業の秘剣 第八片 殺すとこすら容易



――ィィィィ……――


ルイの頭からノイズは消えた。


(はぁっ、はあっ、何だ?一体?)


(驚かせてすまなかったな。暴力は嫌いでね。最も直接手を下すのが嫌いなだけだけどね。





私はお前を心の中から殺すことすら容易だけど、ルイと仲良くなりたいからね。


此処で出会ったお礼に…記念かな…良いことを教えよう。


殺されるよりはマシだと思ってお前の履いているその壊れかけの靴の底を裂け目から破れ。)



ルイは考える暇すら与えられなかった。

(な、何が殺すだって…ははは…わ、わかったよ。とりあえずいまは死にたくない…く、靴だろ)


ルイは靴を脱ぎ上着のベストから小さいナイフを取り出すと、千切れかけていた靴底を器用にバラバラにした。


すると何かが地面に落ちた。

ルイは心の中で叫んだ。


(指輪だ!


しかも汚れてくすんではいるが、この波上の模様…安物ではなさそうだ。)


ルイは指輪を手に取り、上着のベストから布切れを出して拭いた。


ルイから知れずと笑みがこぼれる。


(これは金だ!間違いない!この綺麗な小細工はいったいなんだろうか?しかし俺の手に掛かれば天井超えの高値で売りさばけるぜ!)


ルイはハッとした。


(まさか…お前はこの指輪が目的で俺のところに来たのか?まだ殺すなよ…ええと…)


ライズが心に応じた。

(私の名はライズだ。)


ルイが続ける。

(ああ、そうだったな。ライズ。俺は名前を覚えるのは苦手だが…。


それで、どうなんだ?というかこれも夢なんだろ?悪夢じゃないだけマシだと思うが。)


ライズが調子を崩さず返す。


(夢ではない。まだな…。お前覚えているか?2日前の出来事を。)


ルイが頭を振り絞る。


(あぁ、そういえば、これが夢か現かは置いておいて、かなり寝たな。ヘナ酒を煽るように飲んだから思い出すのも一苦労…


ああそうだ、あれは大仕事だった。

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