見出し画像

はじめてのお菓子作り

母ちゃん、ガトーショコラの作り方教えてくれる?

来た。とうとうこの日が来た。
私のお菓子のレシピを、子どもに伝える日がとうとう来た。

申し出たのは高校一年の長男だ。
中学の時の友達がお誕生日なのだそうな。

友達のお誕生日ケーキ、生まれてはじめてのお菓子作りにふさわしいテーマである。
我が子ながらよくぞ思いついた。
素晴らしい。

私のガトーショコラは、実にシンプルだ。
バターもココアも入れない。
チョコレート、生クリーム、卵、砂糖、粉だけで作る。

よって、あの山のようにバターを使う恐ろしさは無い

さらに、焼きっぱなしのケーキなので、生クリームのデコレーションの恐怖もない。

ミッションは、昨日の土曜日の午後行われた。

まずは計量である。計量大事。
面倒だが、スケールで測るものは、チョコレート、砂糖と粉だけなのでそんなに苦ではない。

私の作り方メモを見ながら作るのだが、完全に私の指示に頼ってしまい、作り方が頭に入っていない。
やり直し。
再度メモをよく読ませる。

こちらは、チョコレートと生クリームを溶かすところだけ手を貸してやる。

卵の黄身と白身を分け、別のボウルに入れる。
この時のポイントは、ボウルは水気のない綺麗なものを使うこと、白身には黄身を混ぜてはいけないこと。

うん、黄身と白身を分けるのは上手だ。
そう不器用ではない人ではある。

泡だては、私が用意したボウルが少し小さかったことも有り、少し周りに跳ね飛ばし気味である。
跳ねを拭き取りつつ、こういう始末を常にしながら、工程を進めていくように教える。

チョコレートボウル、黄身のボウル、白身のボウル、粉を混ぜわせていく。
ここでも、混ぜる順序、どちらのボウルに入れるのか、再度工程を確認させる。

本人、いつもの私の雑な料理とは異なる様子に面食らっているようだ。

そうだよ、お菓子作りは化学実験そのものだものだもの。
手順にちゃんと意味があるんだよ。

全て混ぜ合わせて、型に流し込んだ。
と思ったら、なんと白身がまだボウルに残っている。

なぜ全部混ぜないのか?と聞くと、私がこれでOKと言ったからと言う。

あのね、せっかく計量したのに、全て使い切らなければ意味が無かろうよ。
お菓子は、計量したものを全部使わないと、ちゃんと膨らまなかったり、美味しく出来なかったりするのよ。

長男、珍しく「はい」、と素直。

結構。
リカバリーは私に任せて。

結果、ケーキのタネはきちんと型に収まり、オーブンに入れられた。

大丈夫かな、ちゃんと膨らむかな。
不安そうだ。

大丈夫、あのくらいのミスは対して出来上がりには響かないわよ。
焼き上がり10分前に一度焼け具合を確認するよ。忘れないように。

はい。
スマートフォンのタイマーを合わせる。

その合間に、汚れたボウル類の洗い物をさせ、
スケールとハンドミキサーを元の場所に戻させる。

10分前。
どうなった?とオープン前に駆け寄る。

膨らみ具合を確認。
うん、大丈夫。あと10分このまま焼いて。

10分後。
ミトンをつけて、扉をあけ、ケーキ型を取り出す。

母ちゃん、表面が割れているよ。

いいの。これが正解なの。
さらにここから萎むからね。

え、萎むの?

そうよ、このケーキは普通のスポンジより粉が少ないのね。だから、膨らんだ気泡を支えられないのよ。
ふわふわしたいわゆるスポンジケーキの食感はないけど、そのかわり、ほろほろと舌触りの滑らかな濃厚なケーキになるのよ。

あー、たしかに、そう言う感じだよね、あのケーキ。

ケーキが冷めたところでアルミホイルをかけ、冷蔵庫で保存をする。

そして、今日日曜日の午後、友達を呼んで、長男ののケーキでお祝いをしたのだ。

何か、とても大きな仕事を済ませたような気持ちになったのは何故だろう。

一つのレシピを、一緒に作っただけなのにね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?