出会いはYouTubeに転載されていた「恋は戦争」のミュージッククリップ。イラストレーター集団とコンポーザーとミクのチーム、という形式はこれまで見てきたアーティストとかバンドのテンプレートになかったので興味を持った。
VOCALOID黎明期、そういう文化に触れているだけで後ろ指さされるような風潮がある中こっそりYahooのIDを作ってニコ動に登録した。「初めての恋が終わる時」のちょうちょの歌ってみたとか超見てた。-Band Edition-とかね。
メジャーデビューは知らない間にしていた。

中学に入って化物語のアニメが始まって、ミクでメジャー行ってた偉業をなんとなく知り、とてもいい「メルト」を歌ってたガゼル(nagi)が歌う「君の知らない物語」がボカロ知らない人や深夜アニメ見ない人にも浸透してた気がする。イントロのピアノのアルペジオをずーーっと弾いてみようとギターで踏ん張って、それがスリーコードは移動できること・sus4というコードとの馴れ初め。

14歳の頃はカルチャーにわかりやすく強い友達もおらず、なにか人と違うのが聞きたいと歳相応に思っていながらもQueenとかBOØWYとかガルネとかを聞いていて、少ない小遣いとネットを駆使して相変わらずこっそりCDを買うなかでついにNARUTOにタイアップされるらしいという噂を目にした。まだ当時は給食の時間の放送でけいおんが流れて雰囲気が凍りついてるような空気感だったしこんなアーティストお茶の間に出していいの？って思っていたぼくは「うたかた花火」をお茶の間で聞いて本当に恥ずかしかった。グッドメロディすぎて。

震災があって多少人の死生観に対して敏感になったりしている時期に「Today Is A Beautiful Day」が出て。アレほんとは震災の週に発売するはずだったんですよね。「ヒーロー」に憧れてみたりとか、「Feel so good」でジャズってこんな感じなんだなぁと知ったりとか、「星が瞬くこんな夜に」でダブルチョーキングを知ったりとか、友達と喧嘩した日に聞いて救われたりして。
ミスチルもサザンも見下してボカロやそれに準ずるものを聞いていた。fripSide1期のコンプリートボックスもその時期に買って聞いていた。好きなものに触れていてもどこかそれが後ろめたくて、理解してもらう努力もせず気味悪がられていた。好きなものを隠す癖がついた。

高校で軽音部に入った。初心者バンドがやる「君の知らない物語」をムッとしながら見ていて、友達になれる可能性がある子でもあったのだけれど、好きだから半端にやられるのが嫌で、夏休みにはエルレをコピーし倒したりして、supercell「なんか」やってるお前らとは違いますよ、という気分でいた。難しさも良さも知ってて好きなのに。

そうやってるうちにみんなしんどくなったり立場が悪くなって一つ目のバンドが終わって、supercellが好きな女の子と好きなことやろうとなってバンドを組んだ。supercellからは「約束をしよう」だけだったけれどnano.RIPEやカナブンユニゾンはその時期にコピーした。「カレ」がやりたかったがメンバーが受験ガチでバンド休んだりして結局叶わずだった。その間に友達にベースを借りてどの曲もギターとベースをコピーして楽しんでいた。内緒で。

大学のサークルでも「ゴミセル」なるバンドがあってできる人たちもやる人たちもsupercellを見下していてそれをもう悔しいとも思わなくなってしまった。見下し責めるコミュニティがある、とどこか割り切った。好きだと思われたいバンドができたしコピーした。

バンドをやってライブやらないバンドはしょーもないみたいな意見を耳にしてカチンときてsupercellに戻ってきた。ライブをやらない彼らの音源は時を経ても嘘をつかなかった。良かった。

ライブをずっとしていなくても(こゑだちゃんになってから少しやったのかな)、音源がよくて、公開する場があれば支持してくれる人がいることを証明していたし、それでいいと多くの人が許されて後を追っていますよね。

ボカロPがメジャーでいろいろなスタイルで活動できたり、歌い手がネットの力でプロになれる全ての流れのスタート地点がkzとかryoとかであることはとても誇り。それ以降に興味がないってことはないしいい音楽をそこで鳴らしてる人たちに夢を見せた偉業は教科書に載ってほしい。
でも本当にすごいペースで社会に受け入れられたので、大手を振って学校で歌い手やボカロPが好きで友達できました〜みたいな話が信じられないくらい。ぼくなんかは少しまだクセで後ろめたさが抜けないのですけど。

同じ屈折を持った友達に少し出会えたら嬉しいです。「Today Is A Beautiful Day」を聞きながら楽器持ってここがこうでさ、なんて話を肴に酒を飲む会がしたい。