ソフトバンクの中南米特化ファンドのインパクト(1)

019年3月7日にちょうどブラジルでのスタートアップエコシステムについての講演を終えて一息いれたところでソフトバンクの中南米特化ファンドのニュースが入ってきました。

ソフトバンク自体がUS$2B入れてトータルUS$5Bとするとの発表でボリビア系アメリカ人のMarcelo Claureさんがファンドを率いるとのこと。

いろんな切り口で私の周りもざわつきましたが、冷静にどんなことなのか以下の4点で整理したいと思います。

1.なぜソフトバンクは新ファンドの組成という選択をしたのか?
2.ソフトバンクの中南米での投資戦略
3.ブラジルのスタートアップエコシステムに与える影響
4.私個人へのインパクト

1.なぜソフトバンクは新ファンドの組成という選択をしたのか?

ソフトバンクビジョンファンドというUS$100Bのファンドがあり、まだUS$50Bほどしか使っていない中でその5%に過ぎないUS$5Bのファンドをなぜ新たに作ったのか。有力な仮説は以下の3つと考えています。

a. ポートフォリオの適正化
b. 少額(とはいえ)LPの取り込み
c. 先制攻撃で仮想競合を取り込む=グローバルな利害関係強化

aについては、ソフトバンクビジョンファンドはここまでざっくりUS$50Bを50社に投資しています。1社あたりUS$1Bです。このうち、ブラジルのスタートアップに3社投資していますが、2社にUS$100M、1社にUS$190Mと全く桁違いに小さい額。この3件がうまくいってもいかなくてもファンドの成績に与える影響がほとんどないなか、投資判断のためのDD等は他の大型出資と同様のコストがかかることから、小規模なマーケットには異なるコスト構造で臨みたいというのはロジカルにわかりやすい理由かと思います。

bですが、同じような論理展開はファンドの出資者にも当てはまります。現在のソフトバンクビジョンファンドの出資者は最低でもUS$1Bを出資しています。有名になったソフトバンクビジョンファンドに出資したい機関投資家、事業会社はたくさんいるでしょうが、US$1Bを1社で出すのはなかなか大変。でもUS$100Mくらいならという投資家はたくさんいるんだと思います。こうした”小口”の投資家に対する受け皿を用意するのもファンド経営上は理にかなってくると思います。

cはbとも絡むのですが、韓国・中国勢との兼ねあいもあろうかと推測しています。ブラジルでは特別なベンチャー企業への資金流入を目的とした税制優遇が拡大されて、IT機器をブラジル国内で製造する企業から、ベンチャーキャピタル等への出資が毎年US$100M単位で出てくる状況が今年始まります。ざっくばらんにいうとこの恩恵に預かるのはサムスン、LGです。しかもこれは毎年なので、彼らはこの5年でUS$500Mとかになるわけです。総額としてのUS$5Bのち2Bはソフトバンクが出し、サムスン等が既に500Mをコミットしているというのは容易に想像できますし、こういう構造ができるとUS$100M単位で出資したい政府系金融機関等はラテンアメリカ全体に存在します。こうしてラテンアメリカ各国とのネットワークを強めていくことはプラスでしかないでしょう。

2.ソフトバンクの中南米での投資戦略

次に今回公表された情報を元にソフトバンクのラテンアメリカでの投資戦略も推測してみます。

まず1社あたりの投資額ですが、目安となるのはソフトバンクビジョンファンドが1社US$1Bで100社に投資してUS$100Bとなるとすると、今回のファンドはUS$5Bと20分の1なので1件あたりUS$50Mと見える。また、過去のブラジルへの投資額が1件当たり100-190Mという点を考慮すると1件当たりUS$50-100Mで50-100社が妥当なラインだと思います。

この規模での出資となるとValuationはUS$300M-1B前後になると思われ、現状のブラジルのExit時の時価総額からするともうシリーズXではなく、ほぼほぼExitというレベル感です

本ファンド自体のExitは海外、特にUSでのIPOと見るのは自然かと思われます。それでも昨年ブラジルからNYSE、NASDAQに上場したスタートアップは企業価値US$2-9Bとなっているので、ただ、ソフトバンクのことなので類似の投資先がソフトバンクビジョンファンドの投資先がUSで上場した後に、こうしたラテンアメリカのユニコーンを買収させたり、はたまた、ソフトバンクビジョンファンドが本来の出資額であるUS$1Bを出すことでExitさせる可能性も完全には否定できないのが怖いところですね。。。

ちょっと長くなったので続きはその(2)で書きたいと思います。

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