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24. 歩いて 出会って 目が合って

よく歩く散歩道は両側がちょっとした林になっている遊歩道。
歩いているとクマザサの藪や落ち葉の積もった木々の根元からガサゴソ何かが動いている音が聞こえることがある。
自分の暮らす地域では今のところ猪や熊を見た話は無く、音の主はだいたいいつも鳥。


落ち葉を一定のリズムで掻く音と、よく通るさえずりは画眉鳥。あまり人間を恐れず、手が届くほど近い距離できれいな声を聴かせてくれる。今の土地に住むようになって初めて会った鳥。つがいかな、二羽で見ることが多い。

朝、ガサゴソ音だけが聞こえ、こちらが立ち止まると、一瞬の緊張感に満ちた静けさの後、複数があわてて逃げ惑うガサゴソする音が増え、おそらく隠れるはずが、間違えて藪から姿を現してしまうのはキジの家族。
立ち止まって音のした辺りを見ていて、すぐそこの葉が動いたのが分かってもキジの姿を見つけるのは難しい。本当に隠れ上手な羽模様。全体的に茶色っぽい雌だけではなく、鮮やかな赤や光る青い羽もある雄も自然の中だと見つけにくくて、野鳥の生まれ持つ姿にはいつも感動する。
キジに会えると、キジ側のドキドキ(予想でしかないけれど)とは反対に、こちらはとっても嬉しくなる。あわてているみたいな様子も、顔も、漏れ出る小さな声もかわいい。姿を見られなくても気配だけで嬉しくなる。

ちょっと辛いことやうまくいかないことがあった時、出会った時のことを思い出せれば、近所に暮らす鳥たちが、気持ちを弛めてくれる。


2024年になって最初の出勤の朝は、画眉鳥、キジ、メジロ、ジョウビタキの姿を見られた。それから数週間を経て、最近は家の窓から見える木にオナガが群で来る。鳴き声は「ギーッ」と、きれいな感じではないけれど、羽色とその配分、スタイルはシンプルでどこかモダンで、近々装いのお手本にさせてもらおうと見つめている。

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ここまでかいてから さらにまた数週間が過ぎ、写真のセンダンの木の実はもうほとんど無くなり、その実を食べたムクドリが群れで枝にとまって日向ぼっこする季節になった。
そのフンにはセンダンの種が混じっていて、この季節、たくさん落ちている。独特の美しい形で、洗って色をつけてアクセサリーにしてみたい、と時々拾い、でもまだ実行できていない。
もう数回目の…今年こそ!
の今年も2月に入って。

ふわふわしていると、また実を結ぶべく花の頃がやって来る。やわらかな紫色の花を南方熊楠が好んだと いつか読んだことがある。
憧れを抱いている人の好きだった木の隣に暮らせて幸運だなと思う。

どんなことのヒントも身のまわりに、いつもたくさん。実は隠れてさえいないのかも知れない。自分の目を大切にしていれば、ふわふわ漂いながらでもきっと出会えるから、目が合ったらそれがタイミング、その時は暮らしのリズムに新しいアクセントも恐がらずにいきたい。

旧正月の頃になってやっと新しい年を暮らす気持ちが立ち上がってきた様。

2本ある庭の白梅は、南の木の花が散り始め、北の木の花が開き始めたところ。
すぐ近くに在っても、種類が同じでも、環境の受け止め方、命を動かすタイミングはきちんとそれぞれ違う。
自分の今はどのタイミング? と問いながら、剪定していて、芽の向きや葉が繁った頃の風通しに頭を使い、ひと息つく時には、もう問いが心を占めていることは無い。
まだ新しい春の 大切な時間。







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