうか。

2冊目ご紹介するのは、ジョン・ソールの『暗い森の少女』

小説のしょっぱなから、胸が悪くなるような事件があるんですよ。その100年前のコンジャー家の悲惨な事件以降、コンジャー家には森に近づかないこと、ありもしない洞窟を探さないこと。というような戒めが伝えられるようになるんです。それを破って、洞窟を探しに行った先祖はかえらないひととなった。

そんな事実も相まって、現在のコンジャー家の当主、ジャックは二人の娘にもきつく森へは行かないようにと言いつけていたんです。ですが、ある日、ジャックと娘のセーラは森に入ってしまう。その日からセーラは口をきかなくなり、心も固く閉ざしてしまうんです。家族の歯車はかみ合わなくなっていく、徐々になにかおかしくなっていく。

またある日、長女のエリザベスは屋根裏から自分そっくりの少女の肖像がを見つけます。先祖の中にそういった少女が存在しなかったため、肖像画の子が誰なのかは謎です。そして同時期に、子供たちが行方不明になる事件が多発し始めるんです。しかも子供たちが消えたのは、コンジャー家の敷地内だという。。。。

この小説は、いかにも海外的なエクソシスト系の怖さと残忍で猟奇的な表現が結構でてくるんですけど、その悪魔的な部分ってどこから来る物なのかな、と考えさせられるところがあって・・・よく、小説とか映画で観る、取り付かれた人間の発する言葉って、その人間の心の声だったりもするんじゃないかと思うことがあります。『人間は神と悪魔の間に浮遊する』というパスカルの言葉を思い出しました。

今日は恐怖!な小説をご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。

それではみなさん、また次回。

Danke fürs Zuhören.

Schönen Abend noch.

Bis nächste Radiobunt!

(話し口調の文体のため読みにくい部分がございますが、ご了承ください。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?