宇宙コンビニγ

地方都市の外れ、午前3時コンビニの店員は思う。
実は外の暗闇は真空で、この施設は地球を照らす側ではないかと。夜に空に瞬く星達は、無数のコンビニの光なのではないかと。
スペースシップ、24Hマート。今宵も異星からの来訪者がぽつぽつとやってくる。

夜間のフライトの1番の大敵、それは腹痛である。
船長と船員、2人体制でこの宇宙船は無重力を漂っているわけだが、常に船長が共に業務を行っているわけではない。
大抵は船長室で待機して、メインの船体には船員である私1人が異星人やクリーチャーとの戦闘をし、船倉の管理や甲板の清掃を行っている。

しかし、私も一般的な地球人であるから生理的現象は起きてしまう。
突然の腹痛。今夜はそれで頭がいっぱいだった。
仮にトイレに駆け込んだとしよう。そうなるとデッキを管理する者は誰もいない。もし異星人の侵略が始まった場合、この船に多大なダメージを残してしまうのだ。

しかし、我慢すると言って我慢できるものでもない。顔を歪ませながら何か対策を、と私は冷や汗をかいていた。

そうだ、上澄みだけなんとかすれば時間はそれほどかからず、また、フライトが終わる時間まではもつのではないだろうか。
きっとそうだ。思い立ったが吉日。私は船の奥にあるトイレに向かおうとした。

その時だった。けたたましい音を立ててこの宇宙船がさらに大きい宇宙船に囲まれたのは。
甲板からは外の様子がわかるように、外壁がガラス張りになっている。
そこに見えるのは眩い宇宙船のライトと、数人の黒い肌をした異星人だった。

私は、比喩ではなく、膝をつき降参のポーズをした。もう終わりだ。私の地球人としてのプライドも、この船も、終わってしまうのだ。ここを始め、地球は侵略され地球人は全て奴隷になってしまう。
脂汗とため息が光沢するほど磨かれた床に這いつくばった。

「トイレくらい行って来いや」
ふいに背後から低い声がした。船長だ。
この時間は船長室で休憩を取っているはずの船長が私に助力すると言っているのだ。
船内の監視カメラで私の挙動がおかしいことを見て、察したのだろう。彼は甲板に駆けつけてくれたのだ。

私はその言葉を聞くやいなや、小走りでトイレに向かった。間に合った。地球は青かった。
用を済ませ、トイレの外に出ると黒肌の異星人はもういなくなっていた。船長が無事対処したのだろう。
私は礼を言う。「ん」と短い返事だけ返して船長は船長室へと戻っていった。

今夜のフライト、間一髪で異星人に侵略されるところであったが、無事に終わった。
今後はこういうことがないといい。そう願い、フライトが終わり地球に降り立った私が見た空も、また青であった。

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