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駐在員の手荷物と、税関トラブル

先日まで休暇で日本に帰国していました。

今回は両親の金婚式のお祝いで湯布院の温泉に出かけたり、前回の投稿で書いたように和菓子を堪能したり散髪屋でシビれる経験をしたりと、少しゆっくりする時間もありました。

しかし、休暇で最も嫌いな作業が
現地に戻るときのパッキングです。

昨年の休暇のときに以下のような投稿をしたのですが、日用品、食料、衣類、書籍などなど、日本でしか入手できないもの、日本で買う方が安かったり品質がいいものなどを買っていくと、いつのまにかスーパーやデパートの買い物袋、通販で送られてくる段ボール箱で家の中が埋め尽くされていきます。


これに加え、両親や親族、ご近所のおじさん、おばさんから

ヨルダンは何もないんじゃろう?
 これ持っておゆき

と頂くお漬物やお菓子の箱詰め、海苔の詰め合わせなどがどんどん荷物の山に加わっていきます。

パッキングのときは、以下のことを考えながら荷物を詰めていきます。

外側が頑丈なスーツケースに壊れたら困るものを入れる
・ラーメンやうどん、そばなどの乾麺類
・おせんべい
・DVD

妻のこだわりのモノ、食品は郵便で送らない
・化粧品、化粧水、保湿クリーム
・醤油、みりん、ポン酢、ウスターソース、焼肉
 のたれ等々
・切干大根、乾燥ごぼう、ひじき、小豆、鰹節、
 干しエビ、干しシイタケ、乾燥わかめ、昆布、
 高野豆腐、カレールー、わさび、ゆずこしょう
 等々の食品
・頑固な汚れを落とすための洗濯洗剤

税関で勝手に開けられても大丈夫なものを段ボールに詰めて、郵便で送る
・衣類(下着はのぞく)
・新しく買った運動靴(値札は外す)
・麦茶や緑茶のパック
・本、長男の参考書など
・雑貨類
(今回は玉子焼き用のフライパン含む)

これは割れたら嫌な食料を中心に入れた
頑丈なスーツケースの中身(一部)です。


食料を詰めた外側が柔らかめのスーツケース。
一部だけ撮影用に並べてみました。


今回は熊本の自宅から関西空港に移動する道中に福岡で2泊しましたので、そこで必要な衣類や荷物は残します。

それ以外の上に述べた荷物を全てパッキングし、大きな段ボール2箱を郵便で、それ以外のスーツケース3個、中型段ボール2個、超大型のボストンバッグ1つを熊本の自宅を出る前に関西空港に送りました。

今回も総量が150キロほどになりました。
やはり醤油や化粧水などの液体物、食品が確実に荷物の重量を上げてしまってましたが、これも年に一度の必要経費としてやむをないと諦めます。

・・・・・

関西空港のチェックインカウンターで、ただでさえコロナで人出が足りておらず、てんてこ舞いの航空会社のお姉さん達に心の中で

すみません

をたくさん言いながら、合計9個の荷物を預け入れました。

今回もドバイ経由のエミレーツ航空だったのですが、エミレーツ航空は

「機内持ち込みの手荷物は1個のみ。
 かつ7キロまで。」

と決まっています。日本を出発するときはチェックインカウンターで

「荷物は1つだけか」
「ホントに7キロ以内か」

を逐一確認して重さを計測されます。

長男には自分のリュックサックに加え、飛行機に乗るまえに食べようと新大阪駅で買った柿の葉寿司の箱が3個と、ビフカツサンドが入ったビニール袋を持たせていたのですが、

「それは機内持ち込みですか!?」

と厳しく問われるなど、日本のエミレーツ航空の職員さん達は本当厳しいです。

ヨルダンのエミレーツ航空の職員は超いい加減で、機内に持ち込む荷物の数や重さをチェックされることはありません。カウンターのお兄さんもウィンクして

「ま、いいさ~」

みたいに全部スルーしてくれるのですが。

・・・・・

アンマンの空港でのトラブル

アンマンの空港に到着し、税関で全ての手荷物をセキュリティーのスキャンにかけるのですが、私のスーツケースの一つが通過するときにブザーが鳴ってしまいました。

税関の職員さんが神妙な顔をしながら寄ってきて、そのスーツケースを開けるように言ってきます。

変なものは入れてないはずだし、一体何に反応したんだろう?と思いながらスーツケースを開けました。

その税関職員が、モニターを見ていた別の職員とやり取りをしながら、そろそろとスーツケースの中をあらため荷物をほじくりだしていきます。

そして目的のモノを取り上げ、

「これは一体何だ?」と。

「あ、それ、羊羹っていう日本のスイーツです(↓)」


それを聞いた税関職員がいぶかしそうに私の顔を見上げ、

「これ、開けなさい」

えぇ!?
なんで「とらや」の羊羹を開けんといかんの??

と言いたい気持ちはグッとこらえ、きれいに包装された紙を、セロテープのところで破れないようにソロソロと開け、羊羹の入った箱を差し出しました。

「その箱も開けなさい」

えぇ!?
まさかアンタ、羊羹を食べたいの!?

と言いたい気持ちをまたもやグッとこらえて、箱を開けました。

すると羊羹って銀色の包み紙でくるまれてますよね(下はイメージです)。

この少し厚手の銀紙に包まれた四角い物体を手に、税関職員さんが別の職員さんと何やら話をしています。

「これ、本当にお菓子なのか?
 この銀色の包みも開けなさい」

ギョエェー、まじで勘弁してください!
ホントにこれはスイーツなんだってば!

と今度ばかりは文句を言いましたが、こんなところでジタバタすると変に疑われるでしょうから、しぶしぶ開けました。

あぁ・・・
この先、ちびちびと1週間は羊羹を楽しめると思ったのに、このまま没収されてしまうんだろうか?

などと考えながら、泣く泣く銀色の包みを開けました。


中から黒く艶やかな羊羹が頭を出します。

「ほら!ね、これ、日本のスイーツです。
 アヤシイと思うなら、今食べてもいいよ」

と言うと、ようやく納得してくれました。

銀色の包み紙まで開けさせられるのは心外でしたが、とにかく羊羹が没収されなくてよかった~。

「とらや」の羊羹をまた箱に収めながら税関の職員さんと話していると、この銀色の包みが税関職員さんには

「プラスチック爆発」

に見えたのだそうです。

荷物をセキュリティーのスキャンにかけると、この四角い物体が銀色だからか光に反射して「異物」に見えるようです。しかも爆弾っぽい大きさなわけで、銀色の紙に包まれた羊羹は、ただのアヤシイ四角い物体にしか見えないでしょう。

それにしても黒い色した食べ物って海外ではあまり思い浮かびませんよね。その税関職員さんも羊羹を収めた箱を指差しながら、

「その黒いもの、美味しいの?
 なんで黒いの?

と聞いてきました。

「それね、小豆(レッド・ビーン)が入ってる
 から黒くなるんすよ」

「なんで赤い豆なのに、黒くなるの?」
「砂糖入れて煮たら黒くなるんすよ」

などと、最後は超いい加減な解説を行ったところ、「へぇ」という顔をされました。そして

「ご協力ありがとう。
 Welcome back to Jordan!
 行っていいよ」

と通してくれました。

・・・・・

空港ビルを出ると、夕方の5時過ぎにも関わらず強烈な日差しが襲ってきます。日本でベタつくように感じていた湿気がなく、空港ビルの日陰は少しひんやりとした空気が漂っています。

突如、空港ビルから少し離れた場所にできていた人だかりから大きな歓声が聞こえ、派手なドラムの音が空港ビルにこだまして鳴り響きます。

見ると、人だかりの中心で若い男女が照れくさそうに笑顔を振りまいています。出迎えのドライバーさんに聞いたところ、

「これから新婚旅行だろう」と。

新婚旅行のお見送りなんて初めて見ましたが、大勢の人達が耳をつんざくようなドラムの音に合わせて手拍子をし、歓声をあげながら踊っている様子をしばらく眺めていました。

そんな光景を見ながら

「ああ、ヨルダンに帰ってきたなあ」

とホッとしたのも束の間、出迎えの車にカート3台分の荷物を押し込み、ようやく家路についたのでした。