７時に更新、24時間で消えてしまうショートエッセイ「CORECOLOR編集長　さとゆみの今日もコレカラ」。これを読んで、「朝ドラ受け」のようにそれぞれが自由に書くマガジン【今日コレ受け】に参加しています。

「お前はグレるな。グレたら絶対大物になるから。まっすぐ生きろ」

昔Oさんに言われた言葉だ。

何度か書いているが父は金八先生的なタイプの教師で、家には当時「不良」や「落ちこぼれ」と言われた生徒さんが集まっていた。
卒業してからも、大人になっても来ている人も多かった。

そのなかに、父が小学生のときに担任したOさんがいた。詳しくは知らないが、中学時代はかなりのワルとして名を知られていたらしい。
けれど父と話したことで将来を考え、働き出してから、夜間高校に進学したのだ。

Oさんは身体が細いが頭の回転がとても早い人で、入学してすぐに生徒会長になった。
そして、学校の制度改革を断行したらしい。先生を懐柔して学園祭なども企画し、学校生活を盛り上げていたようだ。

人間観察も非常に鋭く、「あの人がこうだ」とOさんが話す内容は的確だった。

それらが高じてか、よくモテた。
うちに来るたび、全くタイプの違う彼女を連れていたのには笑ったが……。なかにはかなり幼い雰囲気の女性もいて、年齢を聞いたら16歳だった。
当時Oさんは27歳くらいだったか。
「え？　犯罪ちゃうん？」と小学生ながらに思った。

あるとき、そんなOさんがマルボロの煙をくゆらせながらふと言ったのが、冒頭の言葉だ。

「お前はグレるな。グレたら絶対大物になるから。まっすぐ生きろ」

なんだかドラマみたいな台詞だ。
小学生のわたしのどこを見てそう言ったのだろう。頑固？　勝ち気？　子供時代はそうだったのかもしれない。

今なら「それはどういう意味？」と問い直すところだが、当時はただ、「あ、うん。分かったグレないようにする」みないな回答をした気がする。全然分かっていないのに！

と、ここまで書いて、ふと思った。
「とことんやってしまう性格」かもしれない。何事も「これぐらいでいいだろう」とあまり手が抜けない。
ときに、その方向が間違っていることも多分にあると自覚しているのだけれど、全力でやらないと気がすまないところがある。

ナゾの体育会系？気質……。
それが悪いほうに行ってはいけない、と心配してくれたのかも。

周りにいる反面教師を見まくって育ったのでグレることはなかったけれど、「まっすぐ生きろ」は実践できているだろうか。いや、「まっすぐ」どこかに走っているかもしれないが、その方向ってあってる？

つい全力ダッシュしがちだが、立ち止まり、ときどき確認しなければ。現在地と、進行方向を。
なにせ、方向音痴なもんで。

Oさんは卒業後に関東へ引っ越し、ここ数年は会っていない。
今ならなんと言ってくれるだろう。