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名前で呼ばれること

小学校の頃は、同級生はみんな下の名前(ファーストネーム)で呼び合っていました。
でも、中学・高校・大学・社会人生活は、家族やごく親しい友人でない限りは名字で呼ばれることばかり。
考えてみると、10代から30代は多くの人から名字で呼ばれて過ごしてきました。

同級生の中には、皆から下の名前で「〇〇ちゃん」などと呼ばれる親しみやすい雰囲気の子が何人もいて、そしてそんな子はたいてい人気者だったけれど、わたしは中学以降、名字で呼ばれ続けてきました。
唯一、高校時代にたまたま隣の席になったある男子が、なぜかわたしのことを下の名前で唐突に「Fさん」と呼び、そのあまりの新鮮さに危うくその男子を好きになるところでしたが、そんな例外を除けば、ずっと名字で呼ばれてきたわたしの人生。
大学時代にお付き合いした先輩とさえ、最後までお互い「さん」付けの名字で呼び合っていました。
付き合うことになったからって、途端に呼び方を変えるなんて、どうしてもできない性分です。
というわけで今も夫を名字で(しかも「さん」付けで)呼んでいます。自分も同じ名字なのですが。

それはともかく、中学以降30代半ばまで、ずっと名字で呼ばれ続けてきました。
ところが。
16年前に現在暮らす高原に越してから、名字で呼ばれることがなくなりました。
店をやっているので、当然店の名前で「nakazumiさん」と呼ばれることがとても多いです。
わたし自身、ご近所さんには自ら「nakazumiです~」と名乗ってしまいます。それが一番わかりやすくて通じるから。
(ちなみに「nakazumi」は実家の屋号からとったもので、実家は商売をやっているわけではないのですが、近隣世帯はみなそれぞれ昔ながらの屋号が付いており、名字ではなく屋号で今も呼び合っています)

そして「nakazumi」以外では、ファーストネームでわたしを「Fさん」と呼んでくださる方々も、お客様を含めて少なからずいらっしゃいます。
ここに移り住んで間もない頃、最初にファーストネームで呼ばれた時は、やっぱり新鮮でした。
小さな近所の男の子が、「Fさーん」と呼びながら走ってきたし、同年代のご近所さんも、ずっと年上の先輩主婦の方々も、年配のオジサマ方も、「Fさん」と声をかけてくださいました。
当時30代半ばを過ぎて久しぶりに下の名前で皆から呼ばれて、くすぐったいような、嬉しいような、不思議な感覚でした。

下の名前で呼ばれるのは、なんだか自分という個人を認めてもらったような気になります。
「○○さんとこの娘」でも、「○○さんの奥さん」でも、「○○ちゃんママ」でもない。
何より、自分が直接築いた人間関係の中にいるんだと実感できて、そしてもしも皆様が、親しみを込めて下の名前で呼んでくれているのなら、それはとても嬉しいな、と思いました。

でも、気がついてしまいました。
そういえば、ワタクシ、ここに移り住んで最初の5年で名字がコロコロ変わったのです。
①既婚→②離婚→③再婚、という過程を経て5年の間に持った名字が3つ。
こ、これは、名字で呼ぶには不都合が生じますね。
ご近所さんだって、何回もいちいち覚えるのタイヘン。

実際、地域連絡網やゴミ集積所掃除当番表で、変更後のわたしの名字を見て、「誰コレ? 新入居者?」とわたしに聞いてきた方もいます。

わたし:「いや、ソレ、アタシ……」
ご近所さん:「エッ??!」(結婚? 離婚? なに? なに?!)

というビミョーな空気が流れます。
下の名前で呼んだ方が、無難なわけですよね。

ちなみに、郵便物も宅配便も、いずれの名字でもいまだに届くという不思議。
ありがとう、郵便屋さん、宅配ドライバーさん。
田舎も名字もやっかいな面が多々あるけれど、わたし的には今のところ無問題です。



以上の記事を下書きしていたところ、つい先日magobee66さんが同じテーマで興味深い記事を書かれていました。

屋号や「○○ちゃんママ」呼びに関する言及まで内容が被っていて驚いたのですが、趣旨がわたしの記事と微妙に逆です……。
でも、直接名前を呼ぶことを避ける習慣がもともとあり、それが今は薄れつつあるということに、なるほどなあと大変勉強になりました。
ファーストネームで呼ばれなかったわたしの若き頃も、そう捨てたものではなかったのかな、と思った次第です。

いろんな「呼び方呼ばれ方問題」があって、人との関係、呼び名というのは面白いなとつくづ思いました。

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