業の秘剣 第五片 刺し、ひねった
王子の中に入ったキケウスは高級奴隷に命じて敵襲を知らせる金を鳴らさせた。
キケウスは叫んだ。
「者共、警備を万全にせよ。私は父と共に隠し通路より外に抜ける。」
キケウスは王室の扉を開けさせると、中にいた高級奴隷達へ外に出るように命じた。そして、王と二人きりになった。
王が言う。
「一体何事だ。こんな夜中に、東の果ての国を打ち取ったばかりではないか。」
キケウスが言葉を返す。
「残党か、新たな敵か、何にせよ、宮殿の中にまで入りこまれたのです。私たちは隠し通路へ行きましょう。」
王が怪訝な顔をする。
「息子よ、何やら変ではないか。」
キケウスが答える。
「そりゃ敵襲となれば冷静さを失うものです。」
王の顔が厳しくなる。
「その冷静さ。お前ではない。」
王は枕元から剣を取り出し、振りかぶった。キケウスはさっとかわした。一瞬の沈黙。
王子の姿のキケウスが口を開く。
「ふふ、少し時が早まってしまったか。」
王が息を荒立てる。
「キケウスか!私の身体を狙っているのだな?そうはさせん。」
王が剣で突きを出したが、キケウスは横に秘剣ではねのけ、王の身体を斜めに切った。王が崩れ、言葉を出す。
「馬鹿な…お前は私の身体を狙っていたのではないのか?」
キケウスが目でにやけながら、答える。
「ふふふ、老いぼれた身体になど用はない。」
キケウスは王を頭から蹴り倒し、秘剣を腹に刺し、ひねった。
王は生き絶え、王子の身体に入ったキケウスが残った。
キエウスはそっと、剣の血を拭った。
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