佐竹

文化人類学、ミラン・クンデラ、本や映画、海外一人旅、学ぶこと、などに興味があります。ボ…

佐竹

文化人類学、ミラン・クンデラ、本や映画、海外一人旅、学ぶこと、などに興味があります。ボイスメディアの会社を経て、今は社会人教育の会社でbizdevなどをしております。下北沢に住んでます。元コルクラボ4期だよ。

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  • コルクラボ ガーデン [CORK Lab GARDEN]

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    「コルクラボのメンバーが書いたコルクラボに関するnote」を集めたゆるーいマガジンです #コルクラボ

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人生に、重さはあるのか?――『存在の耐えられない軽さ』

 我々の人生に、重さはあるのだろうか?  例えばたいていの物語では、主人公の〈重さ〉がドラマの起点となる。彼/彼女は逃れられない使命を背負っており、その重荷に耐え、なすべきことをなせるか、というところにドラマが生まれる。重荷は人に試練を与えるが、同時に生きる意義をも与える。  しかし人生というものは本質的に軽い。なぜなら人は一度きりしか生きられないから。  『存在の耐えられない軽さ』冒頭では、この人生の〈軽さ〉についてニーチェの永劫回帰という思想に触れたうえで次のように

    • 自分のトリセツをつくるといい感じのモヤモヤが生まれた

      みずPがnoteで紹介していた自分の取扱説明書、面白そうなのでサクッと書いてみる。 世の中にはこういう、トリセツとかストレングスファインダーとかFFSとか診断テストとか自己分析が好きな類の人がいて、私もそのタイプ。私は自分が好きで自分という現象が面白くて、それについて考え、他の人に語りたいのだろうな。 「強み」 ①息を吸うように「つい」やってしまうことは何か 本を読むこと、勉強すること、面白いと思った人に話しかけて話を聞いてみること 枠組みの外にあるものを考えること ②

      • よそよそしい身体と生きる。雨乞いとしてのボディケア。

        今週タイムラインに流れてきたkemio氏のツイートで「自分と身体とのリレーションシップ」という言葉を見て、私の身体の捉え方に「リレーションシップ」という言葉はとてもぴったりくるなと思った。 私にとって自分の身体は、とても自分であるとは思えない。よそよそしく、時に乱暴でわがままで、時に弾けるように笑い、時にとても優しくしてくれる、気まぐれな恋人のような存在だ。理不尽な恋人を愛しく思い、うまくやりたいと思いつつも、どうにも馬が合わない感覚がずっとあって、身体をぞんざいに扱ったり

        • 100年前、16歳の女学生だった縫子さんの日記

          これは、1924年(大正13年)、私の曽祖母が16歳の時の日記である。 祖父母の家の整理をしていたら、曽祖母の日記がまとめて出てきたらしい。 昭和62年に79歳で亡くなった曽祖母・縫子(ぬいこ)は、大きな建設会社の創始者の孫で、ずいぶんなお嬢様だったそうだ。江戸っ子らしいきっぷのよさがあり、明るく社交的な人だったと、祖母や叔母が話してくれた。 長生きだった曽祖父は私が6歳のときまで生きていて、ずいぶん可愛がってもらった記憶があるが、曽祖母とは直接会うことは出来なかった。

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          91歳で亡くなった祖父のこと、あるいは家系図を紐解く欲望について

          祖父が亡くなってから、父方の家系のことを改めて色々調べている。 叔母が撮ってくれた、生前の祖父が個人史を話している動画を観たり、最近出てきた曽祖母の日記を読んだり、曽祖父の本を読んだり。 戦争の時に何をしていたのかとか、昔の生活ぶりや歴史を個人の人生を背景にして知ることができるのが単純に興味深いし、自分がこの世に生まれるきっかけとなった人たちがどう生きたのかを知りたいという欲求がある。 先祖がいかに生きたのか、いかに面白い人だったのかを知り、その結果として自分が生きている

          91歳で亡くなった祖父のこと、あるいは家系図を紐解く欲望について

          「食」という死ぬほど多元的な行為

          近所に玄米おにぎりのお店がオープンしたので今日のお昼にテイクアウトしてみた。注文を受けてから一つ一つ丁寧に作るタイプのお店で、作っている間に店主のおじさんと世間話をした。注文口の横に、素朴なタッチのおにぎりキャラクターの絵が貼ってある。「おにぎりっこ」の「のんちゃん」というらしい。おにぎりに女の子っぽい顔が描いてあって、しめじのツノが生えている(なんでしめじ?)。 「これからのんちゃんが日本各地を旅していくっていう物語を考えてるんですよ〜。で、行った先々のご当地の食材を取り

          「食」という死ぬほど多元的な行為

          日記/ルッキズムが強いのでnoteが書けない

          外見も中身も、私は、美しく見られたい&醜く見られたくない、という思いが実は人一倍強い。と、ある人に言われて改めて気がついた。 自分のことを「なんて可愛いんだろう」と思う日もあるし「気持ち悪すぎて死にたい」と思う日もある。ボディポジティブという言葉が流行っていて、もちろん「人はそれぞれの美しさがある」と思うし、外見について友達に相談されても「そんな悩む必要なんてないのにな〜素敵なのに」と軽く思う。それでも自分に対してそう思えないのだから、他人にも同じような視線を向けてしまって

          日記/ルッキズムが強いのでnoteが書けない

          行きて帰りし物語 ー映画「マッドマックス 怒りのデスロード」

          久しぶりに『マッドマックス 怒りのデスロード』を観た。落ち込んだ時、上手くいかない時にマッドマックスを観ると、「死にたい…」から「殺す!!!!!!!!」になるのでおすすめである。何事も死ぬ前に殺すか逃げるかしなければならない。映画のなかでダントツで好きな作品で、もう20回くらいは観てる。 この映画は「砂漠を行って帰ってくるだけの話」とよく言われ、本当にその通りだ。舞台は放射能汚染後の砂漠化し荒廃した世界。武装集団「ウォーボーイズ」に捕まったマックスは、イモータン・ジョーが支

          行きて帰りし物語 ー映画「マッドマックス 怒りのデスロード」

          個性的なものと匿名的なもの

          去年の春に下北沢に引っ越しをし、家で過ごす時間が長くなって、少しずつ雑貨や生活用品を買い足した。古道具屋からおしゃれなセレクトショップまでそれなりに見て回ったけど、やっぱり匿名的なものが好きで、個人的なものからすっかり遠ざかっている。食器にしても作家ものや、新進気鋭のプロダクトブランドのものももちろん素敵だけど、古道具屋で1500円くらいで売られている昔のお茶碗が一番しっくりくる。 例えば『POPEYE』や『&Premium』で、作家もののカラトリーや、無水鍋や、ビンテージ

          個性的なものと匿名的なもの

          「あなたじゃなくてもいい」

          コンテンツの仕事に携わっていて、「消費」ということをよく考える。けれど「消費」とは一体何だろうか。 仕事終わりにベットに倒れ込んでYoutubeの関連動画を何となく見ているとき、私は「消費をしているな」と感じる。し、私自身もコンテンツに「消費されている」気がする。 まず「何か満たされない感じ」があり、その空白を満たすために動画を見る。気分を紛らわすこと、何も考えないことが大事なのであって、その動画が何であるかはそんなに大事ではない。観終わったら次の関連動画が表示されて、

          「あなたじゃなくてもいい」

          バックパッカーの贈与論

          中沢新一の『カイエ・ソバージュ』がめちゃめちゃ面白い。 三巻の『愛と経済のロゴス』では、贈与論を軸に神・国家・経済について語られているんだけど、この本を読みながら私はしきりに、数年前に旅したインドやイラン、シルクロードで出会った人たちを思い出してしまった。 そして、私が海外旅行のときに感じていた豊かさや戸惑いの大体は、この贈与論をめぐるものだったのだと気付いた。ので、そのことについて書いてみる。 1.コミュニケーションの二つの型――「贈与」と「交換」 古くから人間は、

          バックパッカーの贈与論

          おすすめの朗読紹介するね めっちゃええで

          朗読を聴くのが好きです。朗読とか、ポエトリーリーディングとか、言葉を耳で聴くアートのうち、言葉をメロディにのせない作品が好き。 なんだけど、良い朗読作品って探すのなかなか難しいんですよ。 ただ通勤中に耳で聴くために本を音声化しただけのコンテンツはaudibleなどで聴けるけど、それ自体が創作物である朗読はそもそも量が少ない。ジャンルとして確立していないし、演劇のように一回性を重んじるためメディアに記録されないことも多い。 例えば「アニメ」「ラップ」「ミステリー」みたいに

          おすすめの朗読紹介するね めっちゃええで

          ちいさい語り

          本棚の並べ方、 お風呂で全身を洗う時の手順、 一年に何度か決まって同じ夢を見ること、 歴代スキンケアの変遷、 黒い服を着るときはピンクブラウン系のメイクで、チャンピオンのパーカーにはオレンジリップでアイメイクほぼ色使わないとか、 アイシャドウは薄いブラウンを単色でのせて、下瞼にキラキラをのせるのにハマってること、 眉マスカラは髪色の抜け具合にあわせて使い分けるために三種類常備していて、最近は太めの眉毛が気分だとか、 とっておきの日につける口紅の色と質感とか、

          ちいさい語り

          転職面談で「降りれない人」と言われた話

          「なんかね、あなたは、"降りれない人"っていうふうに見える」 転職活動の面談で、初めて会った人にそう言われた。 それは先週、とあるメディアサービスの会社からWantedlyで連絡をもらい、カジュアル面談に行ってきたときのことだった。 人事の方はコルクで一時社会人インターンをしていたとのことで、コルクラボのことなんかも話しつつ、自分の志向性、会社のこと、文学のことなど色々話した。優秀な人事の人と話すと居心地の良さと悪さが同時発生する。こちらの言葉をきちんと受け止めてくれて

          転職面談で「降りれない人」と言われた話

          本当はヤバい朗読の世界 ー変身する文学ー

          「朗読」というものにどんなイメージを持っていますか? いや…朗読、ってまあ…教育テレビでたまに観る、薄暗い謎の空間でスポットライトに照らされたおばさんが、穏やかな表情で本を丁寧に読み上げてるあの感じ…? 雨にも負けず風にも負けずみたいな? そもそも人生で朗読に何らかの感想を持ったことがない人も多いのかもしれない。本を音読する、っていうただそれだけだし。最近だとAudibleなどでオーディオブックを聴く人はいるだろうけど、「通勤中や作業中でも聴ける」という利便性で利用してい

          本当はヤバい朗読の世界 ー変身する文学ー

          中国食道楽記(3) ー小麦と肉とスパイスと

          中国シルクロードの食記録、間が空いてしまいましたがラスト更新です。西寧→夏河→張液→敦煌編 。今回は街ごとではなく、まとめて書きます。 シルクロードの朝ごはん 旅で一番好きな食事は朝ごはんかもしれない。朝ごはんってパターン化されているからその国の食文化のキホンがわかるでしょう。毎朝同じようなものを食べるから、朝ごはんが旅行の象徴的記憶になる。朝ごはんを食べてお茶を飲んで、今日は何しようかなあとぼんやり考える時間が好き。 油条(揚げパン)、豆浆(豆乳)、肉包子(肉まん

          中国食道楽記(3) ー小麦と肉とスパイスと