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横浜市がカジノ誘致で揺れているが:

横浜市のIRリゾート施設誘致問題。ギャンブルや治安の問題、財政や地元経済の問題以前に、そもそもいまどきカジノってそれほどのコンテンツか?というお話。

変わるラスベガス

グローバルでは確かにリゾートや大人の娯楽としてメジャーな存在ではあるが、例えば、カジノの代表的な存在で、記号にもなっているラスベガスで、多くのホテルが1Fにカジノを構える構造になっているものの、夜の9時、10時過ぎといった時間帯でもテーブルが埋まることはなく、閑散としているホテルも珍しくない。

いまどきラスベガスでギャンブルに興じる層は、エリートや裕福層よりもう少し下の層といってもいいかもしれない。ダウンタウン(駅前の旧市街。80年代までのラスベガスといえばこちら)の老舗ホテルは比較的カジノがにぎわっているものの、ストリップ大通り(空港近くに開発されたホテルエリアの目抜き通り。いまのラスベガスはこちら)周辺のホテルはカジノフロアがもったいないくらい空いている。

だからといって、ホテルの経営が厳しいとか、ラスベガス自体が廃れているかというとそんなことはない。

ラスベガスは、ギャンブルだけの街ではなくなっている。現在多くのホテルはカジノと一緒に巨大なショースペース、シアターを構えている。往年のスター、マジックショー、ブルーマンのようなモダンアート風なショーやサーカスショーが、ホテルごとの目玉となっている。家族で楽しめるようなショーもあり、ショー目当てでくる旅行者が増えている。

ショービズとコンベンションの街

もうひとつはコンベンションだ。ラスベガスには巨大なコンベンションセンターがある。国際会議や見本市などがつねに行われている。新市街にはもうひとつ巨大なコンベンションセンターを作る計画が進んでいる。もちろん、大手ホテルのほとんどが、コンベンションホール、巨大なボールルームを多数持っており、巨大コンベンションのサテライトとして機能したり、大きなコンベンションもいたるところで開催されている。

さらにいえば、新市街の郊外にアウトレットモールを10年以上前に作っている。

ラスベガスのレジャーやビジネスは変わってきているわけだ。日本でも、IRリゾート法としてカジノだけの議論ではないのだが、どうもマスコミはわかりやすさなのか、わかっていないのか、カジノ誘致だけの議論となっている。地域にグローバルなリゾート施設、関連産業を考えるなら、カジノありきではなく、ショービジネス(テレビではない)やコンベンションビジネスといった視点が必要で、カジノはオマケ施設くらいでもいい。

海外の知り合いがいるなら聞いてみるといい。「日本にカジノができたら来ますか?」と。おそらく相手にはあまり刺さらない質問ではないだろうか。娯楽の指向性は変わってきているし、変化するものだ。ネットには「片肌脱いださらしのおねえさんの丁半ばくちなら海外にうける」という意見があるが、いまさら巨額投資でポーカーテーブルやスロットマシン並べてもという気がしないでもない。

日本ならではコンテンツと技術

もし横浜にIRリゾート施設を作るなら、ドローンレース、eスポーツ、エクストリーム系施設はどうだろうか。ロボコンやロボマスターの大会、巨大ロボットの対戦イベントをシリーズ化させてもいい。これらは巨額な賞金がかかる国際大会が開かれている。シリーズに組み込んでもらえれば、各国のチームやファンその他がやってくる。大人の娯楽ではないといわれそうだが、古い大人の娯楽なら無理に新しく作る必要もない。

東京ビッグサイトがオリンピックで分断され、周辺跡地利用を含めて利便性やスケジュールがしばらく見えない状況が予想される。みなとみらい以外の受け皿があれば、横浜への国際会議、巨大見本市誘致の可能性が開ける。

以上はアイデアレベルで予算や収益性の精査は必要だが、カジノありきで無茶な調査や予算どりすると、東京オリンピックの二の舞だ。

スケールしない税金経済が問題

そして、コンテンツやエンターテインメントでビジネスを考える場合、重要なのは、ハコモノづくりではない。例えばコンベンションビジネスを活性化させるなら、巨大会場だけ作っても意味はない。そもそもの流通システム、商慣習といった外堀を埋める必要がある。見本市を開いてもその場で大きな商談ができない、意思決定が遅ければ、海外ビジネスマンは金を払ってやってこない。国際会議・コンベンションに対する産業界の認識が「お勉強(=金にならない)」でも同様だ。

問題の本質は付加価値を生まない税金ビジネスいちばんの問題は、いまだに経済政策とハコモノ・公共投資が直結していることだろう。短期的には効果は期待できるが、産業界も国の予算をあてにして公共事業や政策案件には名乗りをあげるが、プロジェクトや予算が終わると放置状態となり、次のプロジェクトをくれ、となっている。内需が期待できない国内市場では、税金ベースの公共事業・プロジェクトしかないのかもしれないが、このプロセスは内部循環でしかないので、付加価値や利益は生まれない。国の経済は衰退するだけだ。

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