宇宙コンビニβ

地方都市の外れ、午前3時コンビニの店員は思う。
実は外の暗闇は真空で、この施設は地球を照らす側ではないかと。
夜に空に瞬く星達は、無数のコンビニの光なのではないかと。
スペースシップ、24Hマート。
今宵も異星からの来訪者がぽつぽつとやってくる。

この宇宙船には定期的に供給便として運搬用の小型宇宙船が定着し、物資を降ろしていく。
その物資を訪問する異星人に振る舞うのが船員である私たちの役目なのだ。

いつもは宇宙を漂っている最中に小型宇宙船がやってくるのだが、今夜はなぜか未だに来ない。フライトも後半となっているのに、だ。

そうなってくると、業務にもズレが出てしまう。異星人への振る舞いはあくまでついでであり、フライト中の船員の主な業務は清掃。清掃の合間を縫って小型船からの供給を受け取るのだ。そのスケジュールにズレが出てしまうと船員、私の多大な疲弊と異星人への振る舞いのクオリティの低下に繋がる。

通常、1回のフライトでは3回、それぞれ違う種類の物資供給便が来船する。もちろん、前半、中盤、後半と3回とも別々の時間にやってくるため、清掃のスケジュールもそれに合わせて組まれている。
なんと今回に至ってはその3便すべてがこのフライト後半になっても来船していないのだ。
私は次第に苛立ちを面に出し、船窓から見える暗闇を睨んでは立ち尽くすことを繰り返していた。

物質の水分を飛ばす高熱の液体、油を処理している最中だった。

やっとのことで供給便が来た。

しかし、なんと3便すべて同時に到着したのだ。

我が宇宙船は小型宇宙船をいくつも停めるためのデッキが存在しているため、スペースには困らなかった。

しかし受け取る船員が私と船長の2人。さらに倉庫への入り口は狭い扉1つなものだからスムーズな受け渡しができない。案の定、物質の箱をはこぶ地球人たちは入り口に詰め寄せ、箱を適当に置いていくだけの形になった。

とりあえず私と船長の2人で物質の受付を終わらせなくてはならない。
せかせかと動きながら、どうかこの間に異星人が来ませんようにと願っていた。
受付が終了し、疲れてへたり込む。フライトはもう終わりかけており、地球の地面が姿を現していた。

その時だった。
「ねえ、誰も来ないの」
と男性であろう異星人の大きな声が響く。船内に進入してきたことに気づかず、また、彼は私たちが気づくまでそこに立っていたようだ。焦って近づいて対処をする。
「客いるんだから見ててよ」
私は空返事のような謝罪をする。
心の中では「そりゃ無理だよ」と嘆いている。物質の受付は体力がいるし、時間もかかる。異星人の処理なんてとてもじゃないが気が回らない。

その異星人が去った頃だった。船長が私に告げる。
「忘れてたけど、これから便は全部この時間になった」
私は再度へたれこむことになる。これからのフライトは前途多難だ。

地球の地面がはっきりと私たちの前に姿をあらわす。ショボショボとした目を遠くの太陽に向けながら「もうフライトしたくねえよ」と愚痴りながら供給便にあった煙草に火をつける。
その煙の濃厚な外気の味に無事に地球に帰ってきたことを実感するのであった。

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