企画のき

企画のき 02_要求×手段=価値

「企画をする」ということは、つまるところ、価値を生むということに他ならない。と私は考えています。
そして、生み出した価値を商品やサービスという形にして提供し、その対価を受け取ることがビジネスであるとも定義付けています。

では、その価値とは一体何なのか?
私は「価値とは、理想と現実の間を埋めるものである。」と考えています。
言い換えると、「今よりももっと良くなる。」ということのために提供し、されるものが価値であり、「こうなればいいのに。」ということを叶えてくれるものが価値であると考えています。そして、その量の多寡、つまり、今よりも少しだけ良くなるのか、それとも、今よりも格段に良くなるのか、その量の違いが価値の差を生むのだと考えています。

では、その価値とは一体どのようにすれば生み出せるのか?
私は、「価値は、誰かの、何かを、何らかの方法で、解決したときに生み出されるものである。」と考えています。
例えば、これまで箒を使って掃除をしていた人がいるとします。その人が、「折角掃除をしているのに、綺麗になっているとは思えない。もう少し綺麗に、塵一つないという状態にはできないものだろうか?」と思ったとき、「箒を使って掃除をしている人の、今よりももっと綺麗にしたいという希望を、掃除機という方法で解決する。」ということは立派に価値を生み出したと言えます。これまで掃除機を使って掃除をしていた人が、「なぜ人の手で掃除機を使って掃除をしなければならないのか?何もしなくても掃除が終わらないだろうか?」と思ったとき、「掃除機を使って掃除をしている人の、人手を掛けなくても掃除が終わるようにしたいという希望を、ルンバという方法で解決する。」ということは立派に価値を生み出したと言えます。
つまり、価値とは、誰かの要求があって、それを何らかの手段でもって解決したときに生み出されるものであると言えます。
したがって、要求と手段が掛け合わされて生み出されるものが価値であると言えるので、「要求×手段=価値」という式で表すことができます。

要求と手段について、もう少し掘り下げてみます。まずは要求。
先程の、箒、掃除機、ルンバの例で言うと、誰の?に相当するのは「掃除をする必要がある人」になります。そして、何を?に相当するのは、箒から掃除機の場合は「掃除という行為の品質を(上げたい)」ということになりますし、掃除機からルンバの場合は「掃除にかかる手間を(減らしたい)」ということになります。
ここからわかることは、要求にはその前提となる背景があるということです。簡単に言うと「課題」です。品質を上げたいという要求があるということは、現在は、決して品質が高くないという課題があり、手間を減らしたいという要求があるということは、現在は、手間がかかっているという課題があるということです。要は「困り事」です。この困り事が要求の背景にあります。
したがって、誰のためなのか?何のためなのか?そして、その背景にある課題は何なのか?ということが明確になっていない限り、何をしたところで価値を生み出すことができたのかどうか全くわかりませんし、結果、企画をしたということにもなりません。
それはそうです。誰が喜ぶかもわからない。それを解決したところで今よりも良くなるかどうかわからない。それ以前に、別に何も困ってない。そんなものに対して一生懸命考えても、一生懸命行動を起こしても、何も意味がありませんから。

次に手段。これはもうほとんど言うことは無いと思います。要は、課題を解決するために講じる策のことです。何らかの道具を使うことを言うのかもしれませんし、やり方を変えるだけで済むかもしれません。道具を使う場合は、その道具が今世の中に存在するものばかりではないでしょうから、課題を解決するために新たに開発することを言うのかも知れません。いずれにしても、要求を満たすために何ができるか?どんなものが必要か?という問いに対する答えになるものが手段であると言えます。
しかし、ここで押さえておくべきことは、手段は決して一つではないということです。例えば、先程の、箒から掃除機の件で言えば、要求を満たすことができるのであれば、箒からブロワーでも良い訳です。
可能性がありそうなものを一度全て出しておくということは重要なこと。検討はその後で良いでしょう。
掃除機なら掃除そのものの品質も高いし集塵性も高いが、ブロワーは塵を周りに追いやるだけなので、今度は周囲が塵だらけになってしまうという副作用があるから決して掃除の品質が高くなるとは言えない。ということであれば、やはり掃除機のほうが手段としては優れていると判断すれば良いし、それを採用するまでです。
したがって、手段を考えるということは、単に、課題を解決するために講じる策を考えるということだけでなく、それで本当に課題を解決できるのか?ということを、要求に照らし合わせながら検討するということです。
よく「手段を目的化してはいけない。」ということを聞きますが、まさにそれ。策を講じることだけが目的になってしまっては、要求を満たすことがどうでも良くなってしまう。それではいけませんね。

もっと分解して、もっと掘り下げて、補足しながら考えを進めていきたいところですが、それは、この後の項目に譲ることにします。
概要としては、まずはこんなところでしょうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?