タイ旅行 アングラ編
※ マガジン 押し入れには10年前にジャンプがよくある
過去の消した記事をリサイクルした物です
アンダーグラウンドに憧れがある。と、いうかあった。
理由は単純。中2くさいけど、なんかかっこいいから。
僕の生まれはごくふつうで、田舎に生まれてふつうにスマブラをしながら、ハナクソほじくって生きてきた。家庭環境もふつうで、ヤクザの生まれでも、両親が荒れてるとか、伝説の勇者の末裔とか、そういう事もない。
贅沢で幸せなことなのだけど、特に特筆することなし。だ。
ふつうにふつうの生活では、みんな建前と本音を使い分け、常識がある程度通用して、まぁふつうだ。
でも、なんかリアルじゃないな。って。
もっとバリバリ人間らしい、常識の通用しない、そんな世界が見たい。
やばいアングラに首を突っ込んでみたい。そんな無い物ねだりなマインドが僕にはあり、大学時代にありがちな二週間ちょっとのアジア旅行へとつき立てた。
その時にみた話を、少ししたい。
ドラッグの町、ラオスーバンビエン
ラオスの首都から、バンに乗って5時間ほど山道を越えると、
バンビエンという町がある。
本当に舗装もされてない山道を何時間も超え、コンビニもトイレも無いし(そもそもラオスにはコンビニ等はないのだが)秘境の田舎町なのだが、ここには多くのバックパッカーが集まる。理由は単純だ。ここが、ドラッグ解放区だから。
と、言っても主に大麻だが。
一応言っておくが、僕はドラッグとかそういうのはやったこと無いし、反対も賛成もしない。ただ、その周辺を取り巻く状況や人々を見る事に興味がある。
「あぁ、別世界だな…」とか、別世界を見ることで自分の世界を改めて知りたいー。
そんな趣味の悪い感じ。
異国情緒あふれる、田舎町だ。
たまたまタイで出会ったヒッピーっぽいバックパッカーが、バンビエンに行くという事なのでついていきたくなった。
川くだりが有名で、それを適当にこなして二日ほど滞在してネパールあたりに移動する、というプランだった。
「ほぉ~きれいな景色だな…」と思って宿を探していると、声をかけられる。
まずかけられた一言。
「ハッパ、スモーク!スモーク!マリファナ!ススキノ!」
タバコを吸うジェスチャーをしながら、オッサンが寄ってきた。
笑ってしまう。一応ラオスは大麻は法律で禁止なのだが、警察も見て見ぬフリ
外で堂々と吸ってる人もいる。
「ノーサンキュー」と手を振りほどきながら町を歩いていると、オープンカフェがある。
西洋系のバックパッカーが多く、だらーんと昼寝している。
大体、大麻を吸ってダラダラしてるらしい。
「リアルだなぁ。」
そんな事を思った。凄まじく、時間がゆっくりと流れている。
牛が道を歩き、ニワトリが外を闊歩し、地元の子供がサッカーしたり、ハンモックで寝ている。ゆったりとした世界だ。ぱっと見、ドラッグの町だなんて思えない。
そんなこんなで宿を取った。一泊700円。そこそこキレイなシングルルーム。
チェックインの時に耳打ちで「マリファ~ナ」みたいな事を言われた。
どんだけ自由なんだよ…「ノーセンキュー」と返し、適当に町をぶらぶらしたり、川くだりをして町を楽しんだ。町の子供が山の鍾乳洞を案内してくれ、舗装もされておらず、泥の中を這い、鍾乳洞を進んだりして、転んだ僕に薬草をくれた。
お礼のチップを少し多めに渡すと、すごくニコニコしていた。
財布を取り出すだけでそわそわ。ラオスは親日国だが、ラオス人は日本人より確実にお金が好きだ。まぁ、当たり前か。
町には、意外と日本人も多かった。
夜は、BARに出かけた。
友達を酒を飲んでいた。
この町は、アクティビティ自体は少ない。
お酒を飲んで、自然を楽しんで、それくらい。
けど、ゆったりとした雰囲気のせいで、することもなくダラダラ滞在してしまう。
BARの店員が、英語が通じたので、店員さんと黒人のバックパッカーと少し話して盛り上がっていた。
「ヘイ!ジャパニーズ!どうしてお前らはブラックガールを試さないんだ?最高だぜ?俺なんか今日5回も○ってきたぜ!HAHAHAHA!」
みたいな事を言っていた、「そりゃ、こんなやつらにオリンピック勝てねぇわな。」
と、僕は納得した。外人といえど、当たり前だけど十人十色だ。
黒人さんはシェイクを飲んでいた。幻覚性のあるキノコの混じったアルコールシェイク。
一ヶ月ほど滞在しており、ぶらぶらしてるらしい。
「すげぇリアルだな。」と、思った。本音丸出し。こういう世界に、興味があったのだ。
ここは、田舎だ。辛うじてネットはあるが、道もほとんど舗装されていない。
店員に聞いてみた。普段は村人は何をしているのだろうか。
「ここは、昔からこうなのか?」
「もともとは農業がメインだったが、今はバックパッカーが集まるようになってずいぶん経済が変わったよ。農業をしながら大麻を育ててる農家もいるし、ドラッグで金を貯めて都市部に出てくるやつもいるけどな。大体はこの町で生まれて親の仕事を継いでいくやつが多いな。」
なるほど。ドラッグもこの町の経済の一部として組み込まれているのだ。
もともと田舎だったこの町に、ドラッグ産業が持ち込まれ、共存している状態。
話を続いて聞いていたが、農家が主だからドラッグは自然系の物が主なようだ。
農家が栽培し、観光客に流れる。栽培できないドラッグは、この町にはあまり蔓延していないらしい。(実際は知らないが)
黒人さんは、マリファナを吸って、ヘッドホンをつけてハンモックですやすやと眠っていた。
店員さんも、売店の人も、旅行会社の人も、すごくゆったり仕事している。
昼寝したり、友達と話しながら、仕事している。
きっと、ノルマとかそういうのは無いのだろう。
その姿は、幸せそうに見えた。
2chで有名なコピペがある。
田舎暮らしの男に、富豪がビジネスの話を持ちかける。
田舎暮らしの男は「そんなにお金を稼いだ後、どうするんだ?」とたずねる。
富豪が答える「まったり農業したり、ギターを弾いたりしてゆったりすごせばいい」と。
その姿は、今の田舎暮らしの日常生活そのままだったー。という話だ。
バンビエンは、その姿そのままの町に見えた。
ドラッグと共存している町。「日本人はー」だなんていいたくないけど、
その姿をみると、確かに日本人は働きすぎなのかもしれない、と思った。
ホテルへ戻ると、ロビーで日本人のカップルが猫の寝相のように二人で丸くなって眠っていた。おそらく、二人で大麻か何かを使って眠ったのだろう。
なんだか死ぬほどムカツいたが、幸せそうだった。
相方のバックパッカーは風俗へと出かけ、僕はその晩風邪を引いて、
三日ほどホテルで寝込んだ。海外でかかる病気の不安はハンパじゃない。
特にここは田舎町だから、もっと大きな病気だったらドクターヘリだ。
保険には入っていたものの、気が気じゃなかった。
あのときほど日本の福祉のありがたみを感じたことはない。
寝込んだ後、僕はサッサとバンビエンを離れた。
理由は単純だ。確かに景観は美しいが、ドラッグをやらないような観光客にとってはバンビエンは数日で飽きる。観光名所を回ったら、ご飯食べてフラフラしておしまい。
あと、風邪が再発した時を考えると怖かった。
あんまりにも安寧に漬かり過ぎると、暇になる。
地元の子供たちと、サッカーして帰った。
携帯のアプリを渡すと、すごく物珍しく楽しそうにしていた。
携帯を持っている人をほとんど見なかったから、少ないのかもしれない。
帰りのバンで、子供たちとお別れをした。
この子達の多くはこの町で生まれ、育ち、骨を埋める。
それが幸せだとか、そうじゃないかとか、そんなことはわからない。
僕が見たバンビエンは本当に一部で、もっとドス黒い事情や悩みがあるのかもしれない。
しかし、パッと見はゆったりとした幸せそうな町だった。
ドラッグと共存している。僕の思ったアングラなスラムのイメージとは大きく違った。
相方のバックパッカーさんは僕が帰った後も、バンビエンに滞在していたようだ。
あの時手を振ってくれた子供たちは、今何をしているのだろうか。
帰国後
その後もいろいろぶらぶらしたが、それはまた機会があれば書くかもしれないし書かないかもしれない。
バンビエンで別れた彼とは、Face Bookで繋がっていて、帰国後彼のFaceBookとは一年ほど前にまたバンビエン旅行の写真のがアップロードされた後、途絶えた。
彼はフリーターで、失礼だが社会的に地位があるとか、そういう人ではない。
その後、FaceBookを止めただけなのか、何かあったのかは、僕は知らない。
「ドラッグは、幸福の前借だ」という言葉がある。
酒もそうだが、適度な使用はストレス解消になるのかもしれないが、依存の危険性がある。
酒だけに限らない。SNS、承認欲求もドラッグだと思う。
毎晩ツイキャスをしたり、ツイッターで愚痴を垂れ流すフォロワーがいた。
毎日、いろんなつらい事を吐露していた。しだいに暴言に代わり、毎日のように不満を言っていた。今は知らない。
悩みは、聞いてもらえばそこで完結する。悩みは、愚痴は、イイネがついて停滞する事もある。日々の不満を、そういったドラッグ作用は煙に巻いてしまう。
依存は、前進を停滞させる。
仕事の愚痴をいくらアルコールでごまかしても、キツい思いをして変えなければきっと前進しない。過度な安寧は、前進を妨げる。
前進しないことが悪いことだとかなんていわない。それは、自分のしたいことをすればいいだけだ。
要はバランスの問題で、悩みを抱えすぎれば病んでしまうし、甘えすぎれば自堕落になってしまう。
しかし、前進しただけ、ドラッグでは見えない世界も同様にきっと広がる、という事はあるだろう。
自分の好きなタイミングで、好きなようにすればいい。
バンビエンに一緒に行った彼は、半年ほど前、自殺した、と最近知った。
FaceBookのコメントから、知った。
何があったのか、何を思いつめたのか、ドラッグのせいかのか、そうではないのか、僕は何も知らない。薄情な事に、涙も出なかった。
僕はその時、アングラな世界への興味もすーっと冷めていったのを感じた。
TVや、情報を知るだけで十分かな、と最近は思い始めた。
幸福の価値観は人それぞれだが、僕にとっては「生きている実感」が何よりも大切だ。
ドラッグやアンダーグラウンドな世界は、「過程」よりも「結果」の比重がふつうより少し重い。
幸福感を得るドラッグは、過程を省いて結果を即座にもたらす。
もちろん、僕は彼らの事をキッチリと知る由もないのだが、そう感じたのだ。
僕の中では、結果は重要だが、思い返した時に心の中に残っているのはいつも結果よりも過程が大きい。苦労した事が、心の中に多く残っていて、その時に「生きている」という実感が濃かった。それが、僕にとっては大事だった。
彼は本当に死んでいるのか、生きているのか、バンビエンの子供たちは今何をしているのか、わからないままだ。
それは、きっとこの先一生わからないままだと思う。
しかし、別にそれでいい。
たとえアンダーグラウンドを知らなくても、
生きている実感は、今も十分あるのだから。
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