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DXよりも大切なアナログ意識

 巷で騒がれている「DX(Digital Transformation)」という言葉に対して、ネガティブな印象を持っているのは私だけではないはずだ。DXは目的ではなく、あくまで手段だ。それなのに周りでは「DXを実現します!」という〝手段の目的化〟が横行している。大抵は業務効率化のためにDXを実施することが多いと思うが、その施策の本質はデジタルでないこともある。たとえアナログであっても、個々人ひいては集団としての意識醸成の方が重要だろう。どんなものが例としてあるだろうか?

電子ファイルの仕分け

 上記でも度々ネタにされるように、データをたくさん持っていてもデータを活用できない要因として、データがそもそも整理整頓されていないことはよく挙げられる。「データ分析の8割はデータの前処理」とよく言われるように、あるモノを使える状態にするためには、対象となるモノを予め整理整頓しておくことが必要なのだ。

紙書類の仕分け
 仕分けするのは電子ファイルだけではない。紙書類も対象だ。例えばデスクの上に書類を積み重ねている人は、必要な書類を持っているかどうか、すぐには判断できないし、その書類をすぐに引き出すことも困難だろう。稀にそういった記憶力に優れている人がいるが、それ以外のことに脳の記憶を割いたほうが良いように思う。

規則の仕分け
社会情勢に応じて組織内の規則も変わっていくものだ。どの規則が現行下で適切なのか判断するのに時間がかかっていたら、規則を守らせることなどできないし、本末転倒だ。必要な規則のみをくっきりと前景化し、意思決定に必要なリソースを最小限にしたい。


不要なものを捨てる必要は決してない
 これまで電子ファイル・書類・規則の仕分けを挙げてきたが、もちろん情報を廃棄することが難しい状況も存在するだろう。その場合であっても、きっちりと収納しておくことは肝要だろう。この時、簡単に人の目には付かないが、いざという時にすぐ引き出せるような管理が求められる。例えば、規則改定時に過去の規則を参照する場合などが考えられるだろう。

企業研究者としてのアナログ意識
 では、実際問題どのように対応していけばいいのだろうか? 私が企業研究者として効率的に業務に当たる上で気をつけていることを取り上げてみる。これが絶対的な正解だとは思わないが、参考となれば幸いである。

1.ファイル名の命名規則の統一
 1-1.フォルダの先頭に通し番号を振る。
  例)"01_文献" "02_実験結果" "03_会議" …… 
 1-2.資料のファイル名に「作成日」「版」「作成者」を記載し、他の文言は書かない。
  例)"240407_◯◯における✗✗の動向調査_ver1_佐藤.pptx ……
 1-3.論文のファイル名に「出版年」「雑誌名」「要約」を記載する。
  例)"2024_Nature_DrugScreening-Review.pdf" ……

2.電子書類の仕分け
 2-1.最終版以外は「アーカイブ」フォルダにまとめて格納する。
 2-2.フォルダのツリー構造を意識して格納する。
  └1階層あたり ≦ 20フォルダでの管理が望ましい気がする。

3.紙書類の仕分け
 3-1.書類の特性ごとにファイリングする。
  例)"論文"、"実験記録"、"仕様書・取扱説明書" ……
 3-2.電子ファイルとしても共有された紙書類は廃棄する。
 3-3.印刷した論文は、読み終えたら溜めずに廃棄する。


おわりに
 デジタルによる解決に全てを委ねるのではなく、まずはアナログに整理整頓する意識を維持することが不可欠だろう。身も心も整理されていれば、ある程度生産性は向上する。それだけで解決しない場合に限り、デジタルな改革(≒ DX)の出番となる。

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