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お守りパジャマ

結婚2年目。
第一子妊娠中。

私は、毎晩夫のパジャマを嗅ぎながら眠りについている。


夫はいま一時的に単身赴任中で、金曜の夜に帰ってきて週末は一緒に過ごし、日曜の夜には赴任先に戻る生活をしている。

妊娠中で一時期情緒が安定せず(仕事のストレスもあったと思う)、平日一人でいることが寂しくてたまらなくなり、毎晩泣きながらテレビ電話をする時期があった。

さすがに自分でも異常だと感じ、2週間ほど実家でリフレッシュさせてもらったのだが、仕事もあるし、出産までずっとそうしているわけにもいかない。


そこで編み出したのが、「夫のパジャマを嗅ぎながら寝る」ということだ。これがなかなか良い。

特に襟元の匂いがたまらない。

新婚当初からの自然な成り行きで、寝る前に布団の中で夫に腕枕をしてもらい30分ほどおしゃべりをするのだが、まさにその安心感が再現される。


妊娠中でホルモンバランスが不安定だとはいえ、30代も半ばに差し掛かった大人が毎晩わんわんと寂しさを理由に泣き喚くという異常事態をぴたっと止めてくれたこのパジャマ。

敬意を表して、私は「お守りパジャマ」と呼んでいる。


ちなみに週末二晩着用したパジャマを洗わずに譲り受けるのがポイントだ。

夫は家事が一通りできるので、目を離した隙に洗濯機に放り込まれる危険性がある。そこで事前に「そのパジャマは洗わないでほしい」と伝えた上で、さらに日曜日の朝に寝ぼけた夫が間違えてそのお守りパジャマを洗濯機に入れることの無いよう目を光らせなければならない。


そんな努力の甲斐あって、ジェットコースターのように変化していく妊娠中の自分の心を手懐け、夫がいない夜も平安を手に入れることに成功した。


初めのうちは若干引いた様子だった夫も、最近すこぶる安定している私の様子を見て、少しはお守りパジャマの威力を感じてくれているようで、先週の日曜日には自ら「この肌着もいる?」と聞いてきた。

しかし残念ながら肌着は襟元があいているため私イチオシの匂いではないので、「ありがとう」と言って受け取り、夫を赴任先に見送った後、すぐさま洗濯機に放り込んだ。

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