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CAEの接触解析

構造解析では物体間の接触は重要です。非線形性の強い接触解析は数値計算としての難易度が高く、簡単に結果が得られないこともあります。この問題に対応するために、さまざまな解析手法が開発されてきました。

数値的に接触を扱う方法としてよく知られているのが、ラグランジュ乗数法とペナルティ法の二つです。ラグランジュ乗数法は、接触状態を極値問題として厳密に求める方法です。一方、ペナルティ法は、物体間の食い込みを仮想的なバネで押し返す近似的な方法です。ペナルティ法はラグランジュ乗数法に比べて精度は若干劣るものの、計算処理がより容易です。これらの方法を組み合わせた手法もあります。

ペナルティ法の概念(実際の食い込みは非常に小さい)

また、接触解析では形状の取り扱いも重要です。ここからは様々な形状の物体の接触する場合の計算方法を紹介します。

要素分割された物体間の接触を考えます。物体は要素に分割されているので、接触面はこれらの要素の面から構成されます。各要素の要素面が平面である場合、物体が接触する際には要素面の頂点(節点)と相手側の要素面が接触することになります。要素面同士が完全に平行であったとしても、複数の節点が同時に接するので、要素面の頂点にある節点と相手側の要素面が接触することに変わりはありません。接触解析では、「節点と面」の計算が基本です。

「節点と面」

しかし、尖った物体と平らな物体が接触する場合、尖った物体が平らな物体に深く突き刺さることがあります。原因は、尖った物体の頂点の節点と平らな物体の面の関係を計算できず、尖った物体の面と平らな物体の節点の関係を計算してしまうことがあるからです。これでは誤差が大きくなるだけでなく、面同士の相対的な滑りも阻害されます。

(左)尖った物体の節点と平らな物体の面を計算(右)尖った物体の面と平らな物体の節点を計算

そのため、複数の節点の集合を面と見なし、「面と面」の関係を計算する方法が開発されました。詳細は割愛しますが、この方法では過大な食い込みを防ぐことができ、尖った部分が引っかかることも少ないので、安定した解析が可能になります。また、節点と面の関係を反転させて2回計算する方法も存在します。

さらに、要素の辺が接触する場合(例えばソリッドのエッジやシェルのエッジなど)では、「節点と面」や「面と面」の方法では大きな食い込みを許してしまい、精度が悪化することがあります。このような状況に対応するため、「エッジ」を認識して計算する方法もあります。

エッジ接触の例

接触解析での形状の取り扱い方は、使用するソフトウェアによって、デフォルト設定やオプション設定が異なります。これらの精度や計算時間を考慮して適切に設定することが望ましいです。また、エッジや頂点の接触に関しては結果の解釈にも注意が必要です。エッジや頂点の接触は接触面積がゼロとなるため、接触力を要素面の面積で割って計算した接触圧にはあまり意味がないことがあります。このような場合は、エッジの単位長さ当たりの接触力や、頂点の接触力を利用するのが適切です。


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