企画のき

企画のき 04_二種類の要求

マガジン『企画のき』も4回目の投稿になりました。第1回『企画のき 01_企画のき』は、投稿に至った経緯をお話ししただけですので「企画する」ということについての詳細は全く触れていません。したがって、実質、企画についてお話しをし始めたのは、第2回『企画のき 02_要求×手段=価値』からになります。

その第2回でお話ししたのが表題と同じ「要求×手段=価値」ということでしたが、以降は、この構図を全てのベースとして、そして、考えを深めたり考察を加えたりするための原点として、理解を進めていきたいと考えています。
まずはその手始めとして進めているのが、この「要求×手段=価値」という図式を構成する要素について、丁寧に分解していくということです。
ということで、今回も前回にに引き続き「要求」についてのお話しをします。今回は「二種類の要求」ということについて考えてみます。

いきなり結論から言うと、要求には二種類あると考えています。一つは、はっきりと「○○したい」と言葉にできる要求。そして、もう一つは、言われてはじめて気づく要求です。前者を「顕在的な要求」と言い、後者を「潜在的な要求」と言います。

まずは、はっきりと「○○したい」と言葉にできる要求。「顕在的な要求」について考えてみます。

仮の要求か真の要求かという問題はありますが、それは前回の『企画のき 03_「要求=目的」ならばそれは真の要求』を読んでいただくとして、ここでは、前回の例である「水が飲みたい。なぜならば、喉が乾いているからだ。」を借りることにします。

例を借りると言っても難しいことは何もありません。これは非常にわかりやすい。「水が飲みたい。」とはっきりと言ってますので、誰が聞いても同じ認識ができます。つまり、顕在化していると言えます。
このように、はっきりと「○○したい」と言っている、あるいは、はっきりと欲していることがわかる状態であるものを「顕在的な要求」と言うことができます。

次に、言われてはじめて気づく要求。「潜在的な要求」について考えてみます。

潜在的な要求について語るときに題材としてよく持ち出されるのがスマホです。ここでは、AppleのiPhoneについて考えてみます。
Appleが初代iPhoneを発売してから今年で10年だそうですが、あのスマホ、最初からあのようなモノが欲しいという明確な要求、明確な手段があったのでしょうか?画面があって、アプリがあって、仕事をしたりコミュニケーションをしたりゲームをしたり音楽を聞いたり。
そんな明確な要求は、当然なかったと思います。しかし、10年経って、ここまで普及してしまった。そして、今や、無くてはならないものとなった。
これは、はっきりとした「こんな背景があるから」ということもなければ、「こんな目的のために」というものもない。もっと広く、もっとぼんやりとした、「人は、いつでも情報に触れていたい」とか、「人は、いつでも誰かとつながっていたい」とか、「人は、いつでもエンターテインメントに触れていたい」といった、潜在的な要求があり、その要求を満たすものとしての一つの回答が、たまたまスマホのようなものであり、それが正解となっただけだと理解することができます。

つまり、「こういうことを要求したかったのではありませんか?」と言われてはじめて気づく要求。もともと自分の中にはあったけど、言語化はおろか、ぼんやりとしたイメージさえも持っていなかったかもしれない要求。しかし、尋ねられて「あぁそうかも。いやそうだわ。」と気づく要求。このような要求を「潜在的な要求」と言うことができます。

ここまでで、要求には顕在的な要求と潜在的な要求という二種類の要求があることをお話ししましたが、ここで一つ重要なことがあります。
それは、顕在的か潜在的かという違いは、要求が存在する深さや明確度合いの違いがあるだけで、同じ(真の)要求であれば、その背景や目的は同じである、ということです。

例えば、先程の潜在的な要求のところで例に出したスマホ。その潜在的な要求を知るために「こういうことを要求していたのではありませんか?」と尋ねたとして、ここで言う「こういうこと」とは、もちろんスマホのことではありません。
スマホというのはあくまでも手段に過ぎず、それを利用してもたらされる「情報に触れる」とか「つながる」とか「エンタメに触れる」とか「ちょっとした暇をつぶす」とか、そういうことを要求していたのではありませんか?ということです。

そう考えると、「そうだ、こういう感じでいつでも情報に触れられるの、やっぱり良いよね。」と、潜在的な要求に気づくケースも、「いつでもサッと最新ニュースとか見られるようなものってないのかな。」と、はっきりと顕在的な要求として表現するのも、要求としては同じ。さらに、それが真の要求であれば、当然、その背景や目的は同じであると言えます。


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