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やがてかなしきLINEかな

同じ中学から同じ高校へ行ったメンバーのグループLINEがあります。
そのグループLINEに、新たな加入者があったタイミングで、にわかに一時近況報告大合戦となりました。

ふとスマホを取り上げた時、見たことのない通知数にギョッとして、そんな状況ですぐにLINEを開く勇気がないくらいSNSは苦手だけれど、恐る恐る覗いてみたところ、わたし以外みんな発信していたので、さすがにご挨拶くらいしなければと試みました。
けれども自分のLINE登録名が下の名前のみのため、高校卒業以来30年以上会っていない面々もいるし、旧姓を名乗らないと誰なのかわかってもらえないだろうと思い、まず旧姓(M)を入れたうえで、カッコ内に現在の姓(鵜飼)を入れました。

「Mです(今、鵜飼)。お久しぶりです」と。

するとそれを見たあるメンバーが、グループLINE上で、
「今どうしてるの? 鵜飼ってどういうこと? 近況を教えて」
との質問を発信しました。

おや?
「今どうしてる」って言われても、出世頭のこの質問主には、店のオープン直後にお知らせもしたし、わたしがカフェやってること知ってるはずだけれど忘れちゃったのかなと思いつつ、でもおそらくは姓が「鵜飼ってどういうこと?」のほうを聞いているのだろうなと察知して、なかなかにデリケートなご質問に戸惑うわたし。
なぜなら、旧姓(M)と現姓(鵜飼)の間に「もう一つ別の姓」を持った時期があり、この質問主に以前会った時期もそのもう一つの姓の時だったからです。

姓が変わった説明なんて面倒だし、グループLINEでそんな赤裸々な経過を報告するのには抵抗があったのですが、別に恥じてはいないし、知っている人は知っていることだし、そもそも名指しで質問されているのにお答えしないのも失礼だと思い、しばし考えたのち意を決して「十数年前に長野の高原に移り住んで喫茶店を開業、その後離婚、そのまま一人暮らし、そして再婚」とのメッセージを送りました。

するとどうでしょう、質問主から、
「鵜飼(職業)やってるのかと思ってびっくりした。名字ね」
とのお言葉。

え?
えええ? まじで?
仕事として鵜飼い(鵜匠)やっていると?
え、本当に?

じゃあ「犬飼(犬養)」ならブリーダー、「牛飼」だったら酪農やってると思う⁈
と、複数の親しい友人達を相手に鼻息荒くリサーチしたところ、皆さん一様に半笑いしながらまずはわたしへの同情の意を示し、そして「牛飼なら酪農家と思うのはアリだな」「鵜飼って名字は岐阜愛知以外ではマイナーだから」とのご意見あり。
だとしたら、カフェ店主から鵜匠に転職ってかなりのインパクトで、それはさぞ驚かれたことでしょう。

そうとも知らず自らの離婚再婚歴をグループLINE上で披露してしまったわたし、なんともいたたまれない気持ちで「ウケる」とのスタンプで返信するのが精一杯でした。
そんなわけでグループLINE恐怖症となりまして、SNSというものの恐ろしさを再認識いたしましたが、質問主にはまったく悪気はなかったのでしょうね。
なかったと思いたい。


わたくしの仕事は、目立たないひっそりとした森の中の、一人でやっている小さな喫茶店の店主。
独りでカフェを続けているより、鵜匠になっている可能性の方が高いと思われたとしても致し方なし。

今もこうして続けていられるのは、これまで訪れてくださったお客様のおかげです。
そしていつも応援してくれる家族親戚友人の皆様のおかげ。
noteの方々にも大変励まされております。
本当にありがとうございます。

当店は今月で16周年を迎えました。
どんな仕事もそうだと思いますが、続けていると本当にいろんな出来事があります。
それを乗り越えながら、人の心は強く逞しく、あるいは鈍くなっていくのだろうなあ。

17年目もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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