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演劇と国語4技能

 「国語4技能」を基にした「国語学習」を、本間正人先生と提案させて頂いているわけですが、考えてみれば演劇には国語4技能の要素が全て包含されているんですよね。見事に総動員されている、と言いますか。MI理論的には身体的知性と対人的知性の要素が多めですかね。そのことに、ふと気が付きました。

 まず「話すこと」。これはもちろん、感情を伴わせながら台本を読んだり、身体と言語とを結びつけて全力で表現したり、といった営みです。他の役者と共にどのような点を改善すればより見応えのある演技になるかといったことを、AARサイクル(Anticipation:予測、Action:行動、Reflection:省察・内省)で回してゆくことも「話すこと」になります。演劇の全活動を通して、この「話すこと」はコミュニケーションの基本となります。

 次に「聴くこと」。これは「話すこと」とセットで捉えると分かりやすいですが、そもそも演劇は他の役の台詞に合わせて適切に自身の台詞を発したり、次の行動を起こさなければ、作品として成立しません。観客の様子や演じられている舞台そのものの空気感に、身体全体で耳を傾けるという行動も含まれるかと思います。演劇の土台は傾聴する力にあると言っても良いかもしれません。確か平田オリザ先生が、日本人は「対話」が苦手という旨を仰っていたように記憶していますが、まさに演劇は「対話のレッスン」として最適です。

 さらに「読むこと」。この中には、台本を字面通りに、解釈しながら「読む」ことと、役と心身をシンクロさせて「詠む」ことが該当します(まさに「詠じる」ということです)。演劇において、物語の解釈と役への徹底的な没入とは両輪の関係性にあります。

 そして「書くこと」。これは台本の作者側に立って、作品のストーリーなどの全体像や、役ごとの台詞、どのような大道具・小道具を使うかといったことを詳述することに当たります。作者だけでなく、役者や裏方も、プロット・台詞を書き換えるなど「書くこと」にいつでも関与し得ますので、必ずしも作者の特権ということにはなりません。

 かく言う私も、高校一年生の一年間だけですが、演劇同好会に所属していました。まさか6年越しに、このような形であの時の経験が活きることになろうとは思いもしませんでしたが(笑)色々辛かったことも楽しかったことも、悲喜交交あり、私にとってあの一連の経験は何だったのか、省察を重ねた甲斐があったというものです。願わくばもう一度、あの仲間たちと共にわちゃわちゃしながら演じたいという思いはありますが、今度は言語化という形で何かしら還元できればと思っております。

 2015年度K高校の演劇同好会の先輩方、先生、もし奇跡的にこの記事に辿り着くことができたのでしたら、改めて御礼申し上げます。

 

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