宇宙コンビニζ

地方都市の外れ、午前3時コンビニの店員は思う。
実は外の暗闇は真空で、この施設は地球を照らす側ではないかと。夜に空に瞬く星達は、無数のコンビニの光なのではないかと。
スペースシップ、24Hマート。今宵も異星からの来訪者がぽつぽつとやってくる。

前回の旅行記、εでも書いたが現在地球上では夏という季節になっている。
気温が上昇し、生物は鼓動を加速させ活発に動き回る。
εでは羽蟻というクリーチャーの話をしたが、今回は違う。(おそらく)大学星からきた大学星人の話だ。

この宇宙にも規律がある。ある程度の年齢を重ねた者にしか提供してはいけない物資があるのだ。
葉を紙で包み、火をつける嗜好品「煙草」これは規制が激しく、20年生きた生物でないと売ることができない。
万が一売ってしまった場合、罰せられるのは買った人ではなく、売った人になる。そのため、宇宙船側で警備を厳重にしている。どこの宇宙船でもそうだろうが、規律に合格しているかどうかの問答は徹底している。

この私が乗っている宇宙船も類に漏れない。
大学星人にはまだその規律に合格していない輩も多く、また気温の上昇に伴い判断力を失い、提供を要求する大学星人が後を絶たない。

今宵のフライトでも何人か該当する大学星人はいた。
「すいません、年齢確認できるものお持ちですか?」
「チッ…持ってないです」
残念ながら、大学星人の財布には大抵大学星出身という身分を証明するためのICカードが入っており、注意深く見なくともその存在は確認できる。それを提出ひないということは、規律に逆らい煙草を要求しているということだ。

異星人との交流に芳しい感情を持っていない私のこの手記を読んできた人なら舌打ちの音でまた機嫌を損ねるだろうとお思いになるだろう。
だが、しかし実際は心の中でガッツポーズをしている。
業務として購入を止められたという達成感、(私はそもそも大学星人が嫌いなので)お前の行動を止めてやったという優位感、簡単に言うと「ざまあみろ」
そんな感情がつい表に出てしまいニヤニヤしてしまうことすらある。

今宵のフライトでは計3人の非行を防止できた。
店の評判、船員である私の評判、全てにおいてプラスの方向に動くため私は浮足だった態度でフライトの業務を終え、船室の控え室へと行く。

そこには船長が読み物をして待機していることが多い。今日もそうだった。
「なにが変わったことは?」
「未成年、3人止めました」
「よし、よくやった」
船長は自信ありげな顔で続ける。
「うちはオープン当初からそこは徹底しているからな。よくやってくれた」

ここで私の思い出話をしよう。
私は煙草自体に憧れを持っていた。正直に申告すると、規律に反した年齢のときにはすでに煙草を吸う習慣ができていた。自基地周辺の宇宙船で煙草を調達していたこともある。もちろん、今いるこの宇宙船も使っていた。

「でも、船長。僕が以前買った時は確認されませんでしたよ」
船長は困った顔をする。しばらくして答える。
「まあ時効だよ時効」
そうお茶を濁されて今宵のフライトは終了した。

私は老け顔だ。その、証明が今なされた瞬間であった。

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