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諏訪の仏教の龍ってなに〜?

最近、諏訪では龍神様が皆さんの心を動かしています。

諏訪のソウルフードテンホウの大石社長が企画した「諏訪の龍神さま」という絵本が大好評ですね!

私も監修に加えて頂き、一文書かせて頂きました。

龍神と聞くと神様だから仏教は関係ないんじゃないかとお思いの方が多いかも知れませんが、すごく密接に関わっているんですよ〜

そこで、仏教の龍神さまについてお話したいと思います(神道やアニミズムを否定するものではありません〜仏教目線の解説です)

龍神は仏教由来!?

龍と聞くとどのようなイメージを持ちますか?

蛇のような体を持ち、鹿のような角を持ち、鷹の爪を持ち…と沢山の動物が集合した姿の聖獣をイメージしませんか?

(仏法紹隆寺蔵 月静筆 雲竜画)

日本人のほとんどがイメージする龍は中国からやって来ました!

え!日本のものでは無いの?諏訪にも古代の龍の信仰があるじゃないか!って思う方も居るかと思います。

でも、私たちがイメージする龍というのは中国から来たというのは真実なんです…

そして、多くの場合は仏教が広まるのと共に聖獣である龍が日本に広がりました。

古代の日本の龍

仏教が日本に広まる以前、日本人が信仰していたものの一つに「ヘビ」がありました。脱皮を繰り返えす不思議な動物、人間が本能的に畏怖する動物「ヘビ」は信仰の対象になりました。

これが、日本の龍の信仰の原型「ヘビ」の信仰です。

この諏訪地域の龍の信仰も最初は「ヘビ」の信仰がもとです。

仏法紹隆寺の聖天堂に祀られる龍蛇神

ヤマタノオロチもへびですしね! 

ヘビの信仰が龍へと変遷していきます。

仏教の龍

仏教の龍の起源はインドです。また、やはり「ヘビ」から始まります。

ナーガというコブラともいわれるヘビが神格化したものです。

仏教に取り入れられて、龍族となります。

法華経というお経に書かれている「八大竜王」という龍はとっても有名なんですよ。

法華経の成立は紀元前1世紀頃という説もあります。

日本では弥生時代のころ、仏教ではすでに法華経という経典が成立して、龍が登場するんです。

法華経の八大竜王

難陀(ナンダ 龍王)

跋難陀(ウパナンダ 龍王の弟)

娑伽羅(サーガラ 娑伽羅の娘が善女龍王・弘法大師が密教守護神として連れてきた龍)

和修吉(ヴァースキ 九頭竜 戸隠の龍神さま)

徳叉迦(タクシャカ )

阿那婆達多(アナヴァタプタ)

摩耶斯(マナスヴィン)

優鉢羅(ウッパラカ)

この八大竜王は仏教に帰依して、仏教の護法善神(守り神)となりました。

仏教の龍も中国に伝わり、今の皆さんがイメージする龍という聖獣の姿に定着するんです。

ちなみに・・・仏教経典には龍は沢山出てきます。一番身近な龍は観音様のお経に書かれている龍かもしれませんね!観音様は「龍」も救う菩薩様とかかれています。

あのお不動様の化身は倶利伽羅龍王という龍なんですよ~

倶利伽羅龍王札

諏訪の「龍」

いよいよ日本に於いても「龍神」がひろまります。それは仏教がひろがるのに伴い、ヘビの信仰が今イメージする龍の姿と習合し、定着していくのです。

諏訪の龍は・・・・ 
諏訪の仏教の最初は「法華経」が基だと考えられます。そうです!八大竜王が諏訪に入ってくるのです~ 

伝承では平安時代・・・遅くとも鎌倉時代には仏教が諏訪に入ります

諏訪の龍神のお話は中世(鎌倉時代以降)から出てきます。

その多くが神仏習合の中から生まれてくるんです。

例えば…「神道集」という諏訪の龍神のお話が出てくる中世神話は…お坊さんが書いています。神官さんが書いたものではないんです…題名に惑わされますね!

私は諏訪の「ヘビ」の信仰が仏教伝来と共に、「龍」の信仰へと変遷していったものと考えています。

そして、アニミズムでもあり、神さまでもあった「ヘビ」が「龍」の姿になりました。

私のお寺には密教の護法神である「サーガラの娘・善女龍王」である「清瀧権現」が祀られているんですよ! 弘法大師が神泉苑で降雨のご祈祷の時に現われたというお話で有名な龍神様です。

諏訪仏教の不思議

諏訪の真言宗は大きく分けると3つの流れがありました。

上神宮寺の一派 下神宮寺の一派 仏法紹隆寺の一派

仏法紹隆寺の一派を見ていくと偶然かもしれませんが、面白いことに気づきます。

長河山 真徳寺 (河)

清瀧山 長円寺 (清瀧)

小泉山 小泉寺 (泉)

八剱山 甲立寺(かつては甲龍寺) (降龍 こうりゅう)

鼈澤荘厳山 仏法紹隆寺 (昇竜 青龍 しょうりゅう)

水晶山 開敷院 (かつては水精山) (水精)

龍光山 小坂観音院 (龍) 

青龍山 真福寺 (龍)

龍光山 昌福寺 (龍)

(この他の一派は 白岩山惣持院 普門山萬福寺(観音様と龍) 八幡山極楽寺(倶利伽羅龍王)という繋がりも・・・真龍院というお寺も… 医王山金乗院というお寺もありますが…))

どうでしょうか? 茅野の八ヶ岳山麓から「水」と「龍」を冠するお寺が岡谷の天竜川まで続いていくのです。単なる偶然なのか?はどうなんでしょうかね!
(この章は想像の域です)

日本の文化

かつて明治政府は神の国日本、神国日本を目指し、外来宗教排除を進めました・・・・

しかし、日本の文化の礎は「神道」でもあり「アニミズム」でもあり「仏教」でもあるのです。

日本の仏教は、今はほとんど日本の色が濃い、日本文化の仏教になっています。

「龍神」も実は「仏教」でもあり「神道」でもあり「アニミズム」なんです!

諏訪大明神本地普賢菩薩

諏訪大明神さまの化身が龍(ヘビ)であるという説話は沢山あります。

先述した中世の説話に登場する神様は諏訪大明神さまなんです。

諏訪大明神様の姿の一つは龍なんですよね!

明治時代までは日本中どこも神仏習合という思想が当たり前でした。神さまと仏さまは一緒なんです!

そして、神さまの本の姿は仏さまと考えられていました。

諏訪大明神さまという言い方も仏教色の濃い呼び方なんですよ!

その諏訪大明神様の元の姿は普賢菩薩さまという仏さまで、明治時代まで、今から150年前までは諏訪大明神様として上社神宮寺というお寺に大切に祀られていたのです。

かつての神仏習合と龍を図式化すると、以下のようになります。

(本地)普賢菩薩さま→(垂迹)諏訪大明神さま→(化身)龍

そして、普賢菩薩さまは辰・巳年の守り本尊でもあるんです!

そう! 龍とヘビの守り本尊です!

最後に

諏訪の龍神さまの巻頭文をご紹介します!

諏訪人の心に住まう龍神さま
今、私たちが認識する姿の「龍」は仏教と共に中国より日本にもたらされたといいます。弘法大師さま(空海)も中国の青龍寺より龍神(清瀧権現)を日本にお連れし、密教の守護神とされました。そして、諏訪の仏教は、伝来当初「法華経」というお経の信仰が礎となり、法華経の中に説かれる八大龍王と共に龍の信仰もやってきたと考えられます。
その頃、この諏訪の地には豊かな大自然を崇拝する心、諏訪の神さまを信仰する心が人々の生活の支えとなっていた事と思います。そこに「龍」という強大な力を持つ聖獣が融合し、諏訪の龍神さまが生まれ、人々の畏怖する信仰となったのではないでしょうか。
それは、アニミズムでもあり、神さまでもあり、仏さまであったのです。龍神さまは諏訪人の心に住まう信仰の結晶なのです。
かつて明治時代までは神さま仏さまが融合する信仰「神仏習合」が日本人の信仰の姿でした。諏訪の地のそれは、仏教の諏訪信仰、神道の諏訪信仰、アニミズムの諏訪信仰、そのすべてでした。総てが混ざり合い溶け込み諏訪人の心となります。豊かな諏訪の文化、歴史の彩りは豊かな心が生んだ、諏訪の誇れる魅力となっています。


諏訪の龍神は諏訪大明神という存在をどの様に受け取るか〜という事だと思うのです!

諏訪湖を渡る御神渡りも、山々に宿る精霊も、神様も仏様も〜 私たちがどのような姿で受け取るかという差ではないでしょうか〜

仏教目線で解説いたしましたが、こだわりを持たずに皆様がそれぞれの楽しみ方で諏訪の歴史に触れて頂くのが一番いいかもですね!

いま多くの皆さんを魅了している龍神絵本は企画をされた大石社長のテンホウの通販サイトで購入する事もできます。

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