「気のせいだよねぇ」

私の家は度重なる地震により、ガタが来ている。
特に私の部屋である和室がすごい。
一階のドアを閉めた衝撃で二階にある和室の襖が少し揺れるのだ。
二階の洋室のドアを閉めても同じである。


私の部屋は二階の和室。向かいには洋室があり、そこは叔父の部屋になっている。
叔父はドアの閉め方が、まぁまぁ乱暴である。そのため、洋室のドアを閉めると和室の襖も微かに揺れる。
というか、仕草が割と乱暴である。
和室の襖を叩くときも「とんとん」ではなく「ドンドン」と叩く。やめてほしいとは思っている。
まぁ、私はイヤホンをしている時もあるし気づきやすいからいいか。

五月の深夜、私は自室で通話をしていた。いつも通りくだらない事でげらげら笑っていた時である。


ドンドンッ!!!


突然、襖が強い力でならされた。男性の力で思いっきり叩く音だ。
驚いて、振り向く。
(叔父が何か用事でもあるのだろうか)
そのために襖を鳴らしたのだろう。一瞬、叔父が入ってくるのを待っていた。
だが、入ってこない。
少し待っても入ってこない。
いたずらか?いや、そんなことするような人じゃない。



通話をミュートにして立ち上がり、襖を開ける。
微かに叔父の部屋から明かりが漏れる程度で、何もなかった。
痛いほどの静寂。


叔父の部屋に行き、聞いてみる。
「さっき、部屋の襖たたいた?」
「してないぞ。……あ、トイレには行ったけど」
なるほど。ならば、さっきの襖の揺れは洋室のドアを閉めた時の音だったんだ。なるほどな、とそう納得し部屋に戻った。
「いやぁ、やっぱりガタついてんだな」
幾度もの地震や台風を乗り越えたとて、やはり家自体も古くなっている。
だからか、玄関や洋室のドアを閉めると襖が揺れる。「カタカタ」と。


そうだよな。気のせいだよな。
たとえ、部屋のど真ん中に霊道があろうとも。
たとえ、部屋の入り口から5歳くらいのおかっぱの女の子が覗いていても。
たとえ、深夜にロングヘアで血だらけの着物を着た女性が立っていようとも。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?