蜘蛛の糸

硬くなった外殻は
いつか脱ぐ必要がある

脱皮を繰り返し
強く大きくなってゆく
きっともう誰にもわからない

砂を嚙んで
灰色の世界を眺める

現世
飽いたな

限界
ここらで終わろうか

何も呪わずに死ねる幸福
それから新たな呪いが生まれる

行き場を失った蜘蛛
そっと手を差し出す
一切の躊躇いも見せずによじ登る姿
ただ嬉しくて口角が上がる

そうだね
いつだって
誰かと同じことをしたくはなかったな

今ここで
この意思は
容認できない

畏怖せざるを得ないものが
いつも新しいものを運んでくる

恐ろしいと思っていたそれが
迷わずよじ登る姿を見て
愛おしい生き物と思った

素直なものだけが
素直なものを救う

今日も明日も
生きている限り
愛おしいものに敬意を払いたい