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ホメオパスと鰐(クロコダイル)

俺は浄、
芦川 浄だ。

暇だ、
日記が書きたい。

まぁ、
そんなのはどうでもよい。

俺は死刑囚なんだし。

死ぬまでは、
拘置所に暮らすのが俺様。

俺の今の仕事は、
死ぬことだけ。

それまでは好き勝手して、
読書し放題だ。

なぜ俺が死刑囚なのか?

教えてやろう。

俺は8つの命を、
食い物にした外道だ。

思い出すだけでも楽しいぜ。

楽しくなる前に、
経緯を説明する。

8つの命って、
もうわかるよな?

俺が死刑囚の時点で、
完全にわかるよな?

「8人」殺したかって?

正確には、
4人と1羽と3頭である。

4人は身近な民間人。

1羽は生きた鶏。

3頭は里親で受け入れた家族だ。

まだ何の話か、
わからないかなぁ?

教えてやろう。

俺は幼少期から、
親父の別荘にいる
ワニの飼育を継承したのだ。

理由はこうだ。

親父ががんで入院したからだ。

その流れで、
不動産業とワニの飼育、
おまけに親父の介護。

けっ、
やってらんねぇよと思った。

それでも楽しみなのは、
ワニの飼育だった。

名前はドレイトン、
ゴールデン・クロコダイルの
オス個体である。

ゴールデン・クロコダイルとは、
シャムワニとイリエワニの交雑種を指す。

昔は、
ミシシッピーワニの
トビーも含めて2頭いた。

当時の俺は、
ワニの知識が未熟だった。

当時というのは、
35歳の時だ。

俺の親父は、
新聞記者であり、
フィリピンの取材中に、
地元のワニ園を取材した。

そこで孵化した子ワニが、
ドレイトンだった。

ワニ園の農場主が、
土産物として渡したのが
のちにここまで大きくなるとは。

誰も考えていなかった。

まだ俺が生まれる2年前の話だ。

来日したてのドレイトンは、
母の実家がある横浜市港北区で、
最初の4年間を過ごした。

俺が2歳の頃に、
東京の品川区に親に連れられる形で、
東京都の品川区に引っ越した。

養鶏所の隣にある、
鯉のいた池での生活から、
公園の池に移動した。

地主と父の雇用主は、
小学校の頃からの親友のご縁。

飼育が許された。

俺が中学に上がるころに、
日差しの強い千葉県佐倉市に移動させた。

ドレイトンは、
昔に比べて
鱗と歯の状態が良好化した。

日光と環境の良さだけでなく、
うちは不動産も営んでいる。

そこも実は関係していた。

家賃滞納者の部屋の合いカギを使って、
余り物の魚と鶏肉を盗難して、
肉団子にして与える。

面白い工夫もしたものだ。

そんな日々が続くころ、
家賃滞納者の中にオーバーステイの、
アメリカ人女性がいた。

彼女は契約時に、
妊娠していた。

配偶者の暴力に耐えられずに、
緊急で部屋を借りただけだった。

とはいえ、
3か月以上も滞納すれば、
俺の私物でしかない。

侵入すると、
「おぎゃ~おぎゃ~!」
と泣く寝間着姿の赤ちゃんがいた。

「おぉ、
よしよし大丈夫だよ!
いないいないばぁ!」

よりによってあのアマ、
配偶者の暴力だけでなく、
どこで生んだのか
わからん我が子も捨てんのか?

怒りよりも、
赤ん坊への特別な感情が沸いた。

俺は女性にもてない陰キャ。

女性ともセックスもしていない。

当時29歳の俺には、
子宝同然の出会いだった。

だから自分の娘として、
俺の芦川姓を養子縁組に申し込んで、
そのまま付けた。

日本でもアメリカでも、
違和感のない名前を付けた。

「樹里」の漢字表記で、
Julieである。

母親がアメリカ人なら、
2つの文化で違和感のない名前なら、
困ることもないだろう。

うちの親父の別荘と不動産屋のオフィスを、
跨ぐように公私混合でありつつも、
娘との時間を大切にした。

家賃滞納者から、
アカミミガメとカブトニオイガメを
盗んだこともあった。

アカミミガメには、
「シャンティ」と名付けた。

カブトニオイガメには、
「ヒデコ」と名付けた。

アカミミガメはエサの時には、
自分から積極的に食いつく。

カブトニオイガメは、
産卵以外は陸地に上がらない。

自分より大きい生物が怖いのか、
飼い主がいるところでは絶対に食事しない!

シャンティは、
刺身などのあまりものが好き。

秀子は干しエビが大好きだ。

干しエビを与えると、
汚れがひどくなる。

日光浴ができないと、
汚くなってしまう。

ちょうどトビーが、
拒食症になっていた時だった。

トビーとドレイトンは、
金網で仕切った池で飼育している。

ドレイトンの成長が早くなる中で、
親父も体力が衰えてきた。

若いころからの喫煙歴が祟ったのか、
肺がんになってしまった。

俺が36歳の頃に死んだ。

ジュリーが、
7歳の時だった。

俺はジュリーが、
寝ているときに自宅看病をしていた、
親父の葬儀代も面倒なので、
死体をバラバラにした。

トビーとドレイトンに、
ミートボールにした父親を、
冷凍ターキーの内部に詰めた。

その冷凍ターキーは、
コストコで購入した。

クリスマスプレゼントってことで、
4個くらい買ったね。

そうすれば、
内部の体積も大きい分、
死体損壊を証拠隠滅しやすかった。

俺は新たに新事業を始めた。

シェアハウス事業だ!

外国人と大学生が、
安く住める住居を提供したい!

安く住める物件と、
高い家賃の物件で全部がペットOKにする。

家賃滞納と連絡がつかなければ、
平日に合いカギを作って侵入すれば、
全部が俺の私物である。

無理に家賃を請求すれば、
不動産業界が社会の仮想敵にされる。

チキンと魚の切り身があれば、
うちらのカメとワニの餌なんだよ!

そんな時だった。

俺が39歳の頃だろうか?

ドレイトンが4メートル級になり、
トビーより2周り大きくなった。

金網を破って、
トビーを食べてしまった。

クロコダイルが、
アリゲーターを食い殺した。

そんなのは自然番組でも、
インチキ番組でも見たことない。

本でも読んだこともない。

実際に起きてしまった。

それに魔が差した。

俺の暴走はここから始まる。

ドレイトンを溺愛するあまり、
カモになる客が欲しくなった。

私生活で困っている、
ホステスには家賃を1万円にした。

俺はこんなことを、
言い聞かせたことがある。

ホステスの名前は、
篠塚 純子という26歳の元芸大生だ。

父の介護で大学を中退して、
生活費稼ぎでホステスしているらしい。

その半年後には、
田川 真一という50代の仙人みたいな、
インドのコルカタ帰りの大学教授がいた。

6年間コルカタで、
日本語教育を行う中で、
子ども食堂のボランティアをしていた。

彼は実家が養鶏農家のため、
「鶏を飼ってもよいか?」
と聞いてきた。

俺は拒否せずに承認した。

あくまでも、
俺のドレイトンの飯だ。

その延長で、
純子が犬と猫を飼い始めた。

ストレスを犬と猫の里親に、
なることで和らげている。

犬と猫はそれぞれ、
一頭ずつだった。

ビーグルの「ローレン」、
アメリカンショートヘアーの
「オリーブ」と命名した。

まぁ、
そのうちドレイトンの餌だ。

ここで俺の心が狂い始めた。

ますます楽しくなるぜ。

ある日から、
純子とジュリーが
喧嘩するようになった。

喧嘩した理由は3つだった。

1.交際相手の男性と三角関係になり、
純子が妊娠したことで金銭を要求された。

2.アニマルライツ思想にハマって、
「犬猫をシフト不安定の女が飼うな!」
とジュリーが叫んだ。

3.俺と純子が仲良くしていることに、
過剰反応してSNSに、
ジュリーがニホンザルの交尾画像と、
俺と純子の顔を合成拡散した。

その3つにより、
トラブルが絶えない。

ジュリーが純子の顔を殴った。

純子はホステスで、
面食いの爺と酒をただ飲みして稼ぐ。

傷だらけの顔では、
胸がたとえ大きくてもハンデしかない。

俺は110番通報して、
警察に突き出した。

まだ更生余地はあるものの、
他害の危険性があるため措置入院となった。

顔面の腫れた純子は、
妊娠5か月の時に父が他界した。

その死因は、
扁平上皮癌だった。

父は埼玉県の中学校で、
数学の教師をしていた。

その時、
俺が知ったのは、
ホメオパシー療法だった。

純子の父である、
政謙氏は抗がん剤治療を嫌っていた。

甘いもの好きなので、
「ホメオパシー」で釣ったのだ。

よくわからんが、
苦い草と砂糖を混ぜた水溶液を、
比率を回数ごとに薄めて飲むらしい。

わからない分だけあって、
探求心がわいてきた!

同じく、
田川さんの親父もがんを発症した。

そうだ、
ホメオパシーだ!

ホメオパシーで荒稼ぎだ!

俺は田川さんを、
銀座の高級フレンチレストランに、
誘ってごちそうした。

そのお代は、
俺が全部払った。

純子の亡き父の葬儀費用も、
俺が負担した。

そうよ、
ドレイトンの飯にしたんだよ?

純子の母親もバカ丸出しだぜ!

近所のお坊さんを手配して、
お経を唱えた後に遺書を拝見すると、
「タイで死にたい」みたいな
小学生のギャグみたいな内容だ。

母親のアンポンタンが、
「お坊さん、
旦那を焼かないで!
タイ旅行の飛行機があるので、
ご遺体とご一緒したいのです!」

泣き崩れてやがる。

お坊さんが、
面倒くさそうに、
「芦川さん、
これ仏教徒のの宗教とかで、
供養も何も別次元なんで、
ケツをふく人を別に手配してほしいよ?」
とだけ言って帰った

俺は実行した!

深夜に葬儀場から、
遺体を盗んでダンプ場で解体した。

使った道具は、
チェーンソー・瓶詰・ペットシート・ウィンドウカバー。

細工でトマトソースと、
ミートソースを使って、
ポイ捨てと見せかけるのだ。

くり抜いた眼を、
事前に殺した
ローレンとオリーブの眼球と手足を、
鶏の足と一緒にばらまいて川に投棄。

地元民が見ても、
悪趣味な動物殺傷でしかない。

解体は40分かかった。

大きい音を出すと、
通報される。

切り落とす部位は、
木版に括り付けてから、
チェーンソーのエンジンを入れる。

肉に触れる位置で、
刃を回すのだ。

メタボ親父を枝肉と見なせば、
作業はスムーズに進む。

ばらした後は、
頭部を地面において、
足でつぶす。

サッカー用のスパイクで、
飛び乗る形でつぶした。

頭部には、
ミートソースと
市販の豚モツと絡めて潰した。

かかと落としで、
ぐちゃぐちゃにすれば、
サッカーバールを扱う要領で、
排水溝に蹴り捨てる。

目立つ部分は、
田川さんの鶏の手足・眼球で細工した。

胴体はスポーツバックに詰めた。

指は瓶に詰めた。

詰めたお肉は、
全部ドレイトンの餌である!

もう毎日が楽しい。

純子の父の死から、
1年後に田川さんの父親が亡くなった。

田川 慎太郎の爺の葬儀は俺がした。

火葬してほしくないから。

全部ドレイトンの餌。

葬儀の食事は、
炊き込みご飯の中に娘が服用していた、
アキネトン・デパケンR・レボトミンを粉末にして、
一緒に炊いてやった。

上記の3つの名前は向精神薬である。

その炊き込みご飯の上に、
タイカレーをぶっかけてやる。

自分以外の人間は、
全員ぐったりした。

年配の田川さんを親子一緒に、
車で運んで殺す。

気を失っているときに、
男性器を市販の文房具はさみで切除する。

そうすれば15分で死ぬ。

突起物と球をまとめて切った。

金属バットで強打して、
軟体生物にしてやった。

2人の遺体は全裸状態で、
頭と手足以外を豪快に与えた。

達磨として成仏する。

ドレイトンが食べれば、
どうなるかは死んでからのお楽しみだ!

隠ぺい工作で使用した、
犬・猫・鶏は全部が餌になった。

それから一週間後は、
娘の外泊があったので、
血縁関係のない娘なんぞ、
18超えたら育ての親に甘えるもんじゃない。

その思いから21歳の、
養子娘も殺すことにした。

彼女が寝る前の薬を飲んでも、
眠れないというのでゴルフクラブで殺した。

殺すときの悲鳴が仇となり、
向かい合わせの部屋にいた純子の
通報で逮捕されたんだよ。

俺は殺人・誘拐・死体損壊などの罪状が、
積み重なって死刑判決を食らった。

俺はこの日記が世に出る時は、
地獄にいるだろうね。

遺言もくそもないよ。

ただ楽しかったよ、
ドレイトンに完敗だよ。

(完)


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