映画「モリコーネ」


購入したパンプレットより  #モリコーネ

映画「モリコーネ」を観てきました。
記憶が色褪せないうちに、メモとして記録に残しておこうと思います。

冒頭は、少年時代。トランペット奏者として、家計を支える父に、厳しくトランペット奏者になるための教育を受けるエンニオ・モリコーネ(以下エンニオ)。後のパートで、父がトランペット演奏ができなくなる時期がきて、その期間はエンニオは、作曲にトランペットのパートを控えていたという証言がありました。タイミング次第では、いろんな映画の象徴的なトランペットも、登場することはなかったのか!という衝撃を受けました。

作曲の師匠の信頼を得て、現代音楽の技法にもたけたエンニオは、映画音楽にも近代的な技法を凝らし、映画の伴奏ではない映画音楽の「発明」をして、12音階などを駆使して「色彩」を感じられるような音の情景をつくりました。


「恋のからまわり」では、クラシックの「対位法」の技法を使用。この後にも、「BACH」の名前の配列のメロディで曲を作ったりと、様々な音楽の引き出しが魔法のようにでてくるのですが、これらの発想が浮かぶときにエンニオは、「これが正解!」のような確信をもって決断しているというところが、本当に才があるのだなぁと思いました。

エンニオは、もともとトランペット奏者だったので、「マカロニ・ウェスタン」時代のトランペットが印象的な作品では、「フラッター奏法」の指定をしていたそうです。

『ある夕食のテーブル METTI UNA SERA A CENA』では、ミニマル・ミュージック(Minimal Music)の手法で作ったという本人の証言の件では、エンニオ本人が実に嬉しそうに「3音と四拍子で繰り返すと〜〜」と話しているのが、印象的でした。ここのシーン、DVDが出たら繰り返し観たいなぁ〜。

エンニオの手書きの綺麗な写譜屋さんに出したみたいな楽譜もたくさんでてきます。エンニオは、ピアノの前の立って、鍵盤を押さず=音を出さずに「まるで手紙を書くように」楽譜にそのまま作曲していくそうです。映画を通して、私でも初見でピアノが弾けるくらいわかりやすい、シンプルな楽譜でした。

「ミッション」では、時代背景から宗教的な声楽曲「モテット」(ミサ曲ではないポリフォニー曲)を作曲。ここで、映画内では、第2バチカン公会議についても触れていたのですが、聞き取りきれず、映像化の後、ゆっくり理解したいと思う。
でも、ここですごいと思ったのは、エンニオが「こう、こう、こんな!」と口ずさむメロディが、後で差し込まれる「ミッション」の本編の映像とぴったり音程が一致していること!テンポのみ、ちょっと違う。多少のデジタル処理はされているにせよ、どんな映像にもマッチする音楽は、最初に感じた「これしかない!」という直感のもとに作られているということへのまごうことのないことの証明だと思った。

アカデミー賞に数度ノミネートされるも、受賞ならず!という件は、現在56歳の私としては、ちょうどリアルタイムで見届けた万感な思いがある。

1989年 大学を卒業し社会人になった年に、「シネスイッチ銀座」ができて、そこで「ニューシネマパラダイス」を観た。その後も、「シネスイッチ銀座」では、ちょうどこんな映画を見たかった!という映画をたくさんかけてくれて通ったものだ。マイ青春の映画館!という感じだ。

本編「モリコーネ」では、アカデミー賞は、2007年に「名誉賞」、2016年、『ヘイトフル・エイト』の音楽で第88回アカデミー賞 作曲賞を受賞した模様が描写されるのだが、そんなところにテロップなしでクインシー・ジョーンズやファレル・ウィリアムス(あってる?ひとりで観たので曖昧)が、尊敬とともに寄り添っている様子が、あぁ、これはちゃんと歴史がつながっているリアルな出来事なんだな〜と感じるところである。

良き妻「マリア」と巡り逢えて、いつも作った作品を最初に聴かせるのは「マリア」というのも幸せ、極まりない。兵役の頃、可愛く追いかけてくれていた少女と一生寄り添えたこと。音楽を知らないマリアが側で率直な感想を聴かせてくれたこと。こんなに素敵なことがあるだろうか。

本編の最後のあたり、クエンティン・タランティーノ監督によるエンニオの大絶賛!最高です!


本編は、いろんな映画のワンシーンが切り取られているのですが、そこで、「アンタッチャブル」が、『戦艦ポチョムキン』の「オデッサの階段」をオマージュしているとされている名シーンをちゃんとおさえていてくれて嬉しかった。(筆者は、無声映画の伴奏もしているので、戦艦ポチョムキンの伴奏時には、逆に「アンタッチャブル 」を観て研究をしていました。

「マカロニ・ウェスタン」の名作の曲も、この映画をみた後だと、それぞれがかなりの特徴をもってサウンドデザイン自体が特異性を持ってつくられたことがわかって、これはちゃんと見直したい!という目標もできた。

でも、何よりも今、一番、ちゃんと観たい映画は、「海の上のピアニスト」。
「ニューシネマパラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレが、どんなにエンニオに信頼をよせていたか?をひしひしと感じながら、映画のストーリーと音楽の融合をじっくりと追いながら味わいたいと思う。

最後になりましたが、私の一番好きなエンニオの作品は、「IL FANTASMA DELL'OPERA」(オペラ座の怪人)ハンガリーのブダペストでパリのオペラ座そっくりのセットも含めたロケをしている不気味度など、とにかくぶっとんでいて、無声映画の「オペラの怪人」に一番近いと思われる作品です。

さてさて。
映画を見終わって、お茶もせずに帰宅していっきに2380文字ほどの文字を書いてしまいました。お付き合いいただけましたあなた。ありがとうございました。

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