企画のき

企画のき 03_「要求=目的」ならばそれは真の要求

前回の『企画のき 02_要求×手段=価値』では、要求と手段と価値との関係について、その概要をお話ししました。価値とは何か?ということを起点にし、その価値を構成する要求や手段について、考えを述べていきました。

そこで、今回は、その構成要素である「要求」について少し考えを進めてみたいと思います。

前回、「要求とは、誰かの、何らかの、解決したいと考える困り事である。」と定義しました。
掃除することを例にして「掃除の品質を上げたい」や「掃除にかかる手間を削減したい」というようなことが要求にあたるというお話しをしました。
そして、その要求にはそれぞれ背景にあたるものがあるというお話しもしました。
「折角掃除をしているのに、綺麗になっているとは思えない。もう少し綺麗に、塵一つないという状態にはできないものだろうか?」や「なぜ人の手で掃除機を使って掃除をしなければならないのか?何もしなくても掃除が終わらないだろうか?」といった、掃除をする人の困り事が背景にあるということ。そして、その背景から発露される「それをなんとかしたい」というのが要求の元になっている。というお話しをしました。

そう考えると、「こうならないものだろうか?」という背景に基いて「○○したい」と表現されるもの。これが要求であると考えて良さそうです。
しかし、本当にそうでしょうか?そんな簡単なものなのでしょうか?
それを確かめるために、簡単な例を用いて検証してみたいと思います。

例えば、「水が飲みたい」という状況を考えてみます。
「水が飲みたい」は、「○○したい」という表現になっていますので、一旦これを仮の要求としておきます。そして、要求には「その元となる背景にあたるものが必ずがある」という見解ですので、それを探ってみます。
この「水が飲みたい」の背景として、どのようなことが考えられるでしょうか?つまり「水が飲みたい」の理由。なぜ水が飲みたいのか?です。
ここでは、例として、その理由を、①「喉が乾いているから」と②「その水の味を知りたいから」の二つから考えてみます。

まずは、①「喉が乾いているから」の場合。これは「水が飲みたい。なぜならば、喉が乾いているからだ」という構図になります。
この「水が飲みたい」が真の要求なのかどうかを確かめるために、ここで一つ「その目的は?」という質問を加えてみます。
すると、背景の内容から、恐らく「喉の渇きを解消するため」という回答になるでしょう。
そこで、質問をもう一つ。「喉の渇きを解消するためには、水を飲む必要がありますか?」という質問を加えてみます。
すると、たいていは、「水でなくても、他のものでも、喉の渇きを解消することができる」という回答になるでしょう。
ということは、この場合「水が飲みたい」というのは真の要求ではなく、「喉の渇きを解消する」という目的のための一つの手段に過ぎなかったということになります。そして、「喉の渇きを解消したい」というのがここでの真の要求であり、仮の要求としたものは、目的とイコールにはならなかった。つまり、「仮の要求≠目的」という構図になるということです。

次に、②「その水の味を知りたいから」の場合。これは、例えば「水が飲みたい。なぜならば、その水の味を知りたいから」という構図。
①と同じように、仮に置いた要求が真の要求であるかを確かめるために、「その目的は?」と質問してみます。
すると、背景の内容から、「水の飲み比べをしていて、その水の味を知りたいから」という回答を得たとします。
そこで、質問をもう一つ。「その水の味を知るためには、水を飲む必要がありますか?」という質問を加えてみます。
すると、恐らく、「その水の味が知りたいと言っているのに、他の水や、他の飲み物で確かめてどうするの。」という回答になると考えられます。当然ですね。
ということは、「水が飲みたい」というのは「その水の味を知る」という目的のために必要なことであり、それそのものが要求だったということであり、「仮の要求=目的」という構図になります。つまり、仮の要求は真の要求だったということになります。

まとめると、まず、「○○したい。」と表現できる、要求と思わしきものを一旦「仮の要求」とし、併せて、その「仮の要求」に対する背景を確認します。
次に、「仮の要求」に対して、「その目的は?」と尋ねたときの返答内容を「目的」とします。その内容が「背景」とズレていないかを確認します。
そして、『「目的」を果たすためには、必ず「仮の要求」を実施する必要がありますか?必ずしもそうではないですか?』と尋ね、必要があると返答する場合は、仮の要求は真の要求であり、必ずしもそうではないという返答になる場合は、仮の要求は真の要求ではないということになります。そして、その場合、仮の要求は、真の要求を満たすための手段であることが多い。
ということになります。つまり、「要求=目的」であることが確認できれば、その要求は、真の要求であったと考えて良いでしょう。


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