なぜ住宅に高気密化が必要?

高気密住宅が大学などの研究対象ではなく、工務店やハウスメーカーなどで建てられるようになって30年以上経ちました。
高気密住宅が始まったときは、イメージだけで語られることも多くずいぶん批判もありました。
高気密は息苦しい、低気密はだめだけど中気密程度でいいのではないか、コスト(手間や時間)がかかるなど、いろいろ言われたものです。
当初そのように言われたのは、高気密がなぜ必要なのかわかっていなかった人が多かったためだと思います。

では、なぜ住宅を高気密化する必要があるのでしょうか。
これを説明するためには、まず断熱の話をしなければなりません。
昔の住宅には断熱材が入っていなかったり、入っていても断熱材が薄かったりしました。
時代が進みより省エネでより快適な住宅が求められるようになり、だんだん高断熱化されていきました。
特に高断熱化が先行したのが北海道ですが、このとき北海道の住宅に問題が発生しました。
壁の中でナミダタケの発生が確認されたのです。
ナミダタケは木材腐朽菌で、湿度が高く、木材の含水率が高くなると腐朽が進みます。
断熱材のない壁ですと、室内の湿った空気が壁の中に入ってもすぐに外に抜けて行きます。
断熱材がある壁ですと、断熱材を境に内外の温度差ができます。
そうしますと室内の湿った空気が断熱材を通ると、断熱材の中で冷やされ結露します。
グラスウールなどの断熱材は構造上結露すると乾きづらく、湿度が高い状態が保たれます。
そうしますとナミダタケが発生し成長しやすい環境になってしまいます。

壁内結露(内部結露)を防ぐため

高断熱化するためには、断熱材を入れるだけではだめで、室内の湿った空気を壁に入れないようにしなければなりません。
そのため高気密化が必要になりました。
すき間があるとそこから空気が入りますから、すき間を少なくして壁の中に入る水蒸気を少なくすることで腐朽を防ぐことができます。
北海道は他地域よりも先行して断熱化されたことと、外気温が非常に低いのでナミダタケの現象が顕著に表れましたが、基本的には日本であればどこの地域も同様の現象が起きる可能性はあります。
つまり、住宅に断熱材を入れた場合は、高気密化が必須になるということです。

住宅を高気密化する利点は、結露(腐朽)防止の他に以下のものがあります。

省エネのため

いくら断熱してもすき間から熱が逃げていくと暖冷房費がかかります。
すき間を少なくすることで無駄な熱損失を少なくでき省エネになります。

計画換気のため

現在の住宅は基本的に換気システムの設置が義務化されています。
すき間が大きいと換気システム以外のすき間から換気が行われるため、風や内外温度差の影響により換気が過剰になります。

また、換気システムには給気口と排気口があり、汚れた空気が効率よく換気されるようになっていますが、すき間が多い住宅では給排気口以外からも空気の出入りがあるため、汚れた空気が排出されづらくなります。

また、意外と知られていませんが、熱交換型換気システムの場合は超高気密化が必要になります。
なぜなら換気システム以外のすき間から空気の出入りがあると、その空気は熱交換が行われないためです。
熱交換型換気システムをつける場合は、超高気密でないと熱交換効率が大幅に落ちてしまい、熱交換型換気システムをつけている意味がなくなります。


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