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とりどりの色

ある秋の営業日のこと。
珍しくテラスまで満席となった時、40代くらいのご夫婦様1組を除いた他すべての席が、20代と思しき若者で占められている瞬間がありました。
たった1組のその「若者ではないお客様」は、もう何年も来てくださっている常連様ご夫婦で、お帰りの際に微笑みながらおっしゃいました。

「なんか、客層変わりましたね。若者ばっかりで、ちょっと居心地が……(笑)」

その日はたまたまお若いお客様の多い日で、そのお客様も冗談めいておっしゃっただけですが、たしかに以前よりは若い世代のお客様が増えました。

オープン以来16年、いろんなお客様がいらしてくださいますが、なんとなくその時々で「お客様の流れ」というようなものがあり、今回のような「年齢層」もそうですが、「男性のお客様」「女性のお客様」「ご家族連れ」「おひとり様」「お二人様」など、いろんな層がある中で、不思議と同じ層のお客様が一時に重なることはたしかにあります。
それは、「悩みを抱えたお客様が多い時期」の場合もあるし、「ハッピーそうなお客様が多い時期」であることも。

こういう流れを「引き寄せの法則」というのでしょうか。
16年間続けた今となっては、店にはそういう引き寄せや波のようなものがあると知りましたが、初めのころは戸惑ったものです。

とくにオープン当初の頃のお客様は、バラエティに富んでいました。
たまに店を手伝ってくれる友人曰く「ホント最初の頃、ヘンな人多かったよね?」とのことですが、「ヘンな人」というか「個性的な方」だと思うのです。
お客様の数自体は今よりずっと少なかったのに、こちらが意表を突かれるような強キャラのお客様に出会うことが多く、「お店っていろんな人が来るんだなあ」とよく思いました。

考えてみたら、最初の3年間はHPもブログもなかったし、宣伝告知もせずにひっそりとした森の中にできた新しい小さな個人店に入ってみようという勇気ある奇特な方は、たしかに個性的であるはず。
そんな個性豊かな当時のお客様は、今もずっと来てくださっている「オープン以来の常連様」もいらっしゃれば、「あれっきりだなあ」という方も(少なからず)いらっしゃいます。

そうやって、相性をみながらお客様は店を選び、店のほうは、選んでくださったお客様の色になっていくのでしょう。
だから、お店というのは日々変わっていきます。
その変化を、最初から最後まですべて見届けられるのが店主の醍醐味ですが、肝心の色をつけるのはお客様です。
店主であるわたしの役目は、皆様が色を入れたくなるような心地よいキャンバスを用意すること。
そうやって、「また訪れたい」と思って貰えるよう努めていきたいです。

当店は、これからどんな色になっていくのでしょう。
いろんな色がモザイクのように重なったり、思いもしなかった配合に混じり合ったりしながら、お互いの色の違いを楽しめる店になれたらいいなあ。
そうやって常に変わりながらも、味わい深い色へ。
それが「美しい色」というものだと思います。

なんとなく、noteも似てますね。
いろんな方々の心に届くような、「また読みたい」と思って貰える文章を目指して。

カラマツ林の落葉も始まり、色を失いつつある森はついに閑散とするシーズン突入です。
ひっそりとした店内で、皆様のとりどりの色、お待ちしております。

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