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【革靴実験】レザーソールの利点!、、の盲点

こんにちは。MSY代表のブン(@wani_fumihiro)と申します。

レザーソールお好きですか?
私は好きです。
ちなみに私はハーフラバー派ですが、それは置いておきまして、、今回はレザーソールの利点と言われることのある「吸水性(吸湿性)」について気がついた事があるので共有させていただきます。

※ここでは、「レザーソール」は本底(アウトソール)を指します。
※通気性については論じません。レザーソールに通気性はそもそもありません。

レザーソールの利点

一般的に言われているのは、レザーソールはラバーソールに比べて吸水性に優れています。
それによる大きなメリットの一つは、雑菌の繁殖を抑えることで悪臭の発生を防ぐとのこと。
※足の汗が中底経由でレザーソールに給水され、水捌けが良いため。

靴の構造(ハンドソーンウェルテッド製法)

※図はMSYサイトより

図の通り、足の汗は
足→中底→ナカモノ→レザーソール(図ではアウトソール)
の順を辿るということなのでしょう。

これについは今まで何の疑問も持っていませんでした。


が、

盲点

靴の製法解説図では描かれていないものを忘れていました。

接着剤

です。

私が靴を作る場合、正確には

足→中底→ナカモノ→レザーソール

ではなく

足→中底→接着剤→ナカモノ→接着剤→レザーソール

となっています。

ここで出てくる疑問は、

接着剤って、水通すんだっけ・・・?

気になるので実験してみました

実験

仮説
「接着剤の扱い方によっては、レザーソールの利点である吸水性(吸湿性)が損なわれるのでは?」

レザーソールを想定した厚さ4mmの牛革をカットします。

正方形のペアを二組用意します。
ペア① タッカー(大きなホチキス)で固定
ペア② 製靴用接着剤で固定

製靴用では有名なダイアボンドを使ってみます。

(少し多めかな、、)と思うくらいしっかり載せて

歯ブラシで均一に塗り込みます。

5時間待ちます。

おやすみなさい。

おはようございます。
接着面をヒートガンで熱活性させます。

張り合わせてグッ!と抑えます。
これでもうガッチリ固定されました。

もう一組のペアはタッカーでガッチリ固定。

おおさじ一杯の水を容器に入れて

片面だけをしっかり浸水させます。
このとき、張り合わせた境界線を絶対に越えないようにします。

一時間待ちます。

一時間後、
どうなっているでしょうか。

スパッと切りました。

断面を見てみると、、
写真では良くわからないかもしれませんが、
左(タッカー)は色が濃くなっており
右(接着剤)は比較的薄いです。

色だとわかりにくいので、、
両方、全力で曲げてみました!

この通り、明らかな違いがあります。
タッカーのペアは水が浸透しているために革が柔らかくなっており、
対して接着剤のペアはほぼ乾燥したままなので全然曲がりません。

結論

「接着剤を適切・必要最小限な塗布としない限りレザーソールの吸水性は損なわれる」

今回は、敢えて多めに接着剤を塗りました。
同じ実験を、接着剤超薄塗りでやるとまた結果は変わるかもしれません。

また、接着剤の種類も様々です。別のゴムのり等など、、だと結果は変わるのかもしれませ。

とは言えこの実験をするまでは、底付け作業の際に接着剤塗布が吸水性にどう影響するかは全く意識していませんでした。

「レザーソールは吸水性に優れている」

という一般論を鵜呑みにしていましたが、

「接着剤を適切・必要最小限な塗布としない限りレザーソールの吸水性は損なわれる」
ということ学びました。

市販靴ではどう確認する?

では、市販の靴の接着剤量を確認できるでしょうか?

残念ながら、難しいと思います。
靴の工場見学など行く機会がある方は、ぜひじっくり観察・質問してみてください。

オマケ

製法、素材、などなど外見からは分からない魅力が
靴の内部には沢山沢山詰まっています。

興味のある方は、MSYが開催するワークショップも覗いてみてください!

革靴のかかと交換ワークショップ

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